死んだ惑星
イブの故郷、惑星エンデは現在、コアが一気に冷えているらしい。
原因はまだわからない。
コアが冷えると言うことは、惑星の中心部が冷える事。
それに伴い惑星全体が冷えてしまっているのだ。
そして惑星が冷えると言うことはマグマも冷え固まる。
だからこそ噴火したばかりの活火山が冷えて固まり休火山になった。
リンシェンが青ざめた理由はこれだった。
「惑星ってそんなに早く死ぬのか?」
「わからない。こうなるだろうと予想は沢山されたが、実際に見届けた例は無い」
惑星の消滅は人間が見届けるにはあまりにも長い。
「今のこの惑星のことだけでいい、何が起きてるか、
どれくらいの猶予があるのか、そこだけを重点的に教えてくれ!」
「だから何が起こるかわからないから早く脱出しろと言ってるんだ!」
何が起こるかわからないほど危険、そんなのはわかってる。
でも……
「計算終わりました!」
後ろの方で声がする。
向こうも向こうで大騒ぎなようだ。
「トウヤ、私よ」
「ポーラ?」
「計算によると惑星エンデは公転軌道が外れてる。徐々に太陽に近づいてるわ」
「!?」
「アダムは……アダムはどうなるの?」
全員に声が聞こえるようにしていたので、イブにも会話の内容は聞こえている。
「その声、まさかイブ!?」
「ああ、説得出来た。あとはアダムだけだ!」
「さすがね!」
ポーラは期待通り、いや、もっと時間がかかると思っていたが、
予想よりも早く出来たことに感心した。
「私達の国に転移出来れば救えるわ。ただその条件は関係者と一緒であること。
この一緒と言うのは体に触れている状態、つまり無理矢理でも捕まえれば救えるわ!」
かなり難しいが競り合いの状態でも構わない。
そして今回はアダムと同じ環境で育ったイブもいる。
希望は十分にある。
「ポーラ、リミットは?いつまでに転移出来ればいい?」
「ちょっと待って……こっちにも結果を共有して!」
あり得ない出来事に、局内もかなり混乱しているようだ。
「……ん?これどう見たらいいの?」
「これは……は?嘘だろ!?」
宇宙科学は専門的な話になるためポーラは理解しづらいようだが、
そちらにも知見があるリンシェンはすぐに理解できたようだ。
「簡単に言えば、……一日も無い」
「!?」
「辛うじて自転はしているが、公転せず、徐々に吸い込まれている状態だ。
そしてその吸い込みは徐々に加速している。何が起こるか予想出来ないから、
即離脱、これが一番の選択肢だ」
「……わかった」
「トウヤ……まさか!?」
「全員帰還しろ」
全員帰還、すなわちアダムを見捨てると言うことだ。
「いや……いや!アダムが……」
唯一の家族を見捨てる選択に、イブは大粒の涙を流した。
だが、トウヤは……
「俺とイブでアダム救出に向かう!」
「「!?」」
トウヤの言葉に全員驚いた。
だが即座に声が上がる。
「私も残る!」
「は?」
「お兄ちゃん残して行かれへんわ」
「あのなぁ……」
「私も残る」
「リリスまで……」
「え?一人で帰りづらいじゃん」
「いや……待て待て、マリアまで残るとか言うなよ」
「そうよ、みんな。まずはトウヤの意見を聞くべきよ。
なんでそんなふざけたこと言うのかきっちり説明してもらわないと、ねえ?」
「リヤナ、そんなに語尾を荒げなくても……」
なかば脅迫に近い感じで全員残る気なようだ。
「ちゃんと説明するから」
「くだらない理由なら怒るわよ?」
リヤナは笑顔で拳を見せてきた。
「……はっきり言ってアダムはイブより戦闘に長けている。イブとの戦闘で
特に三人は全く対応出来なかった。茨からの転移は目隠しになっていたのもあり、
偶然上手くいっただけに過ぎないと思う」
リリス、マリア、ミズキは支援もギリギリだった。
「ミイナは負傷により片腕が魔法が使えない、リヤナも防御だけで攻撃出来ていないだろ?」
あまり良くない結果に全員黙ってしまった。
「それに貴族である二人にもしもの事があったら、スプニールが困るだろ?」
トウヤがスプニールの身内であるとわかったので、トウヤの行動次第では迷惑がかかる。
それが貴族の世界だ。
と言ってもミイナは自由だし、リヤナの義父の白酔馬の君も同行を許している。
これで共倒れになっても影響は少ないだろう。
だがトウヤよりも貴族の世界を知る二人は大人しく引いた。
「そこまで……考えていたのね」
「私もマスターの意思に従うまでですので、従いま~す」
トウヤは頷き、同意してくれたことに感謝した。
「それに局のシステムもギリギリだ。いざという時数人まとめてよりは、
俺一人に集中させていた方が楽でしょ?」
「局のシステムはそんなに脆くないわよ」
ポーラの声も呆れた感じだが、トウヤの意思を尊重してくれたようだ。
「ありがとう。緊急の時は伝えてくれ。急いでイブを捕まえる」
「うん、こっちでも監視して、いつでも緊急脱出出来るようにしてるから。
急ぎなさいよ。今、その惑星は私達の常識から大きく外れた状態。
この後、何が起こるか全く予想出来ない状態だってことを忘れないで」
「ああ。イブ、一番最悪な結果はアダムを見捨てる――」
「その時は私も捨てて」
「!?」
イブの答えに驚き……いや、そうなるかと思ってしまった。
イブは弟と一緒にいることを望んでいる。
だからこそここに留まっていた。
そんなイブにアダムを見捨てることは出来ない。
「……わかった」
「いいの!?トウヤは仲間に入れるために……」
リヤナはトウヤの答えに納得出来ていないようだ。
「……ああ、家族を失うって辛いんだぜ?それが唯一の家族なら……」
リヤナにはまだ経験が無い。
トウヤは家族のような存在を失った経験がある。
そしてイブはそれ以上の……
「信じて……待ってるから」
リヤナは止めることが出来ない。
ならせめてもの言葉をトウヤに送った。
「……ああ」
リヤナにしっかり答えると、トウヤは他の面々を見る。
全員、同じ気持ちのようだ。
「じゃ、行ってくる」
そう言うとトウヤとイブは王城へ向かった。




