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キョウ・ネリウム-昔-

神童


そう呼ばれていた少年は幼くして数々の偉業を成し遂げた。


中でも有名なのが砂漠の大地の観光都市化だろう。


荒れ果て、今日を生き抜くのが精いっぱいだった厳しい環境の土地に、豊かな水源を引き、

居住地を半地下とすることで砂漠の灼熱から民を守った。


それと同時に暖気の上昇気流が流れるように風の通り道を調整することで夜の厳しい寒さからも守った。


熱に強い植物を移植させたり、吹き荒れる風をも利用し、その土地を数年で豊かにした。


これを齢七歳の少年が発案、実現までこぎつけた。


これに関わった人はこう話す。


「実に効率よく進めることが出来たし、事故も全て予見して対策を講じさせた。

大きな問題もあのお方にとってはちょっとした坂道。多少の起伏があれど、

あのお方が描く未来は常に安定した幸せを期待させて、実現させてくれる」


民衆からの人気もとてつもなく、同じ貴族間でも常に一目置かれる存在だった。


そして貴族のもう一つのステータス、魔法にも恵まれていた。


齢十歳になるころには七剣徒(セプトレア)の第一位を打ち倒し、一部の麗王(れいおう)も凌いだ。


歴代最強


全ての作戦を見透かし、如何なる攻撃も当たらない。


負けた麗王(れいおう)との差はただの経験不足とまで言われた。


つまり数回もあれば簡単に超え、頂点に立つという意味だ。


そんな少年は実に大切に育てられた。


特に少年の姉は溺愛と呼べるほど大切にしていた。


そして年頃になる少し前には多くの婚姻の申し出が届いた。


後の世界最高峰の権力者になる少年。


これを逃さまいと虎視眈々と狙う女どもを、姉を含めた数人が盾となり防いでいたのは有名な話。


彼はどの女にも見向きもしなかった。


いや、見向きしたかもわからない。


誰に対しても平等に、分け隔てなく接していた。


あの変わり者の異端令嬢にまでこうしていたことで、人格者だと仰々しく仰ぐ人も増えた。


だが何時からだろうか?


彼の奇行が噂されるようになってきた。


初めは彼に対する妬みからの根も葉も無い噂だと言われた。


しかし下人との交友が明るみになると噂に対しても信憑性が増してきた。


貴族に見せない嬉しそうな顔。下人との会話で楽しそうに笑う姿など。


そしてその理由としてある女が矢面に立たされた。


その女が誑かした。女に惑わされた。下人の女があのお方を堕とした。


この噂に見かねた姉は、即座に女を消した。


これが原因だっただろう。


彼は変わってしまった。


誰に対しても慈愛に満ちた接し方をしていた彼が、汚物を見るような目を向けるようになった。


そして何か値踏みをするように人と接するようになった。


この時はまだ大人しかった。


いや、表に見せないだけだった。


でなければ、これだけの短期間であの惨状は考えられない。


数千人の人間を使った実験の数々。


その中には死者に対しても何かしている形跡があった。


そしてこれをやるには一人では不可能だ。


数人、数十人の共犯者がいる。


だが彼はその痕跡の一切を消し、自ら矢面に立った。


今思えばこれは共犯者から目を逸らさせるパフォーマンスだっただろう。


貴族からの注目を全て受け、共犯者を逃がし隠れさせた。


そして頃合いを見て彼は姿を消した。







「これが貴族間で話されているあのお方の話よ」


クラリスは貴族、特に上級貴族間で話されている話をした。


「その下人ってのがリリって人か……貴族間ではほとんど話されていないんですね」


「ええ、かの王子を誑かした悪女としか話されてないわね」


まあ、案の定の結果だ。


「話に出てきた姉と一緒に盾となった人の一人がクラリスさん?」


「あんなのと一緒にしないでくれる?あれらより私は特別だったのよ」


自慢気に話すが捨てられた身である。


「じゃあその中に知ってる人が――」


「いないと思うわ。名前すら知らないでしょうね」


「……となるとあの人に聞くしかないのか……」


「ご愁傷様」


トウヤは嫌そうに頭を抱えた。


「ま、聞きに行くしかないか」


即座に切り替えたようで、クラリス達は驚いた。


「い、嫌なら行かなきゃいいじゃない」


ポツンとクラリスは言った。


上級貴族なんて好んで関わるものじゃない。


一般人、下級貴族と上級貴族の間には大きな壁がある。


そう言われているが……


「嫌でも会いに行かないと。そのせいでギルドのみんなに迷惑がかかる方が嫌ですし」


ステラは思わず鼻で笑ってしまった。


「お前よりこの子の方が大人な対応をしてるじゃないか」


ティーを飲みながら自分を笑ったと思ったクラリスはムッとしながらも言い返す。


「この子は現実を知らなすぎるのよ。親戚だからって甘い考えを持ってるのよ」


「いや、親戚だからと言うより……」


ステラに代わり答えるようにトウヤが話した。


「スプニールの為にもなる気がするんですよ」


「どういうことだ?」


思わぬ従姉の名前に、トウヤの考えが気になった。


「スプニールもあの人を捕まえる……いや殺すことに積極的に見えるんですよ。

たぶん、スプニールはスプニールなりに母親のことを想ってあの人を排除しようと思って、

これだけ前向きな姿勢なんだと思うんですよ」


言われてみれは、スプニールはトウヤに対してかなり協力的だ。


これは上級貴族にしては珍しい方だ。


「それはあなたが……いえ、意見の繰り返しになるわね」


クラリスの言いたいことはわかる。


だが、どうもそれだけじゃないとトウヤは考えてた。


「ん~やっぱり聞きに行くべきね~確かな情報はかなりいい武器になるし~」


ティーナはトウヤの考えに賛同してくれたようだ。


「私も君の意見に賛成だ。ただし条件として、こちらにも共有してほしい」


「それはもちろん。助けてくれる人が多い方がいいですからね」


ステラもトウヤに賛同した。


残るは……


チラリと目線が集まる。


「ああもう!私は何も言わないわよ!まだ隠れないといけないんだし!」


まあ、その通りである。


「なら早めに済ませちゃいます。今日はありがとうございました」


ティーを飲み干し、一礼をするとトウヤは部屋の外に向かった。


「ああ、また飲みに来てくれると嬉しいよ」


その言葉にトウヤはもう一度頭を下げた。


「ふ~ん、なんだか昔のキョウくんを人懐っこくした感じね」


「……お前、息子にも手を出す気か?」


「ば、バカ!そこまで見境なくないわよ!」


「あらあらぁ~?なんだか前に見た感じがするわねぇ~」


「もう無理!怖いもん」


特に何かが無ければ三人の仲は良い。


本当に何も無ければ……


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