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初めて負けた

「う……ん……」


なんとも心地よい感覚だ。


久々に良い布団に()()……


寝てる!?


そう思うと飛び起きた。


「あ、目覚ましたで」


争い事とは無縁そうな、おっとり顔の女の子が誰かを呼んでいる。


「お目覚?イブ」


女の子が呼んだ人には見覚えがあった。


そして起こった出来事を理解した。


「負けた、のね」


「ああ、イブが初めて殺せなかったぜ」


トウヤの顔は、どこかドヤってる気がする。


「初めてじゃない、三人目よ」


「え!?」


「アダム、王様に次いで三人目よ」


マリアがプッと吹いたが、トウヤは睨みつけて黙らせた。


「ま、まあこれで難しいと思われた難関は突破した。後はアダムを連れ出せばいいな」


「……あの時、殺したと思っていたのに、どうして後ろに居たの?」


「ん?ああ、あれはマリアの魔法さ」


茨に覆われ逃げ道が無くなった時、とっさにマリアがトウヤ達を転移させたのだ。


そしてイブの後ろに移動したトウヤは、そのままイブに攻撃した。


「そう、だったの」


仕組みが解ればとても簡単な理由だった。


「それに新しい収穫もあるよ」


「?」


トウヤは宙に浮かぶ画面で、先ほどの戦闘の様子を映し出した。


「ここ、俺達を殺したと思った後、今までと反応が遅くなっている。

と言うことは、幻なんかで殺したと実感させれば落ち着くんじゃないのか?」


確かにトウヤの言う通り、気持ちの高ぶりが一気に下がり、落ち着きを取り戻した感じがあった。


つまりイブは実際に人を殺す必要は無い。


疑似体験でも十分衝動を抑えられる可能性があるのだ。


「じゃ、じゃあ……」


「ああ、問題無く仲間に迎え入れられる可能性が増えたってことさ、それに」


トウヤはミイナに目配せで合図した。


「はい、目覚める前に少しだけ調べさせてもらいましたが、案の定、快感や不快感を

脳に与える魔法がありました。おそらくこれを使い人殺しの罪悪感を消していたんですね」


「そんなことが……出来るのね」


「ま、脳は電気信号で動いているからね。外部からそれに対応する電気信号を使えば、

ある程度の制御は可能と言う訳さ。これって候補1と同じ仕組みだろうね」


「なら、アダムも……」


「同じだろうね」


「はい、個人差は必ず出ますね。マスターもそこを悩んでいらしたので……」


同じ魔法を使っても、双子でも必ず差が生まれる。


それだけ人間とは難しい存在と言うことだろう。


そしてその差のせいでイブは悩み、苦しんでいた。


「だから次は一緒にアダムを説得することに協力してほしい。

他人の言うことよりも実の姉の方が話を聞いてくれる可能性が高い」


イブは黙って頷いた。


これでアダム勧誘成功の可能性が高くなった。


「たぶんアダムも戦闘になるだろう、あらかじめイブとアダムの能力を教えてくれないか?」


今度は前もって準備できる、これは戦闘において非常に有利になる。


「私とアダムは同じ力を持ってるわ」


双子だから、と言うより同じ魔法を使う人間はたくさんいる。


魔法は基本的な部分は同じなのだ。


そこに個人の得手不得手から使える魔法の範囲が広がり、無数の組み合わせが生まれる。


組み合わせも、量も人によって変わるため、さまざまな変化があり無数の魔法が存在する。


多くの人が扱えるような汎用的な魔法から、専門家しか使えない魔法まで多岐に渡る。


もちろんこれは一般魔法と呼ばれる、多くの魔法使いが使える魔法の話で、

リヤナ達のような特別な物は全く別な話に変わる。


イブもアダムも一般人と呼ばれる人に分類され、一般魔法と呼ばれる魔法を使うので、

同じ力を持っていても不思議ではない。むしろ想定の範囲内だ。


「だけどアダムは私と違って殺すことに一切の迷いが無い。純粋に殺すことを楽しんでいるわ」


迷いが無い。


それは一瞬のやり取りが生死を分ける世界では強力な武器になる。


「見た目や体つきはイブとはだいぶ変わるよね?」


「ええ、アダムの方が体は大きいし力も強い。だから私じゃ勝てないわ」


魔法の技術が全く同じならば、あとは自身の能力の差が物を言う。


力ではどうしても劣ってしまうイブが負けるのは納得だ。


さらに体格差はそのまま攻撃のリーチへと変わる。


リーチがあると言うことはそれだけ攻撃には有利に働く。


もちろん、そのリーチが仇となるやり方もあるが、知ることが出来なければ無理だろう。


「魔力も同じくらいかな?イブと同じくらいならリヤナは防げそうだけど?」


「そうね、イブも結局は“不侵の毒(コルドン)”を破れなかった。

だから大丈夫かもしれないけど、あの大きな円を維持している相手よ?高いと見た方がいいわ」


「円?」


「こう、透明な膜を周りに張って、触れた物をいち早く知る魔法なんだけど、

もしかしてイブも出来たりする?」


「……これのことかしら?」


そう言うとイブは周りに円を広げた。


「そ、それだよ。範囲とどれだけ続けられるか解かる?」


円は上級者向けの魔法なので、驚いた。


「ここから、あの高い建物くらいで、たぶん……今から陽が落ちるまでは出来ると思う」


範囲は半径約300m、今は昼頃なのでここでの約5時間は維持できると言うことだ。


そこにリヤナの報告を合わせると、やはりイブよりは戦いに長けている。


「そう考えると、ミイナは戦闘に参加しない方がいいな」


「そうですね~片手使えませんし~」


おっと、忘れていた。ミイナは負傷者だ。


ミイナの代わりにイブが加わっても状況は厳しいだろう。


「アダムの方が力がある分押し負けるだろうが、やり方はイブと同じ。

と言ってもミイナの代わりにイブが加わるからより接近する形になる。

俺とイブ、リヤナ以外は決して顔を見せないよう支援してくれ」


無言で頷くみんなの顔を確認した。


「説得はイブに任せたい。戦闘になるのは仕方ないが、致命傷だけは負わせないように、

俺とリヤナはイブを支援しつつ、王達の制圧だ。邪魔されないよう徹底的にな」


「ええ、魔法が使えない連中なんて目じゃないわ」


「い、いや、もしかしたら王は使えるんじゃね?」


「え?」


「魔法が使えない人間が、魔法を使える人を生み出すことは出来ないだろ?」


「……ああ、そうか」


確定ではないが使えることを隠している可能性がある。


「ついでに実験体がいるかもしれないな」


出来たからと言ってイブとアダムだけとは限らない。


警戒することはいっぱいあった。


そして出発しようとした時――


「トウヤ!大変にゃ!!」


いきなり大音量の念話で話され驚いた。


「!?!?……うっさいボケ!音量気をつけろよ!」


声からしてリンシェンだ。


「そんなことより!急いでそこから脱出しろ!」


「待てよ、まだアダムに会えてないんだ」


「なら無理矢理でも連れてこい!」


「そう簡単に出来るか!ってか何でそんなに焦ってるんだ?」


「いいか、落ち着いて聞けよ?」


お前が落ち着けと言いたかったが、ここはグッと堪える。


「その惑星(ほし)はもう死んだ」


「…………は?」


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