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アダムを説得

局内は慌ただしく人が動いている。


「ちぃ!原因は巨大彗星か!いや、元々弱ってたってものあるか」


局の計算で次々とエンデの様子が明らかになる。


元々エンデという惑星は公転する力が失われてきていた。


今も自転しているのがやっとだろう。


そして惑星の核の冷却化。


この原因はまだ解っていないが、惑星の弱化を一気に加速させたのだろう。


そしてそこに巨大彗星の接近という偶然が重なった。


これにより彗星に引かれるように公転位置が内側に進んでいるのだろう。


「リンシェン、このままだとエンデでは何が起こるの?」


「まず自転が失われると風の影響が出てくる。惑星の力で大気に流れが生まれ、

惑星の周りに留まっていたのが、宇宙空間に流れ出す。もちろん地上は暴風が頻発する」


風で飛ばされる。それだけならトウヤを助けることは出来るだろう。


問題は飛ばされて何かに当たることだ。


魔法で守られているトウヤは多少の衝突には耐えられるが、イブは怪しい。


「そして重力にも影響が出るから、人は簡単に飛ばされるし、地形も大きく変化するだろう」


つまり生物が地上に留まるのは不可能だ。


「そして一番危険なのが公転位置が内側に進んでいることだ。太陽風と呼ばれている

プラズマ流が強まり、そこに含まれる宇宙線や紫外線が増えて生物に悪影響を及ぼす。

さらにこの太陽風は大気を吹き飛ばす力があるから生存確率が一気に下がる」


「太陽ってことは気温も変化するよね」


「ああ、灼熱地獄になる。だがこればかりは太陽と惑星のエネルギー関係を

見ないと正確な時間が出せない。今、エンデの情報で――」


「ポーラ!」


「マリア、みんな。戻ってきたのね」


無事、トウヤと同行していたマリア、リリス、ミズキ、そしてリヤナとミイナが帰還した。


「これから、あの惑星(ほし)に起こることを教えて。それと強制転送の準備は?」


「いつでも転送出来ます」


強制転送は局が所属魔導士に対して行う緊急脱出装置だ。


魔導士の命を守るためにサポーターが行う処置で、これにより、生存率を少しでも上げている。


トウヤも最悪の場合、イブとアダムを見殺しにしてこれを使うことになる。


「惑星エンデについて通達!公転速度の加速を確認!加速しながら太陽に近づいています!!」


「!?」


時間がどんどん無くなっていく。


急がなければ、トウヤへの死のカウントダウンは着々と減っている。


「現在の速度を共有してくれ!」


「はい!」


リンシェンの元にも情報が集まる。


「!?なんて速さだ!」


共有された情報を元にリンシェンは再度計算した。


エンデの太陽のエネルギー発生量、エンデに届くエネルギー量、そして……


「出た!およそ13時間!生物が生きていられる時間だ!」


「13時間、まだ余裕がありそうね」


「いや、これは今の速さだ。加速しているんだからもっと短くなる!」


「え!?じゃあ……」


「安全を優先するなら2時間、これが限度だろう」


「!!」


これから戦闘と説得となると、あまりにも時間が短い。


「トウヤ……変な気遣いが出なきゃいいけど……」


トウヤの説得は相手の意思を尊重する場合が多い。


手早く済ませてくれれば……




心なしか、風が強くなってきた気がする。


死ぬかもしれないと言うのに、妙に落ち着いていた。


「うわぁ、聞いた通りだな……」


非常に大きな円が目の前にある。


報告通りならアダムの円だ。


「イブ、ここにアダムの円がある。一歩踏み込めば、アダムに知られるだろう」


「ええ、むしろ好都合かもしれない。今、王に会いたくないもの」


「そうか。なら呼び出す方が良さそうだね」


そう言うとイブは円の中に入った。


キン


トウヤに向けられた刃を止めた。


「どういうつもりか説明してもらおうか、イブ」


イブがトウヤを守った。


アダムはそのことが信じられない様子だ。


「話を聞いてほしいの」


「話?お前、俺が王からどんな命令を受けているのか知っているのか?」


「ええ、私を殺せ、でしょ?」


「知っているならなぜ来た?」


「アダムと逃げるためよ」


「!?」


「そしてこの人、トウヤが協力してくれる」


「……信用出来るのか?」


アダムは睨むようにトウヤを見る。


「俺は二人と同じような力を持っている」


そう言うとトウヤは左右に人差し指を近づけ、その間にパチパチと電気を通した。


すると、アダムは疑いの目から驚きの目に変わった。


「生き残り……」


「ではない。俺は王と面識が無いからな」


「誑かされた」


「違う」


こちらはイブが否定した。


「なぜ俺達を逃がす?」


「逃がすと言うより俺達の所へ来てほしいんだ。俺達は今仲間を探している。

このような力、俺達は魔法と呼んでいるんだが、魔法で仕事をしている。

仕事内容は品物の探索、特定の獣の討伐はもちろん、様々な種類がある。

もちろん、君達が得意としている暗殺の依頼も存在する」


暗殺と言う言葉にアダムはピクリと反応した。


だが想定の範囲内、構わず説明を続ける。


「暗殺と言っても個人の好き嫌いじゃない。人の秩序を守るためだ。

世の中には力を持たない人も存在するし、その人達にとって力のある人は脅威だ。

恐怖で支配し、命令に従わせたり、と逆らえない状態にされることもある。

そうならないようにするのが秩序で、それを守るために俺達のような人がいる。

暗殺対象は秩序を壊す人に限られている」


「俺達のような殺人兵器もそれになるんじゃないのか?」


「殺人の理由が王の命令だからだろ?それに命令に従わせるような魔法も

使っている。当人達には拒むことが出来なかったのだから違うだろ?」


「ははっ、知らないようだな。俺は殺しを楽しんでいる」


「ああ、聞いている。だからこちらで止める手立てを用意している」


「それで止められるとでも?」


「いくつか方法は用意するが、今見せられるのは力づくで、くらいかな?」


「力づくで……へえ、止められるんだ?」


「現に私は止められた」


「……なるほど、個人では止められたようだな。なら二人同時なら?」


「俺一人じゃない。イブが殺せなかった人は他にもいるし、世界にはもっと強いやつらもいる」


「へぇ……殺しを許す国に……ねぇ……」


アダムは何か言いたげだが、敵意は無いように思える。


「アダム、お願い、今は私を信じてついて来て。お願い、急いで……」


説得をと思ったが、事情を知っているイブは限界に近付いているようだ。


「イブ?何を焦っている?」


さすが双子だ。ちょっとした変化にいち早く気付いている。


「実は――」


「そこまでだ!」


男の声が話を遮った。


ジャラジャラと金属音を鳴らしながら武器を持った連中が現れた。


そしてその中心に派手な格好の男がいる。


「王……様」


出くわしたくなかったその人物に、イブは顔を曇らせた。


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