第6話:初の舞台、成功なるか?
♢♢♢♢♢♢村の広場にて♢♢♢♢♢♢
「おいフィル、緊張するな」俺は舞台裏で震えているフィルの肩を叩いた。
「え?俺は全然平気だぜ」フィルは強がったが、顔は真っ青だ。
「お前、魔法の杖が逆さまだぞ」
「えっ!?」フィルは慌てて杖を正しい向きに直した。「...ありがとよ」
そんな会話をしているうちに、司会者の声が聞こえてきた。
「お待たせいたしました!異世界初!笑いの勇者と魔法使いの漫才コンビ、『爆笑魔法団』の登場です!」
「えっ、『爆笑魔法団』!?」俺は驚いて叫んだ。「そんな名前聞いてねぇぞ!」
「あ、俺が勝手に決めといたんだ」フィルは照れくさそうに言った。
「おい!」
そんなやり取りをしながら、俺たちは舞台に上がった。
会場は驚くほど人で溢れかえっていた。最前列には村長らしき人物も。そして...なぜかスライムの群れも!?
「フィル」俺は小声で言った。「なんでスライムがいるんだ?」
「さぁ?」フィルは肩をすくめた。「でも、客は客だろ?」
深く考えている暇はない。俺たちは観客に向かって、精一杯の笑顔で挨拶をした。
「どうもー!『爆笑魔法団』でーす!」
会場からは拍手が。...スライムたちからはプルプルという音が。
♢♢♢♢♢♢ネタ:「異世界の冒険あるあるネタ」♢♢♢♢♢♢
「さてさて、異世界と言えば、やっぱり冒険者ですよね!」俺は元気よく話し始めた。
「そうそう!」フィルが続く。「冒険者になれば、華麗な冒険が待ってるはずだったのに...」
「現実は甘くなかったな」俺はため息をつく。「例えば、クエストボードを見て『初心者向け』って書いてあるから安心して選んだら...」
「突然ドラゴンが現れた!」フィルが叫ぶ。
「いや、それドラゴン討伐じゃねぇか!」俺はツッコむ。「初心者がドラゴンって、死ねってことか!?」
会場から笑いが起こる。
「しかも、やっとの思いでスライムを倒したと思ったら...」フィルが続ける。
「『お疲れ様でした。次はゴブリン100体討伐ですね♪』」俺はギルドの受付嬢の真似をする。
「100体!?」フィルは驚いたふりをする。「いや、100体倒したら俺、レベル100くらいいってるだろ!」
「そうそう!」俺は同意する。「しかも、ゴブリンって集団で襲ってくるんだぜ?100体なんて、軍隊じゃねぇか!」
会場の笑いが大きくなる。前列のスライムたちもプルプルと震えている...笑ってるのか?
♢♢♢♢♢♢ネタ:「異世界の装備あるある」♢♢♢♢♢♢
「それにしても」フィルが話題を変える。「異世界の装備って、なんであんなに重いんだ?」
「わかる!」俺は大げさに頷く。「レベルが上がるたびに、なぜか装備が重くなっていくんだよな」
「そう!」フィルが続ける。「最初は軽装だったのに、気づいたら全身鎧!」
俺は重い鎧を着ているふりをして、よろよろと歩き始める。
「おい、モンスターが来たぞ!」フィルが叫ぶ。
「え?どこだ?」俺は必死に周りを見回すが、鎧が重くて動けない。「いや、待て!鎧が重すぎて振り向けねぇよ!」
「後ろだ!後ろ!」フィルが必死に指さす。
俺はゆっくりと、とてもゆっくりと振り向こうとする。「はぁ...はぁ...やっと...振り向い...た...」
「もう遅い!食われてる!」フィルが叫ぶ。
会場は大爆笑。スライムたちも大きくプルプルしている。
♢♢♢♢♢♢ネタ:「異世界の報酬がショボい」♢♢♢♢♢♢
「でもな」フィルが真面目な顔で言う。「一番ひどいのは報酬だよな」
「そうそう!」俺も真剣な顔になる。「命懸けで戦って、やっとクエスト終わったと思ったら...」
「はい、これが報酬です♪」フィルが受付嬢の真似をする。
「どれどれ...」俺は期待に胸を膨らませる仕草をする。そして、フィルから何かを受け取る。「え?これだけ?」
「なに?なに?」フィルが覗き込む。
「ポーション...1本」俺は呆然とした表情で言う。
「えー!?」フィルも驚く。「魔王を倒したのに!?」
「いや、魔王倒してたらまだマシだ!」俺は突っ込む。「スライム10匹倒しただけだぞ!」
前列のスライムたちが怒ったように大きくプルプルする。
「あ、いや...」俺は慌てて言い訳する。「スライムさんたちごめん。君たちは強いよ。本当に」
スライムたちは少し落ち着いたようだ。
「でもさ」フィルが話を戻す。「その報酬で何ができるんだよ」
「そうだよな」俺は同意する。「ポーション1本じゃ、次のクエストの準備もできねぇよ」
「せめて...」フィルが言いかける。
「せめて?」
「せめてポーション1.5本くらいくれよ!」
「いや、その半端な量はどうすんだよ!」
会場は爆笑の渦に包まれた。スライムたちも大きく揺れている...笑いすぎて形が崩れそうだ。
♢♢♢♢♢♢コント:「異世界の食べ物がヤバすぎる!」♢♢♢♢♢♢
「ところでよ」俺が新しい話題を振る。「異世界の食べ物って...」
「ヤバいよな!」フィルが食いつく。
「そう!例えば、この『ドロドロベジタブル』!」俺は空中に何かを掲げるふりをする。
「うわっ!」フィルは目をそらす。「その野菜、見た目がヤバすぎる!」
「食べてみろよ」俺はニヤリと笑う。
「えっ、俺が!?」フィルは驚いた顔をする。
「ほら、あーん」俺はフィルの口元に何かを近づけるふりをする。
フィルは目を閉じて、覚悟を決めたように口を開ける。「あ〜ん...」
「どうだ?」
フィルは何かを食べたふりをして、急に顔色を変える。「うっ...これ...」
「なんだ?どんな味だ?」俺は興味深そうに聞く。
「これ...」フィルは苦しそうな顔で言う。「味がない!」
「はぁ?」俺は驚く。「味がないのか?」
「いや、味どころか...」フィルは真剣な顔で言う。「これ、存在してない!」
「おい!」俺はツッコむ。「お前、何も食べてねぇだろ!」
会場は大爆笑。スライムたちは笑いすぎて、まるで溶けそうになっている。
♢♢♢♢♢♢舞台の成功♢♢♢♢♢♢
こうして、俺たちの漫才は大成功を収めた。会場は笑いに包まれ、スライムたちも形が崩れるほど笑ってくれた。
舞台を降りると、村長が近づいてきた。
「素晴らしい漫才でした!」村長は目を輝かせて言った。「こんなに村中が笑ったのは久しぶりです」
「ありがとうございます」俺たちは頭を下げた。
「実は...」村長は少し困ったように言った。「スライムたちは最近、笑いすぎて分裂しちゃうんです。だから、笑わせすぎないでくれって頼もうと思ったんですが...」
俺たちが振り返ると、スライムたちが2倍に増えていた!
「うわっ!」俺は驚いて叫んだ。「スライム、増えてる!」
「へへっ」フィルは得意げに言った。「俺たちの笑いの力、すげぇだろ?」
「いや、これヤバくね?」俺は心配になった。「村がスライムだらけになっちゃうぞ!」
村長は苦笑いしながら言った。「まぁ、笑いで増えるなら、それはそれで幸せなことかもしれません」
俺たちは顔を見合わせて笑った。確かに、笑いで世界が満たされるなら、それも悪くない。
こうして、俺たちの「爆笑魔法団」は、初の大舞台を大成功で終えた。これからも笑いの力で、この異世界をもっと明るくしていく。そう、たとえスライムが無限に増殖しようとも!
...to be continued.