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修復出来ない関係

ある夜にそれは起こった。


「叔父様!お止めください!叔父様!」


叫び声に何事かと思うと、あの狐親父とその連れ数人が現れた。


「何事ですか?何の断りも無く入ってくるなど無礼にもほどがあります」


不快感を露わにしてオリエンは前に出た。


いけすかない親父に警戒していると、相手は駆け引きも何も無く話を進めた。


「お前さんの弟、キョウ・ネリウムを連続貴族誘拐事件の重要参考人として拘束する」


「……は?」


「ど、どういうことですか、叔父様?」


「言った通りだ。ここ最近頻発していた貴族達が行方不明になる事件、

あれに深く関わりがある、いや、主犯である可能性が高まった!」


「まさか!?だって弟は――」


部屋に籠っているはずと思ったが、そう思い込んでいるだけで姿を見たわけではない。


つまり気づかないうちに抜け出して犯行に及んでいる可能性が捨てられない。


オリエンは大急ぎでキョウの部屋に向かった。


(嘘よ、嘘!信じられない!)


だが犯行が可能な人間であることは理解出来た。


教誨師の力を理解し、それに合わせた改ざんを行い決定的瞬間を消す。


いくら低級貴族でも本当の無能はいない。


一般人程度なら返り討ちにすることくらい容易い。


なのにそれすら許さない。


それはその貴族達より圧倒的な強さを持つから。


状況がキョウ一人とは限らないが、十分疑える状態であることを理解した。


そして狐親父。


こいつが無策でこんなことをするような人ではない。


つまり、個人を特定できる何かを掴んでいるかもしれない。


オリエンはキョウの無罪を証明するために部屋を調べさせようとした。


「キョウ!キョ――!」


「邪魔だ!!」


狐親父がドアを破壊し部屋へ飛び込んだ。


部屋の中はオリエンの良く知る状態だった。


たった一つを除いて……


「何だ、この扉は!?」


おそらく空間系魔法、部屋が手狭になったから、別空間に部屋を作ったのだろう。


扉を開けると信じられない光景が現れた。


「うぅ……」「あぁぁ……」


人……のようなものが呻き声をあげていた。


「なんだ!?これは!?」


狐親父は声が出たが、その他は言葉を失った。


そして恐る恐る奥へ進むと、よく知った姿が見えてきた。


「いらっしゃいませ、そろそろ来る頃だと思ってましたよ、紫鈴狐(しずきつね)の君」


「き、貴様!」


「しっかり証拠を見つけ出すことが出来ましたね」


「証拠を……?まさか……」


「ええ、お別れの挨拶です」


これはキョウが描いたシナリオ通りだったようだ。


「クソが!」


紫鈴狐(しずきつね)の君が異能を放とうとした瞬間、


グキッ!


何か嫌な音がした。


「うがああ!腕が!」


キョウは一瞬で紫鈴狐(しずきつね)の君の腕を折ったのだ。


「きさ――」


紫鈴狐(しずきつね)の君が連れてきた数人は即座に首から上を失った。


「キ、キョウ。こ、これはどういう……」


オリエンはまだ整理がつかないようだ。


「ゴミ貴族を使って魔法の実験をしていたんですよ」


キョウは笑顔で答えた。


「な……なぜ……?」


さらに訳がわからなくなってきた。


「今の麗王(れいおう)は腐っている。己が神と言わんばかりに不遜で思い上がっている。

その麗王(れいおう)を取り除くための実験場ですよ、ここは」


低く冷たい声に背筋がゾッとした。


だがオリエンは叫ぶように問いかける。


「こんなことをしてどうするの!?サラは!?ネリウムはどうなるの!?」


「そんなものどうでもいい!それに言いましたよね?婚約する気は無いと」


「で、でも……最近……」


「最近は話しましたね。サラ、情報提供ありがとう」


「……え?」


「仕事に協力してほしいと言って、誘拐の話をしてくれたじゃないか」


サラはキョウと話すための話題として仕事の話をしていた。


共通の趣味嗜好が無かったので、何とか話そうと仕事の相談をしていた。


だが、それがキョウへの、当事者への情報提供に繋がっていた。


サラは青ざめると同時に涙が溢れ出た。


「そ……そんな……じゃあ……」


仲良く話せたと感じていたのは全て演技。


たまたま、サラがキョウに利のある話をしたから話しただけに過ぎない。


利のある話をするからサラとオリエンとの食事にも出席した。


利があるから……


「言っただろ?婚約は全く考えていないと。お前も姉上と同じようだな」


そう言われるとサラの全てが崩れていった。


「いや……いやあああ!!」


サラは泣き崩れた。


「貴様!ワシの――!?」


紫鈴狐(しずきつね)の君は蹴りで簡単に吹き飛んだ。


「あんたはただの目撃者だ。その場で黙って見てな」


そして立っていたのはオリエンとキョウの二人になった。


「キ、キョウ……」


「姉上、ありがとうございます」


急に感謝されて驚いた。


「あなたのお陰で決心がつきました。内部から正すのは不可能。

だから一度すべて取り除かなければならないとよく理解出来ました」


「キョウ!」


何となく捕まえなければならない。


そう感じたオリエンはキョウの腕を掴もうとしたが、弾かれた。


そしてそのまま力無く倒れた。


「愚かな麗王(れいおう)を排除するために、また来ますね」


キョウは立ち去ろうと後ろを向いた。


「ま、待って!キョウ!」


キョウをまた捕まえようとするが、全く動けなかった。


その代わり、サラがキョウの足を掴んだ。


「わ、私を、置いていかないで!!」


サラの叫びは信じられないものだった。


サラも全てを捨ててキョウと一緒になろうとしたのだ。


だが……


「お前はいらない」


そう言い、キョウは振りほどき立ち去った。


「いやあ!いやあああああ!!」


愛する人に無情にも捨てられたサラの叫びと共に、深い絶望感に襲われた。


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