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試運転

飛竜


それはとても堅牢な鱗を身に纏い、ブレスと呼ばれる魔力弾を放ち

大きな翼で天空を舞う空の王者と呼ばれている。


そしてブレスの属性によって火竜や雷竜と呼ばれている。


飛竜は素材として非常に重宝されており討伐クエストが定期的に発行されるが、

難易度が非常に高く、複数のSS(ダブルエス)ランク魔導士の参加が必須と言われている。




グオアアアアアァァ


けたたましく響く咆哮は非常に威圧的で、弱者はこれだけで足が竦み戦意を喪失させる。


「うるさい!」


強者はこれに怯むことは無い。


大きな魔力同士の衝突により激しい衝撃が起こる。


力が拮抗していて多少の(せめ)ぎ合いが起こるが、勝ったのは小さい方だった。


大きい方は吹っ飛ぶが体制を立て直し空を飛んだ。


「穴を開けるつもりだったんだけどなぁ……さすが竜の鱗は堅いわね」


空の王者を吹っ飛ばしただけでも十分なのに、少女は不満気だった。


「外へ引きずり出しただけでも十分だよリヤナ。リンシェンをフォローしてくれ」


「了解」


返事をすると、リヤナは大きく飛びあがった。


そして飛竜が向かった先を見ると、既にリンシェンとの空中戦が始まっていた。


「うひょ~速いにゃ~」


飛竜は翼で魔法を操作して空を飛ぶ。そのスピードはジェット機よりも勝る。


だがその程度の速さならリンシェンには問題無い。


「このまま地上に――!?」


常に面白おかしく、楽しみながらクエストを熟すリンシェンの悪い癖が仇となり、

飛竜の不意のブレスに気付かず直撃を受けた。


が、駆け付けた仲間がブレスを防ぎ、リンシェンを守った。


「……あなた、頭大丈夫なの?」


リヤナが呆れたようにリンシェンの前に立っていた。


「うにゃ?怪我してにゃいぞ?」


「中身のことを聞いてるのよ!」


「にゃはっ☆!」


お道化る姿に怒りが込み上げ、リヤナは助けたことを後悔した。


リンシェンのことだから火のブレス対策ぐらいはしていて、

直撃する前に何とかしていたと思う。


とトウヤは遠目で見守っていた。


そうこうしている間も飛竜の攻撃は終わらない。


ブレスが聞かないと判断した飛竜は尻尾で薙ぎ払い、リヤナを吹っ飛ばした。


「リヤナ!!」


リヤナの異能は侵攻を防ぐ膜を作るだけなので、物理的に触れることは出来る。


さらにリヤナの踏ん張り以上の力で押せば、リヤナ自身を動かす事も出来る。


そして魔力差があれば多少の侵攻があるらしいが……


トウヤは急いでリヤナの元に駆け付けると、大きな穴があった。


「痛いなぁ!もう!!」


声がしたので掘り起こし、リヤナを助け出した。


侵攻を防げるが動かせる訳じゃない。


地面に埋まっても、それを押し退ける力が無ければ抜け出すことは出来ないのだ。


「バカ猫なんて助けるんじゃなかった!」


「でも動いてくれるんだろ?ありがとな」


「……ま、まあ、失敗した方が困るし?トウヤがそう言うなら仕方ないかな」


「ああ、頼りにしてるよ」


プイッと顔を背けたリヤナはまた、リンシェンの元に向かってくれた。


何だかんだ言いながらも好意的だよな。


貴族は気難しいと聞くが、人に恵まれたようだ。


「リンシェン、遊ばないで準備してくれ。今回のメインはマリアとミズキなんだ」


「バッチリにゃ」


「ならそう言えよ!」


仕事は進めてると思っていたが終わっているとは思わなかった。


「ミズキ、細かいことは考えないで思いっ切りやっていい。

その他は俺達でフォローするから安心してぶちかましてくれ!」


「うん!」


「リンシェン!始めろ!」


合図を送ると、飛竜に付けた魔法が発動する。リンシェンの噴射魔法だ。


風の力を使い物体を吹っ飛ばす。一つ一つは小さくても集まれば強力な風の力だ。


グオアアアアアァァ


体が思うように動かない飛竜は雄たけびを上げ藻掻くが動けないようだ。


そして上空に体長20m程の飛竜を完全に飲み込むような大きな水玉が現れた。


「いっけぇぇ!!」


ミズキの声に合わせてゆっくりと水玉は落ち始めた。


動けない飛竜に当てるのは簡単で、一気に飲み込みそのまま地面へと落ちていく。


「落下予測地点確認、リフレクターセット、装填数100、照準クリア!」


マリアの声と共に弓のデバイス“イチイバル”が輝き、無数の光の矢が現れる。


最後の仕上げの準備も出来たようだ。


「いけ!“無限の星屑プロヴァデスインフィニタ”!!」


打ち上げられた無数の矢は鋭い弧を描き地面へ突き刺さる。


「リフレクター展開!!」


矢にセットされたリフレクターから魔法で作られた半透明な壁が現れ、

それぞれの壁と結合、そして大きな囲いを作り出した。


それと同時にミズキの水玉が地面に落下、そして水が一気に流れ出す。


「抑えろ!」


待ち構えていたトウヤ達がリフレクターを抑える。


囲いが水を入れる容器のようになったのを確認したマリアはさらにもう一本放った。


「“凍てつけ(コンジャラレ)”!」


放たれた矢が水に入ると、水が氷へと変わっていった。


だが氷への変化はあまり速くなく、これを危険と察知した飛竜は

フラフラしながらも水から出ようと藻掻きだした。


「人間なら脳震盪(のうしんとう)を起こしてるだろうが、さすが竜だ」


巨大な水の塊をぶつけられ、地面に叩きつけられてもまだ動ける。


竜の頑丈さに感心したトウヤは追い打ちとして雷を放つ。


さすがに動かなくなった竜はそのまま氷漬けにされた。




「上出来じゃないか?」


「こう見ると真反対ですね~」


「確かに。少ない魔力量で繊細で丁寧な魔法を使うマリアと、

多すぎる魔力量を豪快で大雑把に使うミズキ。意外とバランスいいんじゃない?」


「ただ使う度にあれじゃこっちがもたにゃいにゃ」


「まあ今後の課題だな」


休憩がてら先ほどの戦闘を振り返る4人に対し、マリア達は少し離れた場所で休憩している。


「ベテラン組は仲良いわね」


「まぁ評価してもろてるんですから、ああなりますよねぇ」


「リリスはあっちじゃなくていいの?」


「……」


「何か機嫌悪ぅなってません?」


「……出番無し」


「ああ、逃げられそうになった時の補佐だったもんね」


マリア達の活躍のせいでもある。


「それでこれの評価が問題無ければ、リンシェンの代わりになる人を迎えに行くのよね?」


「そうですね。なんかかなりヤバい人らしいんですけど、大丈夫なんですか?」


「そこはポーラとトウヤの目を信じてみないと。それに私達も行くんだから」


「そうですね。二人から見て目は信じられそうですか?」


「そうね。私から見てもしっかり人を見てるなぁって思うよね。リリスは?」


「……」


「どないしはったんですか?」


「……あ、もしかしてまた美少女だったらどうしようって思ってない?」


マリアの言葉にリリスは口を引きつらせながら睨みつけた。


「あは、やっぱり思うよね」


「お兄ちゃんいけずやわあ」


最近始まった関係だがかなり良好。


そしてリリスの勘は大当たりする。


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