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DEAD-LOCK  作者: 西浪
不可解過多の連続殺人
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不可解過多の連続殺人_②

 午後2時。来客の顔を見た瞬間、私は大紫兄に掴みかかった。

 「依頼人は⁉」

 「…あれじゃないかな、たぶん」

 大紫兄でさえ、自信なさげに依頼人を「あれ」呼ばわり。仕方あるまい。だって依頼人が…なんで依頼人が……

 「なんで依頼人が小園(こぞの)くんなわけ⁉」

 「こらッ、そういう話はコソコソしないと。それじゃあ俺らが残念がってるみたいになるだろ。龍馬(りょうま)におつかい頼まれてる小園くんがかわいそう」

 「聞こえてるんですけどね、全部…」

 玄関先でほったらかしにされていた小園くんが、不満そうに呟く。

 まん丸の顔の中には、まん丸の目玉が二つ。愛嬌のある顔つきと全体的にコロコロしたフォルムからして、一課の中ではピーポくんと湾岸くんに次ぐマスコットキャラ扱いを受けているに違いない。

 あと、龍馬くんのおつかい担当。

 「聞いてやることないでしょ、龍馬くんのおつかいなんか!うちの依頼手続き面倒なの知ってるよね?わざわざその手段で依頼してくるのが、なんで警察なわけ?電話の一本くれればいいんだよ⁉律儀すぎ、それとも暇なの⁉」

 大紫兄はというと、目を丸くしながら愛用の(愛用し始めた)タブレットを手に、依頼フォームを見返している。

 「うーん、まさかこの小園くんだったとは…『小園(こぞの)秀一(しゅういち)』、『職業 警察官』、えー住所は…あ、いいとこ住んでるなぁ」

 「わぁあ、それ以上大きな声で言わないでください!個人情報ッ」

 「小園くん、自分の住所書いたの?龍馬くんのおつかいなら警視庁の住所書いときなよ」

 「あ、そっか!」

 なんでこの人が一課にいるんだろう。この刑事に東京の治安の一端を任せて大丈夫なんだろうか。

 てか、大紫兄は何故この小園くんだと気付かなかった?確かにフルネーム聞いたの初めてだけどさ…

 「けど、そういうのじゃなぁい!」

 近くにあった骨付き肉のクッションを抱きしめ、ソファーでのたうち回る。こんなものがなんで事務所のソファーにあるんだか。でも今はそんなのどうだっていい。

 「私はさぁ、せっかく作ったシステムに普通の依頼人が来るのを楽しみに待ってんの!それが何、最初は殺人犯でその次が警察官って…そーか、私らをおちょくってんのか!よぉくわかった。面白がるなら今後一切依頼は受けないッ!受けないぞぉッ、受けないからなッ」

 「面白がってるのは碧波でしょうが」

 ズボッと音がして、骨付き肉のクッションから骨の部分が引き抜かれた。



 「今朝報道された男女連続殺人事件、ご存じですよね」

 小園くんの言葉を聞き、タブレットで記事を検索する。今朝早く、会社員の男性が自宅で死亡しているのが発見された。そしてそのすぐ後に、フリーターの女性が自宅で死亡しているのが発見された。

 発見者はそれぞれ、同じアパートのお隣さんだという。被害者の名前はそれぞれ、北川(きたがわ)()(ろう)(みや)(ざわ)(ゆう)()。死因は両者ともに腹部を刃物で刺されたことによる失血死。

 凶器は宮沢の死体の側にあり、宮沢の傷口辺りの衣服に北川の血液が付着していたことから、同じ凶器でもって順番に殺害されたものと思われる。

 北川の死亡推定時刻は20時から20時30分頃、宮沢の死亡推定時刻は21時から21時30頃。二人の家は最短ルートで徒歩30分はかかる。報道されて間もないため、それ以上の情報がない。

 「既に捜査中なんだろ、この事件。なんでうちと動こうとするの?」

 大紫兄の質問はもっともだ。事件自体は、普通の連続殺人。わざわざ私たちの元へ来る理由がない。

 何か捜査が行き詰まるような情報を、警察が持っているならば話は別だが。

 案の定、小園くんは面白いほど眉を下げて頭を抱えた。

 「僕らも、何がなんだか…とりあえず、現場に来て頂けませんか」


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