襲い来る茨
無数の茨が襲い掛かる。
幸い少し離れていたトウヤとリヤナは魔法が間に合い防ぐことが出来た。
しかし
「あぐぅ!」
「ミイナ!!」
目の前にいたミイナは完全に遅れた。
だが反応は早かった。
茨が刺さったのは片腕のみ、致命的ではなかった。
普通の茨なら……
「い――!?ぎゃあああ!!」
イブが操作する茨はどんどん中へ侵食し、それと同時に激痛が走っているのだろう。
だがそれを阻止する術が無い。
切断しようにも、これは石綿の檻から伸ばした茨。
硬度は石、いや、イブの“変形”で変化させたなら体内で鉄などに変えたかもしれない。
そして細く無数に伸びていたので、体内で複雑に絡まっているだろう。
そんな状態で切断、ないし引き抜こうとすれば、ミイナの体を削り落すことになる。
切断時も全く引かれずに切れるほどの切れ味を出せるかもわからない。
痛みに藻掻き苦しむミイナを見てることしか出来なかった。
そこに新たに人影が現れた。
リリスだ。
マリアの空間から飛び出し、石化でイブの魔法を止めようと考えたのだろう。
「リリス!待て!!」
トウヤの叫びにリリスは動きを止めた。
「う、腕だけなら!!」
止めた理由を理解したミイナが叫ぶ。
それに応えるようにトウヤも指示を出す。
「腕だけ石にしろ!」
リリスは戸惑いながらも指示に従い、イブの魔法が侵食するミイナの腕を石化し解除した。
「ミイナは体中に錬成陣が仕込まれている。全身の石化はミイナの人格を形成する
陣も破壊しするし、転生の魔法も破壊する。体は無事でも中身が無くなってしまうんだ」
リリスも使い方を誤るところだったと理解した。
ミイナの体の何処にどのような陣が仕込まれているかは製作者であるクラリスにしかわからない。
ミイナは人造人間であるため、リリスの石化による治療は受けられないのだ。
「私の場合、腕が無くなっても替えが効くんです。心配しないでください」
そういう問題じゃないと言いたくなるが、今はその前向きな姿勢が好ましい。
そうしているうちにイブはゆっくりと立ち上がった。
「ミイナ、影響は?」
「ん~……両腕に仕込んでいた錬成陣が半分無くなったんで、先ほどよりは
物理的に劣りますね。それと両手で扱う物になると左右の間隔差が出ると思います」
なかなかの戦力ダウンだ。
「ま、足自慢のworksに切り替えれば良いだけなんですけどね」
軽いノリに心配が吹き飛んでいった。
「実際、力づくで抑えるしかなさそうね」
「ああ、耐電訓練を受けてたってことは耐毒、耐痛もやってそうだしな」
戦闘の方針も決まり、あとは全力でイブを抑えるだけだ。
そしてトウヤ達は構えた。
それと同時にイブが動く。
だが狙いはトウヤ達じゃない。
そう気づき素早く動いた。
リヤナは盾となり、トウヤは刃に変えた腕を止め、ミイナはお腹に蹴りを入れた。
「うぐっ!」
苦しむような声を出したイブだが倒れることはなかった。
そして代わりに狙われたリリスが腰を抜かすように倒れた。
三人が止めなければリリスが刺し殺されていた。
リリスの脅威を即座に見抜き、使われる前に消す。
殺人兵器としての判断は素晴らしい、だが動きが解りやすかった。
「行け!リリス!!」
トウヤの叫びと共に駆け出したリリスはマリアの空間へ逃げ込もうとした。
しかしそれを逃がさまいとイブはまた、茨状の棘を無数に繰り出した。
「ミイナ!」
互いに合図を送り、リヤナの陰に隠れた。
無数の茨もまだリヤナの異能は突破出来ていない。
つまり一時的な安全な空間が生まれる。
トウヤとミイナは互いに背中合わせになると、リヤナを避けた左右、
そして上の茨を、砲撃で撃ち落とす。
消せなくてもいい、少しでも時間が稼げれば……
無我夢中で砲撃を撃っていると、
「回収したよ!」
マリアの念話でリリスの安全を確認。
だがそれは自分達の安全を引き換えにしていた。
伸び続けた茨は完全にトウヤ達を囲っている。
「逃げ場が――」
勢いよく動き出した茨はトウヤ達の囲いを狭め、さらに伸びていく。
例えリヤナが覆いかぶさるように守っても、隙間から伸びる茨がトウヤとミイナを刺す。
それがイブの狙いだ。
そして殺したと思い満足したのか、高揚していた気分が落ち着くと少し冷静になった。
静かだ……
同じ攻撃で悲鳴を上げたミイナのように、声がしない。
そこに違和感を感じたとき、背中にゾッとする何かに襲われた。
そして後ろを確認するとトウヤが飛び込んできた。
動きの姿勢からして蹴り。
そう判断し腕を構える。
だがある事を忘れていたことに気付く。
トウヤは雷を操っていた。
つまり、体を雷の力で強化している。
だから受けてはダメだ!
そう判断するよりも、トウヤの動きが早かった。
「はああああ!」
止めようとした腕は簡単に動かされ、トウヤの蹴りはイブの頭に命中。
強い衝撃にイブの意識が一時的に途切れたが、すぐに回復し、
転がるように受け身を取った。
そして反動を上手く使い飛び上がると、得意な髪の刃の攻撃に切り替え、
一気に伸ばしトウヤを襲う。
だが思わぬ光景に驚く。
トウヤはイブの攻撃を全て躱したのだ。
(さっきまでと動きが違う!)
トウヤは完全にイブの動きを見切っている。
そしてそのうえで接近戦に持ち込まれた。
イブの攻撃を躱しきったトウヤは体を回すように剣のデバイスを振る。
両手で振り回していることから、渾身の一撃だろう。
イブは両腕を刃に変え、その一撃を受け止めた。
(耐えられる!)
受けた瞬間確信した。
渾身の一撃もイブの力に及ばない。
受けきった直後、トウヤを腕の刃で貫きお終いだ。
そう思た瞬間、突き上げられた何かが顎下に命中した。
(え!?)
何が起こったかわからない。
だんだん視界が暗くなってきた。
(なにが……)
必死に何かを探し、ようやく視界の端に答えが見えた。
(渾身の一撃に見せて、蹴り……)
トウヤはデバイスの攻撃を止められた瞬間、イブを蹴り上げたのだ。
そう解ったら視界が一気に暗くなり、イブは倒れた。




