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本当に欲しかった

「うぐ!?……ぐあああ!」


急に苦しみだしたアダムの陰から王が見えた。


「きさま……許さんぞ!」


王はトウヤに憎悪の目を向けている。


「アダム!何をした!?」


「暴走させるんだ!きさまを徹底的に潰してやる!」


「クズが!」


トウヤの感情に応えるように突風が吹く。


「うああああ!」


その凄まじい風に王を含め、倒れていた兵達も飛ばされる。


飛ばされなかったのは魔法で戦闘態勢になっているトウヤとアダム、

そしてトウヤに担がれているイブだけだ。


(まずい、もうこんなにも荒れ始めたのか)


暴走と言っていた。


今連れて帰っても良いが、むこうで暴れられても困る。


ついでに転移の仕組み上、しばらくはトウヤ、イブと一緒の空間に入ることになるので、

その限られた空間での戦闘は難しい。


なので一度暴走を抑える必要がある。


「イブ!イブ!しっかりしてくれ!!」


担いているイブを目覚めさせようとしたが、うわ言を言うだけで反応が無い。


「うがあああ!!」


奇声を上げながらアダムが襲ってきた。


やり方はイブがやってた腕を刃にする方法。


トウヤはデバイスを構え、アダムの刃を受け流す。


「う、くっ……」


利き腕の方にイブを担ぎ、そうでない方で刃を受けている為、非情にやり辛い。


徐々に力負けしていく。


「イブ!イブ!」


返事が無い。


「仕方ない」


アダムから離れるように空中へ逃げた。


するとアダムは“変形(トランス)”で翼を作り追ってきた。


周りよりもトウヤ自身に執着しているようだ。


ならば都合がいい。


トウヤは逃げながらイブを背負うように担ぎ直し、魔法で紐を作った。


そして自分にしがみつかせる様に紐で固定した。


「おっと!?」


縛るのに集中していて気付かなかったが、すぐ近くで竜巻が発生していた。


そしてあたりを見渡すと周りには幾つもの竜巻が発生していた。


気流の乱れから来る暴風、そして雷の光、ゴロゴロと雷鳴も聞こえ始めた。


「って、アダムは!?」


見当たらない。近くに居ないのか?


そしてある事に気付いた。


「しまった!」


自分の魔法を基準に考えていたので忘れていた。


トウヤの飛行魔法は空間操作での疑似的な飛行を実現している。


そのため、周りの環境に影響なく空を飛ぶことが出来ている。


対してイブとアダムは翼を使った物理的な飛行。


この突風で飛ぶことは難しい。


急いで来た道を戻ると、近くに竜巻が発生していた。


そしてその上空にアダムの姿があった。


やはり竜巻に巻き込まれ上空に飛ばされたようだ。


トウヤは助けるために逆回転の竜巻を作り出し相殺した。


すると動けるようになった瞬間、アダムがトウヤに襲い掛かった。


(目を回してないとか、流石だな)


予想通りの行動だったが感心した。


アダムのポテンシャルはかなり高い。


この狂暴性や、話に聞いた残虐性を何とか出来れば、これほど頼もしい前衛はいない。


トウヤは刃の攻撃を受け、にらみ合った。


「絶対に助けてやる!イブと一緒に、お前も連れて行く!」


トウヤは一気に魔力を放つ。


「ギア・セカンド!」


トウヤの放つ魔力に、アダムは一瞬驚いたような反応を見せたが、構わず襲ってくる。


連続した突き刺す攻撃をトウヤは躱す。


背中にイブが居ることを考え、所々受け流す。


突き刺しは無駄と考えたアダムは、薙ぎ払うように動かした。


(全身凶器は厄介だな)


変形(トランス)”で変えた刃には普通の常識は通用しない。


薙ぎ払った刃をそのまま返す。


通常の刃は刃面に表と裏があり、返すときにひっくり返す必要がある。


そのため刃面を回す必要があるが、“変形(トランス)”はそのまま変えればいい。


両刃にしないあたり、暗殺者として警戒させないための配慮だろう。


気付かなければそのままスパッと切られてしまう。


しかしトウヤは難なく躱していく。


前情報があったため、しっかり警戒していた。


だが躱すことはアダムにとって想定内だった。


タイミングを見て剣で薙ぎ払う動きから鎌で薙ぎ払う動きに変えた。


その攻撃もトウヤは躱す。


アダムは鎌を大きくした。


その攻撃もトウヤは躱した。


次は頭を狙う。


トウヤは上体を逸らし躱した。


アダムはここを狙っていた。


上体を逸らした場合、足元の死角が増える。


ここで足を“変形(トランス)”で刃に変え、そのまま蹴り上げた。


いや、上がり切らない。


見えない壁に阻まれたように見える。


「死角を作り、そこから攻撃する。常套手段だな」


トウヤはしっかり予想し、“(たち)”を足元に出していた。


そして不意に攻撃を止めたことでスキが生じ、トウヤの攻撃のチャンスが生まれる。


そのスキを使い、トウヤはデバイスで反撃した。


だが簡単に止められた。


殺しのプロと素人に毛が生えた程度の剣士、力の差はしっかり存在した。


まあ、素人に毛が生えた程度は卑下しすぎかもしれない。


トウヤはデバイスを変形させた。


「“音速の剣(ソニックブレード)”!」


音速に近い速度で切るデバイスは非常に速い代わりに攻撃が軽いという欠点を持つ。


だが今回はこれが役に立つ。


殺す気は無い。ある程度気絶するほどで十分、手数を重視したものだ。


だが思いもよらないことが起こった。


アダムはこの近距離で“音速の剣(ソニックブレード)”を見切ったのだ。


「嘘だろ!?」


アダムはそれだけ戦闘に長けていた。


いくら素質があっても使えなければ意味は無い。


魔導士としての素質はトウヤの方が上だろう。


だが対人による戦闘経験はアダムの方がはるかに上。


嬉しいような悲しいような……


この時間の無い状況では悲しみが勝った。


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