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似てなくて良かった

イブの病室にメンバーを集めて、トウヤはスプニールから聞いた話をポーラ達に共有した。


もちろん言える範囲で、である。


「なんか、イメージが変わるね」


「確かに上級貴族なのにという印象はあるな」


皆それぞれ意外という印象を受けている。


「私もマスターから聞いた話とは印象が変わりますね~」


「噂やイメージばかり先行して、本来の姿が解からないなんてのはよくある話だよ」


ミイナの話だと近しい存在であったクラリスでさえ本当の姿は知らなかったようだ。


「そうなってくると、常に印象通り演じていて、かなり嘘には慣れているってことになる。

話す内容をそのまま鵜呑みにすると、逆に危険が及びそうね」


キョウの言うことが何処まで事実かもわからない。


「でも、あれは本当だと思う……」


「あれって?」


トウヤの話に全員の注目が集まる。


「仲間の夢を邪魔したくないってこと」


「それってトウヤに言った事?」


トウヤは黙って頷く。


「あの人の中でも一定のルールは存在し、絶対に譲れないものは守ろうとする。

でもそれ以外にはあまり興味すら無いように感じるんだ」


トウヤとミズキは助けようとした。


たぶん愛した人の家族だから助けようとしたのだろう。


その姿は嘘だと思えなかった。


「あと価値があると判断した場合、どんな人間でも連れて行こうとしたよね?」


遭遇した時、リヤナと鈴百合(すずゆり)の君ことロゼアを連れて行こうとした。


キョウが価値があると判断したからだ。


七剣徒(セプトレア)であるリヤナはまだ理解出来る。


だがそうでないロゼアも連れて行こうとした。


つまり世間的な評価よりも、自身で見極めた価値に従い、平等に扱っているのだ。


そしてその価値を見極めるためには、より多くの魔法を知らなければならない。


なので魔法に対して貪欲で研究熱心なところも本当の姿だろう。


さらにクラリスを簡単に切り捨てたところから、人情ではなく価値を重点に見ていると言える。


口が軽く余計な情報も話してしまうところを危険な価値、つまりリスクとして見て、

仲間に危険が及ぶ、ないし狙いが筒抜けになることを危惧し切り捨てた。


「あの人にとって、人は道具でしかないんだな」


非情とも思える性格の父親の血を受け継いでいる。


トウヤはいずれ似る、この仲間達を道具のように使ってしまう日が来るのだろうか?


そうなりたくないと思いつつも、似る自分の姿が簡単に想像出来てしまう。


それが怖くなってしまった。


「道具というよりは効率重視で物事を考えているだけよ。似るならそこだけにしなさい。

それに、半分はおせっかいで仲間想いな母親の血が流れてるんでしょ?

ってかそっちの方が似てるんだから、あんたは母親似。父親似になる心配はないわ」


「せやね。私もお兄ちゃん見てるとお母さん思い出すも~ん」


トウヤの気持ちを見透かすように、ポーラとミズキが言った。


さらに


「お前の元に人が集まるのも父親の才能を受け継いでいるかもな。

良いところは似て、悪いところは似ない。似てるところが多いからと悩む必要は無い。

それをお前がどう使うか決めることが大事だと俺は思うぞ」


「ああ、ついでだから魔法の才能も似てしまえ。仲間を守る力になるし、

うちもその力と戦ってみたいから、しっかり鍛えろよ」


ファイゼンもリーシャも背中を押すような言葉を伝えた。


「私は似る似ないよりも今のトウヤのままで居てほしいかな?

トウヤに誘われて行動を、想いを信じたからここに居るんだよ?」


マリアの言葉にリリスとイブも黙って頷いた。


三人はポーラ達とはまた違う思いでこのギルドに居る。


みんなに声をかけられ少しこそばゆく笑ってしまった。


「悪い。暗い事言ってしまったな」


トウヤの言葉をきっかけに場の空気が軽くなり盛り上がった。


「よし、こうなったら対異能の為の戦闘訓練を始めるぞ」


ファイゼンの掛け声と共に全員が訓練場へ向かおうとした。


「相変わらず、いいチームね」


ふとメンバーにいない声がした。


振り向くとスプニールが立っていた。


「ああ、スプニール」


思わぬ大物の登場にトウヤとイブ以外は急いで姿勢を正した。


「……あなた、言われたでしょ?他人がいる前だけでもやりなさい」


「うっ……!」


礼儀というものを聞いたばかりだというのに……


「で、その子はまだ知らない新人ね?」


「え?ああ、そうだよ」


そう答えるトウヤをスプニールはギロリと睨みつけた。


「うっ!そ、そうです」


「そ、ならあなたが責任をもって、しっかりと教えなさい」


「はい……」


イブは不思議な物を見る目だったが、黙っているあたり、故郷の王みたいなのと感じているようだ。


「みんな楽にしていいわよ。ただし、トウヤは続けなさい」


「は?なんで!?」


絶望を感じたようにスプニールは頭を抱えた。


そして代わりにポーラが必死な形相でトウヤの肩を掴んだ。


「今言われたことが出来ない人間が有事の時にどうして出来るのよ!」


トウヤは仲間内と思うとすぐくだけた言葉遣いになる。


よく言えばフレンドリー、悪く言えば馴れ馴れしい態度だ。


今は許されるが、他の麗王(れいおう)の前で同じことをしてしまったら即殺されても文句が言えない。


さらにその場合、身内であるスプニールにも迷惑がかかる。


それを防ぐための訓練だ。


「……関わりたくねぇ~」


「もう遅い」


トウヤは絶望した。


「わかった――!?」


今度は二人に鋭く睨みつけられた。


「わ、わかりました」


立場を踏まえた振る舞い方、かなり厳しい目で見られることになりそうだ。


「ねぇ、話を遮って悪いんだけど、話しておかなきゃいけない事があるの」


スプニールは話が合って来たようだが、その前にイブが話し始めた。


「話しておかなきゃいけない事?」


「ええ、……仲間として迎え入れてもらうためには、言っておかなければいけないことがあるの」


全員がイブに注目した。


そしてイブは意を決したように打ち明けた。


「わたしの、もう一つの暴走についても知っておいてほしいの」


「もう一つの暴走?」


魔導士の間で知られている暴走は二つ。


破壊的な衝動を持つ獣の暴走と、暴走していると気付きにくい静かな暴走の二つ。


イブは既に殺しの衝動については教えてくれたし、症状から見てこれが獣の暴走と呼べなくはない。


だがもう一つとは?


「その状態だと意識ははっきりとしていて、魔法の力も身体能力も段違いに跳ね上がる。

みんなに教えた物の強化版と思ってもらってかまわない。

その状態でも止めてくれないと私は……仲間に迎えられる資格が無いの」


「そうなの?それにしてもなぜ今さら?」


「……その人の話って……部外者が聞いても良いのかなって……」


イブはスプニールの話を部外者になるかもしれない自分に聞かせないように配慮したものだった。


「あら、あの子の方がしっかりしてるじゃない」


スプニールに肘で小突かれたトウヤは苦笑いをするしかない。


「ではまた日を改めましょう。あなたが回復し、トウヤ達の正式な仲間になる日を待ってるわ」


スプニールはあっさりとイブの提案を受け入れた。


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