お茶会に誘われて2
「あぅ……何でこんなことに……」
ずけずけと押し入れられた挙句に茶を出せと言うのは横暴だ。
そんなクラリスの意見に心の中で賛同したが、ステラの一言に一蹴された。
「お前、貸しがあるだろ?」
絶賛雲隠れ中で匿ってもらっているクラリスには、それを言われたら逆らえない。
渋々招き入れ、お茶を入れさせている。
もちろん、それをやってるのは人造人間だ。
確か名前はニイナと呼ばれていた。
ミイナの先輩で、クラリス専属のお世話係と言った立ち位置のようだ。
「用があるのは私じゃなく彼の方だ」
ステラに名指しされると、クラリスは恨めしそうにトウヤを見た。
(逆恨みだろうが)
元はと言えばクラリスが裏切ろうとしたからである。
裏切ったがその先で捨てられたため、こうおめおめと戻ってきたのだ。
もちろん、一度裏切ったのは事実なので、このように良い様に使われている。
「ああ……えっと……とりあえず、最初に治療の為にいろいろ動いてくれたと聞きました。
その節はありがとうございます。それとお礼としてお菓子ですが……」
そう言いながらクラリスにお礼の品を渡した。
が、何も起こらない。
いや、動かない?
様子を見ると、驚いたように目を丸くしてこっちを見ていた。
「どうした?受け取ってやるのが礼儀じゃないか」
「そ、そうだけど……ステラちゃんに命令されただけよ。感謝なんて……」
「でもこれだけ綺麗に治療できたのは綺麗な皮膚を培養したり、
人造人間の作り方を参考に、元の皮膚と馴染ませたからでは?」
実際間違ってはない。
ミイナを始め、戦闘用人造人間は激しい戦闘を行い怪我を負っても、
古傷が残っている個体は一つもない。
それは完全再生レベルでの治療法をクラリスが確立させているからだ。
「人造人間は再生医療の確固たる証明だ。それを確立させ、
治療してくれてありがとうございました。おかげでこうやって復帰出来ました」
ただ純粋に治療のお礼を述べた。
それだけの言葉を聞いただけなのに、クラリスの目からツーッと溢れ出した。
「は!?なんで!?なんでこんな……!?」
思いがけない反応に全員が驚いた。
「は……ははっ。我々の完敗だよ」
「そうねぇ、私達もクラリスにこんなこと出来なかったわ」
ステラとティーナはどうしてこうなったか理解したようだ。
「そんなんじゃない!違う!」
クラリスも理由を理解しているが認めたくないようだ。
そしてトウヤだけは理解出来なかった。
「え、えっと……何があったんですか?」
「ふっ、気にするな悪い事じゃない」
「ええ、性根がひん曲がった小娘が尻尾振ってるだけよ」
「違う!違うもん!」
このままじゃ話を進められないので、クラリスが落ち着くまで待つしか出来なかった。
「うふふ、良い物見られたわねぇ~」
「きぃぃぃ!最近このばば――」
「「ああっ!?」」
一瞬殺気がこの場を包んだ。
「……この二人に良い様に遊ばれてるぅぅ!」
クラリスも落ち着き、仲良し女子会の雰囲気まで出てきた。
「そ、そろそろ、本題に移ってもいいでしょうか」
トウヤは申し訳なさそうに話に割って入った。
「ああ、本来の目的を忘れるなど、本末転倒だな」
「そうね~クラリスに聞きたいことがあったのよねぇ~」
「聞きたいこと?」
この場の例外、トウヤがいると言うことは、聞きたいことはトウヤが持っている。
そう思い、クラリスはトウヤの方を見た。
そして促されるようにトウヤは話す。
「あの、リリって誰だかわかりますか?」
その瞬間、クラリスが顔芸を始めた。
「うわ、嫌そ~」
その反応からリリと言うのは誰か理解しているようだ。
「当たり前でしょ。キョウ君が惚れ込んだ女なんだから」
その答えは想像できた。
「どんな、人物でしたか?」
「会ったのは数回だけど、普通の下人よ」
下人、貴族が平民を指すときに使う呼称だ。
つまりリリとはごく普通の一般人だったと言うことだ。
「何か特徴とかなかったですか?」
「……」
クラリスは少し考えた。
「そういえば気持ち悪い子だったわね」
「は?」
「だから、気持ち悪い子って言ってんのよ!」
いや、それただの主観だろ。と思ってしまった。
「気持ち悪いくらい普通の子だったわ」
「気持ち悪いくらい、普通?」
「ええ、ホント、どうしてキョウ君は気に入ったんだろう?ってくらい普通の子よ」
クラリスが客観的に見て判断してるかは解からない。
「普通の子か、確かに引っかかるな」
貴族は美人が多い。
前にファイゼンがそう言っていた。
恵まれた環境で過度なストレスを受けなければ生き生きと過ごせるだろう。
そこに高貴なる義務が加わり高めのプライドが作られると、
人よりも高貴であると示すために見た目を気にするようになる。
ある者は豪華な装飾品を、ある者は美しい見た目を。
その影響から貴族に美人が多いのでは?とファイゼンは推察していた。
まあ、それがどうであれ、身の回りで豪華で美しい花を見ていた人が、
道端の野草を見て美しいと感じることはかなり稀な感性である。
その場合、野草でも見劣りしない魅力があるはずだが、それが無い。
それに惚れ込む理由が見つからない。
それと同じで貴族世界で生きてきたキョウが、極々普通の一般人であるリリを気に入る。
確かに引っかかる部分ではある。
ただ、人の好みなんて無数にあるし、特異なものばかりを好む人もいる。
もしくはリリという人物を誤解しているのか。
「フルネームはわかりますか?」
「確かリリーサ・ルバイスと言う名前だったはずよ」
「ふむ、一般人だが、こちらでも調べておこう。何かしら出てくればいいが」
「何か前があればいいけどねぇ~」
「それと、もう一つお願いがあるんですけど……」
「なに?」
「キョウ・ネリウムが、どういう人物だったか教えてもらえますか?」
「は?父親に興味を持ったの?」
「いや……いや、違わないか。考え方や好みを知っておくことで、次の作戦を立てようかと……」
「無駄よ……と言いたいところだけど、あなたならキョウ君の邪魔になれそうね」
「邪魔って……」
「乙女の純情をあんな良い様に使い捨てるなんて、ムカつくでしょ?」
自分の性格の方が問題あるのでは?
と思ったがトウヤは黙っていた。




