お茶会に誘われて
お礼回りで尋ねたら、ティーをご馳走になることになった。
なぜ?
いや、無理矢理従わされたんだけど……
「ふむ、君もティーを嗜むとは知らなかったよ」
「そうねぇ~一般の男の子では珍しいわよねぇ」
「い、一応、祖国の施設では、そういう人が多かったから飲む機会が多かっただけで、
お二人のように詳しいわけではないのですが……」
「構わないさ。それに手土産も、良い物を持ってくるな」
「それはファイゼンのお陰です」
「数ある選択肢の中から、最も適したものを選ぶのも君の力さ」
「選択肢を出すことも、大事な力だと思うわよ~」
「は、はぁ……」
特に珍しいことはしてないが、この二人の中での評価が上がったようだ。
過大評価な気もするが……
「それと、気にしているだろうから前もって言っておく。
隠れてるやつのことは気にしなくていいぞ。そういう約束だ」
「約束?」
「ええ、善意で協力してくれたから、何も気にすることはないわよ~」
脅迫、に聞こえてしまったが、これは黙っておいた方が良さそうだ。
「もちろん、君の礼を無下にすることはない。我々がしっかり届けると約束しよう」
「お、お願いします」
あの事件以降、アルカナフォート内のパワーバランスもかなり変化した。
元々あった円卓システムは数が足りず機能停止状態。
クラリスが大部分を消してしまったため、旧システムでは維持が不可能となったようだ。
そして今、一時的なものとして、意思決定の大部分はこの二人に集中している。
クラリスと仲が良かった二人と言うことで、これを乗っ取りという人もいるが、
数が減り、戦力が減少したことを見て、協力関係にあったとするなら無謀と言う人もいる。
戦力を重要視する人が多い影響で、ステラの采配が上手く機能し挽回とまではいかないが、
これ以上の低下を防ぎ、徐々に上向きになったところを評価して一時的に許している現状だ。
もっとも、クラリスの現状は知られていないので、こうなったと言えるが……
「そう言えば、今どのギルドも積極的にクエストを受けているからすごく助かってると聞きました。
アルカナフォートも方針が変わったんですね」
「ああ、今の地位にしがみついた権力者と言う邪魔が今は無いからな。
少し自由な風潮を取り入れ、メンバー自身の積極性を促しているんだ」
「それでメンバーが好きなクエストを受けるようになるなんて、逆に良くなってる?」
「ああ、貴族の高いプライドと上を気にしないで良いという自由を謳歌しているのさ」
「元々、高貴なる義務は持っていたというのが幸いね~」
「身分の高い者にはそれ相応の責務がある的な意味ですか?こっちにもあるんですね」
「ええ、そのお陰で苦労無く良い方向に向かってるわね~」
「ま、あいつがそういう連中だけを残したってのもあるがな」
「あらあら~?ずいぶんとあの子の肩を持つのね~」
「……事実を言ったまでだ」
「そう言えば、三人はなぜ、仲良くなったんですか?」
「あらあら、そんな昔話に興味があるのかしら?」
「面白くもない話をしてもしょうがないだろ」
実際、ステラ、ティーナ、クラリスとかなり性格が違う。
仲良くなれる要素が見当たらない。
いや、ステラとティーナはまだ友好的だ。
ここにクラリスが加われる理由が見当たらない。
それに……
「何かが欠けてる気がするんです。あの人、キョウがクラリスを欲した理由、
先日の管理局襲撃、噂に聞くあの人の人柄と行動に納得出来る理由が無いんですよ」
「と言うと?」
「噂通りなら局の襲撃と同時に麗王までとは言わずとも、七剣徒の
数人を強襲して減らせたはずです。なのにそれをしなかった、なぜ?
噂通りなら上位の麗王を引き入れることも出来たはずです。
でも力の弱い、新人のクラリスだけを引き入れたのはなぜ?」
ついこの間までメンバー勧誘に動いていたのに、しっかりと後の戦いに備えていたことに驚いた。
「噂には尾ひれが付き物だ。だが、クラリスに関して言えば、元々親交があったからかもな」
「親交が?」
「ああ、あのお方はクラリスの“錬金術”に興味を持っていたからな」
「“錬金術”……」
出来る事が多すぎて、まだ全容が把握されていない未知の魔法だ。
「何かをやらせたかったのでしょうか?」
「それはわからん。あいつも頑なに口を閉ざしているからな」
あの人のことを良く知れば解かるかも?
あの人に興味を持ってしまったと同時に嫌悪感に襲われた。
「あらあら、知りたいという気持ちに蓋をしてはダメよ」
「ああ、情報は貴重な戦力に成り得るぞ」
「……実はキョウ・ネリウムってどんな人なんだろうと思ってしまいまして……」
「なるほど、噂ではない話を元に狙いを探ろうと言うことか」
トウヤは無言で頷いた。
「と言っても我々もそう簡単にお会いできる人じゃないからな」
「そこはご親戚の方に聞くのが一番かしらねぇ~?」
「ああ、スプニールは小さい頃に会っただけだと言っていたので、
そこまで詳しく知っているというわけではないみたいですよ?」
「あらあら、その上よ~」
「その上?」
立場が上と言うことだろうか?
そう考えるとある人の顔が出て来てしまい、顔が引きつった。
「ふふっ、君も存外、顔に出るようだな」
本物を前でこれでは速攻で殺されてしまう、気をつけねば……
あの人は弟愛してる的な人なのでかなり偏った話しか出てこない気がする。
「ああ、でも、あの人が出ていくきっかけを作った人っぽいんですよね」
「ああ、こちらも噂程度で聞いたことあるな。確か姉君の方が怒らせてしてしまい、
大喧嘩したことで、家を出ると同時に行方不明となったはずだ」
なるほど、確かにあの人の方が恨んでいるような物言いだったな。
「ああ、あとリリっていう人に聞き覚えはありますか?」
この名前にステラとティーナも聞き覚えがあった。
「確か、君の母親が言っていた……」
母親がミズキに託したキョウへのメッセージ。
「マミはリリの代わりにならへんゆうんは解ってたけど、黙って消えるんは傷ついた。
まだ怒ってます。化けて出てほしゅうないならマミの子を頼む」
ミズキが教えてくれた母の最期の言葉。
そして……
「わたしは……あの子を殺めた事を間違った事と思ってないわ」
オリエンがキョウに言った言葉。
オリエンがリリを殺した?
そのことをキョウが恨んでいる?
それが原因でキョウは麗王の浄化、つまり入れ替えを狙い、
今の麗王を破壊しようとしている。
そのきっかけとなった人物だろう。
「さすがに知らないな」
交友関係に詳しいわけではない。
なので当然の答えだろう。
するとステラは立ち上がった。
「仕方ない。我々では役不足だから、もっと適任のやつの所へ出向くか」
「それもそうね~」
「適任のやつ?」
トウヤには思い浮かばなかった。
が向かった先で理解した。
「あの隠れてる小娘の所にな」




