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支え合い

二人の女に支えられながら部屋に入ってきた。


見た目は女のようだが、この人は男らしい。


名はトウヤと名乗っていた。


「イブ、休んでいるところ、すまない」


休んでいたと言うより、体が思うように動かないのだ。


「アダムからの伝言だ」


「!?」


思わぬ言葉に起き上がろうとしてしまい体に激痛が走った。


「そのままで構わない。体が動かないだろ?」


「あなたも……?」


「も、ってことはイブの方にも行ってたんだな」


体を失っても心配し、世話を焼くなんて、姉を大切にしていたアダムらしい結果だ。


「イブを頼むと託された。そしてイブの幸せをいつまでも願っていると」


「……」


やはり涙が溢れてしまった。


「私の……所でも……幸せになれと……言ってた……」


「そうか」


「ねぇ……トウヤ」


「なんだ?」


「生きることが……こんなに……辛いなんて……思わなかった」


「ああ、俺も家族を失っている。と言っても血は繋がってないけどね。

でも生きていたからこそ、本当に血の繋がった妹が見つかった。

母親がどんな人だったかも……父親は凄く嫌な感じだったけど……」


「……」


「もちろん辛いこともあった。一緒に育った家族が出来たのに、また失ったり、

知りたくもなかったことや、これから起こる嫌なことも出会ってしまった」


「……トウヤは……強い」


その言葉にトウヤは優しい笑みで、ゆっくり首を横に振った。


「俺自身が強いわけじゃない。こうやって支えてくれる人が居るからだよ」


一人ならトウヤも同じことを思っていたと思う。


そうならなかったのは共に居てくれる仲間に恵まれたからだ。


まぁ、魔導士の仕事の忙しさも無くはないし、楽しみもあったと思う。


ただ、一人じゃないということはすごく大きいだろう。


ポーラ、ファイゼン、リーシャ、リンシェン。


セレス、ティア、ミナ、ルー。


そして今ではリリス、マリア、ミズキ、クルル、スプニール、リヤナ、ミイナと増えていった。


「仕事の仲間としてだけじゃない、互いの思いを支え合える存在がいるからだ」


そう言うトウヤの顔は輝いているように見えた。


そしてその輝きはイブにとって眩しく感じた。


「わたし……には……」


「ここにいるだろ!」


「!?」


イブは驚いて言葉を失った。


「アダムの代わりになるとは言わない、むしろなれない。でもアダムとは違う形で、

イブのこれからを支えるし、俺達と一緒に作っていこうよ」


王からは道具のように扱われ、他の人からは化け物のように扱われた。


その環境に自分はその程度の価値だと諦めると同時に、寂しさもあった。


それを埋めるように家族との絆を深め、それを大切にしていた。


そしてそれを失い、諦めたいと思っていたのに……


イブの目から、ポロポロと涙が溢れた。


「アダムの……言ったとおりだ」


「?」


夢の中でアダムが言ったとおりだった。


「トウヤなら……信じてもいい……そう言ってた」


「ああ、俺も頼まれた」


「……うん」


生きることを諦めない、イブの瞳にしっかりと光が宿ったように見えた。




ここからの回復は早かった。


元々魔法の見識があったトウヤは自身の魔力を積極的に治療に使い、

重傷だった怪我を十数日で回復させた。


そして同時にリハビリも行い、仕事復帰まで行った。


対してイブはゆっくりとだが、確実に治療を行った。


精神的にも前を向いたことで、自身の魔力での治療も受けいれてくれた。


退院する日もそう遠くないだろう。


「あれだけの怪我を十数日で治すとか、とんだバケモノ回復力だろ」


「そう?こっちの感覚だと一月なんだけどな」


「そうだとしてもとんでもない回復力だろ」


「体の回復力ならリーシャと肩を並べられるだろうな」


「体のつくりが違ううちと一緒にすんな」


ギルドの部屋にいたリーシャとファイゼンが饒舌に話す。


普段クールなリーシャもこの時ばかりは喜んでいるようで、普段より言葉数が多い。


「ま、綺麗に治ったのは俺も意外だったよ」


「それはステラさんとティーナさんが動いてくれたからよ」


ちょうどポーラが戻ってきたようだ。


「お兄ちゃん!」


ポーラの陰から飛び出してきた物に力一杯抱きしめられた。


「ちょちょちょちょ!ミズキ!」


「もう無茶せんといて」


「……ああ。でも、イブの為にも、あれくらいしないとって思ってたんだ」


「死んだら元も無いやん」


「それは……そうだね」


もう簡単に死ねない。


死んだら悲しむ人が居る。


変わった環境をまだ理解しきれていなかったようだ。


「ん!んん!!」


話しを中断されたポーラが咳払いで仲良し兄妹を止める。


「あ、ポーラも引率ありがとう」


リーダー不在でもギルドの仕事は熟さないと収入が無くなるため、

ポーラがミズキ、マリア、リリスの面倒を引き受けてくれたようだ。


「ん。話し戻すけど、今回もステラさんとティーナさんには感謝しなさいよ」


「ああ、わかった。後でお礼に行ってくるよ」


「三人分ね」


「三人?」


ステラとティーナで二人のはずだが?


「隠れてるあの人が、皮膚を一生懸命培養してくれたのよ」


「ああ、そういうことか」


人の細胞情報を大量に持っているあの人ならトウヤの皮膚を、

いや、残った皮膚から増やして移植させたのだろう。


跡が残らないほど綺麗に治ったのはそういう理由らしい。


そしておそらくイブにも同じことをやっただろう。


「感謝すべきなんだろうけど、素直に出来ないな」


日頃の行いから簡単に感謝出来ないのがあの人である。


と言うかあの人の性格から、ステラ、ティーナに無理矢理従わされたのだろう。


「挨拶に行くならお菓子ぐらい持っていくべきかな?ファイゼンって好み知ってたりする?」


「おう、まかせとけ」


当たり前と言わんばかりだったが、今は感謝するしかない。


「じゃ、俺ファイゼンと買い物してから挨拶してくるよ」


「あ、私も――」


一緒に行こうとしたミズキを、トウヤは手で止めた。


そしてポーラを指す。


「ミズキ、報告書と、あんたは魔法の訓練が必要でしょ?」


顔が笑っているが圧がある。


この中でミズキが一番魔法を使い慣れていない。


それをカバーするための訓練だろう。


「え……あの……はい」


逆らわない方が良い。


そう理解し、トウヤと一緒に行くことを諦めた。


「あとでな」


そう言い残すとファイゼンと出て行った。


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