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DEAD-LOCK  作者: 西浪
真相は時の中で

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55/75

真相は時の中で_③

 いつの間にやら、外は大荒れの天気だ。まるで大型台風に直撃しているよう。これでは警察も救急車も出動できまい。

 「こんなお約束展開、あるもんだな」

 溜め息をつきながら、大紫兄が湯呑みを差し出す。淡い黄緑色の液体に口をつけると、僅かに茶葉の風味が広がった。

 「薄いよ」

 「ん?もうちょい待たなきゃ駄目だったか」

 「私淹れようか」

 「碧波のは濃すぎるから…てか大人しくしてなさい。うん薄いな」

 二人してかぱかぱとお茶を飲みながら、殆ど手を付けられていないおやつに手を伸ばす。龍馬くんと小園くんはまだ戻って来ない。できる範囲で捜査を進めているのだろう。

 「そろそろ現場の様子教えてよ。聞く分には大丈夫だって」

 「…まず部屋の中。男が一人、仰向けに倒れていた。額に大きな切傷があって、血と…あと、色々中身がね。それらが飛び散ってる。龍馬が視て、その場で死亡が確認された」

 「頭だけ?もっと血の匂いしてたよ」

 「それは多分、もう一人の血だ。碧波が見付けた男は、全身に深い切傷があってね。…その、まぁ」

 顔を曇らせ、大紫兄は三杯目のお茶を飲み干す。少し考えていたようだが、諦めた表情で頭をかいた。

 「濁してもしょうがないか。後頭部と両手両足、腰あたりに傷があったらしい。…右手は殆ど取れかけてたって龍馬が」

 「そりゃ凄惨な…聞き覚えあるね、それ」

 「うん。すぐに事切れたそうだけど、こんな言葉を龍馬が聞いたんだってさ。

 『でーじなとん、たっぴらかす』」

 ゆっくりと発せられたその言葉は、まるで意味がわからなかった。

 「…本当にそう言ったんだよね」

 「あいつの聞いたことだし、確かに言ったんだろうね。何か意味のある言葉なのか、混濁した意識の中で発した滅茶苦茶な言葉なのか…とにかくそう言ったのは事実だ」

 「被害者二人の名前は?」

 「身分証なんかは持ってないらしい。旅館の受付では、部屋で死んでた方が『桃原和馬』、庭で死んでた方は不明ってことになってる。中岡とでも呼んどく?」

 「そういう立ち位置だよねぇ…身分証は盗られたのかな」

 「そうかもね。そもそも持ってなかったって線もある。後者なら変な話だけど」

 チーズかまぼこを飲み込み、急須を持ち上げる。空だ。いそいそと茶葉を詰めながら大紫兄の顔を覗き込んだ。大紫兄は何もついてない口の端を袖で拭く。

 「なんかついてる?」

 「ついてない。今回、どうしようと思ってる?」

 「依頼されない限りは動かない、でいいんじゃないかな。俺達は『探偵役』じゃなくて『探偵』だ。求められていないのに首を突っ込むのはいただけない」

 「だよね。ただ、京都府警はここに来られない。この場にいる人で捜査の権限を持つのは、あの二人だけ」

 「つまり十中八九依頼は来る。…来るんだよなぁ」

 気乗りしない顔で、大紫兄が廊下に目をやる。速い足音が大きくなっていき、これまた素早いノックが三回。開けたドアの先で、しかめっ面の龍馬くんが立っていた。

 「悪いが手伝って貰えるか。…依頼だ」

 「いいぞ。報酬はいらない、さっさと済ませよう」


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