本当は・・・・・・
「お前は、随分と甘いやつなようだな」
腹部を抑え、蹲るトウヤとは反対に、アダムはスッと姿勢を持ち上げた。
「アダム、なにを――!?」
横から何かが飛んできて、イブの頬に当たり、吹っ飛んでいった。
「意識が……」
「ああ、少し前から戻っていた」
王の魔法は一時的なようで、少し前から効果は切れていたようだ。
「なら……何で……」
「お前がイブの仲間で問題無いか知りたかったんだ」
「はは……そんなことを……」
「結果は合格、イブを預けてもいいよ」
「預ける?アダムも一緒に――」
「行けないよ。俺達は沢山の人を殺した。特に俺は楽しんで、ね」
自分の行いを悔いている……のか?
思いもよらぬ言葉に、頭の整理が追い付かない。
「これは、許されない罪だ。そしてその罪を償わずに幸せになることは許されない」
整理が追い付かないが、何が言いたいか察しがついた。
「俺は――」
「それは許さない!」
トウヤは言わせない。
「家族を失うのは、償いだとしても悲惨だろう。それがたった一人なら……」
「だからお前に預けるんだ。それだけあいつの事思ってくれるなら立ち直れるさ」
「アダム!」
吹っ飛ばされていたイブが戻ってきた。
「イブ、お前の罪は俺が持っていこう。お前は……幸せになれ」
「アダム!」
飛び立とうとしたアダムにトウヤは飛びついた。
「なにを!?」
「ようやく、捕まえた」
魔法を警戒せず、近くに寄ってくれる、このチャンスをトウヤは逃さなかった。
「まさか、このまま!?」
「イブ!」
トウヤはそのままイブに手を差し出す。
狙いを理解したイブは大急ぎでトウヤの所へ向かう。
だがアダムが大きな刃で地面を抉るように薙ぎ払い、イブの足を一瞬止めた。
そして同時に片手で拘束が緩くなったトウヤの腕を掴み後ろ手にして背中に回った。
「うぐっ」
どんなに回避に長けた目を持っていても、密着状態からの関節技には無意味だ。
「触れていれば一緒に転送可能、一人ずつしないところを見ると、
往復に多少の時間がかかると言うことだろうな」
転移の仕様を見破られた。
「じゃあな、イブ」
「ダメ……行かないで!」
「イブは死ぬ気だ!」
「!?」
トウヤの叫びに、飛び去ろうとしていたアダムの足が止まった。
「どういう……ことだ?」
「イブはアダムが助からないなら自分も見捨ててくれと言っている。
今ここで隠れると言うことは、イブを殺すことになるぞ」
アダムは驚いた顔でイブを見ると、黙って頷かれた。
トウヤの話は嘘じゃないと言うことだ。
「なら、どうやって……」
「死ぬ事だけが償いじゃない!」
「そんなことは!……そんなことは……」
「お前が肩代わりするようにイブだって一緒に償ってもいいと思ってるはずだ。
それに俺達だって、そういうやつだと解かって仲間に入れようとしている。
一人で背負い込むな、これからは頼っていいんだぞ」
「……」
アダムが黙り、動かなくなっている隙にイブは抱きつくようにアダムを捕まえた。
「代わりに死ぬなんて……言わないで」
「……ああ、俺が悪かった」
アダムは謝罪の言葉を口にするとトウヤを離した。
これでアダムも説得出来た。
そう安心した瞬間、とてつもない暴風に襲われた。
「うわっ!」「きゃ!」「うっ!」
暴風は竜巻となり、ありとあらゆるものを吹きあげていく。
一瞬で体が不規則に回り、何処が何処だかわからない。
「熱っ!?」
風の中に熱風が混ざっている。
だがそのお陰で意識を失わずに済んだ。
トウヤは|“駆《かけ》”を使うと風の影響が消え、姿勢が安定した。
そして周りを確認すると、危険な状況を理解した。
どす黒い雲が暴風に流され、それが竜巻に混ざり視界が悪い。
さらに砂や塵と言った物も混ざり数m先も見づらい。
(あの一瞬でどこまで飛んだんだ!?)
そして暴風の音に紛れて雷鳴も聞こえる。
最悪なのが稲光だ。
これが四方を光らせ方向感覚を掴ませない。
「トウヤ!急いでくれ!予想よりも速い!」
念話でリンシェンが教えてくれた。
一刻の猶予も許されない。
だがどっちへ向かえばいいかわからない。
せめて上下さえ掴めれば……
重力を感じることが出来れば、その方向が地上、つまり下だ。
ん?重力?
「そうだ!」
自由な発想で魔法が創れるトウヤの魔法も、使う側が忘れてたら意味が無い。
「要!トランスフォーム!!重力の剣!」
トウヤはデバイスで黒い剣を出す。
「高重力の拘束!!」
超重力で落ちる剣で下が解かると、即座に解除。
下が解かった。なのでその反対、上に向かった。
その道中、飛んでいる物から風の流れを確認する。
イブもアダムも見つからない。
ただ飛ばされただけならこの先、だが別の竜巻なら絶望的だ。
「トウヤ、もっと上だ!そしてお前から見て左後ろ!」
局の魔力探知が反応したようだ。
「良いサポートだ!」
さらに飛び上がり、指定された方角を確認する。
黒い雲、風以外にも様々な物が飛んでいる。
どれだ!どこだ!
「距離200、300、離れてるぞ!」
視界が悪い中を進んで行く。
追い越さないよう慎重に、けど素早く進んで行く。
するとキラキラ光る何かを見つけることが出来た。
(まさか!?)




