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出でよ、セクハラ魔人退散の光の玉!

緊張感のない近況報告回です。

秋田と主人公のやり取りがマンネリ化している様な気が……。

作者的には嫌いではないのですけどね。


 嵐の様な三日間が過ぎ、体力も気力もストックしていた小麦も全て使い果たし、私達はもぬけの殻のようになって数日間を過ごしました。

 こんな時でもお婆さんは昭和のオバチャンみたくじっとしていられないのでしょう。

 大化のオバチャンは率先して動こうとします。

 なので私も光の玉で疲れを吹き飛ばして、お手伝いをします。


 いつもでしたら八十女やおめさんに手伝って貰うのだけど、只今絶賛産休中です。

 この時代、そんな制度はありませんが、私がそうさせました。

 実は八十女さん、一昨年と昨年と二年続いて出産しました。

 今や二児の母親です。子供にお乳をあげているその姿は、側から見ていて子供が押し潰されそうで少し怖いです。

 きっと源蔵さんはムギュッと押し潰されていたんだろうなぁ……。


 何となくですが、八十女さんは多産系な気がするので子だくさんになりそうな気がします。

 そのうちに子供を4人くらい背負って、そのうち1人は逆さになっていて、1人(匹?)はタヌキで、片チチをポロンと出しっぱなしにして、長男はゴリラ(類人猿?)と親友で……なんてなりそうです。

 昔、こんなおかーちゃんが出てくるアニメがあったような……?

 なぜでしょう、想像していたらマンガ肉を食べたくなってきました。


【天の声】……ような気がする、の割に記憶が具体的すぎる。


 そんなある日のこと、讃岐の忌部氏の宮に常駐する秋田様がいらっしゃいました。

 ようこそ、秋田様。今回の騒動の大元を辿れば、秋田様が私との個人的プライベートなお話を忌部の氏上様に報告チクッしたのが始まりでした。

 お礼に生え際が一寸《3センチ》後退する光の玉をプレゼントしましょう。


 カモーン! ……と身構えていたのですが、萬田先生も一緒です。

 そう言えば、中臣様の離宮で与志古様の補助サポートをしていたのでした。

 私が大変だったのも、与志古様が大変だったのも、犯人は秋田コイツですと、萬田先生にチクってやりましょう。


「ご機嫌よう、秋田様、萬田様。先日はとても大変でしたが、いかがお過ごしでしたか?」


「姫様こそ大変だったと聞いております。しかしそのおかげで皇子みこ様の覚えが大層良かったと聞き及んでおります」


 しれっと秋田様が私を持ち上げます。

 いつ光の玉をお見舞いしてやろうかと(心の中で)準備していると、秋田様にしては妙に真剣な表情で話を切り出しました。


「姫様、実は折り入ってお話ししたいことが御座います」


 何でしょう? イヤな予感がします。

 というか秋田様の話って、氏上様がお呼びとか、中臣様がお呼びとか、皇子がお呼びとか……、碌なことしかありません。

 ここは先手を取っておきます!


「私は無実です」


「いえ、姫様。今日はそうゆう話ではありませんので」


「分かりました。私は何処までも逃げてみせます」


「逃げては困ります」


「やはり捕まえに来た」


「今日はそうゆう話に来たのではないので逃げないで下さい」


「じゃあ今までのは逃げれば良かったの?」


「逃げられては困ります」


「わかりました。では反撃します」


「どうしてそうなるのですか?」


「自由は勝ち取るものです」


「姫様は十分自由ですから」


「人は見えざる鎖で繋がれているのです。今こそ鎖を解き放ち、私は真の自由をこの手でもぎ取ります」


「何を訳の分からない言葉を崇高すうこうに語っているのですか!?」


「出でよ!自由へのともしび!」


 ピッカリの光の玉を出します。


「ちょっと待って下さい。本気じゃないですよね?」


「安心して、痛くはしないから♪」


「安心できる要素がありません。色々とイタいです」


「独身がピッカリになれば、ピッカリだから独身と言われるようになります。諦めがつきます」


「諦めていません! それにもう独身では御座いません!」


「へっ?」


 光の玉がパチンと爆ぜて消えてしまいました。

 私達のやり取りを笑って見ていた萬田先生が口を開きます。


「実は私どもは夫婦となり、そのご挨拶に伺いました」


「え? 冗談とかではなくて?」


「冗談でこんな事は申しませんよ」


「でも何で? 萬田様、騙されていない?」


「姫様、私が一体何を騙すのですか?」


「性格とか、性癖とか、性別とか?」


「私は歴とした男です!」


「好みの性別は分からないよ」


「私は女性が好きなんです!」


「胸派? 尻派?」


「私はむ……何を言わすんですかっ!」


「姫様、そのくらいの事は分かっていますよ。秋田様は私の細やかな胸ですらじーっとガン見するくらいですから」


「「え? そうなの?」」


 私と秋田様の声がハモりました。

 しかし言っている意味はハモっていない気がします。

 だってセクハラ魔人ですよ。それを知ってて、結婚するの?

 私の経験上、スケベ親父は結婚しても治らないよ。

 営業部のスケベ課長はセクハラを内部告発されてスケベ平社員に降格になってもスケベは治らなかったし。

 試しに光の玉を撃ってみる?


 ぽわっ。

 セクハラ退散の光の玉を出します。

 ただし効果は未定です。


「姫様、何をしようとしているのですか!?」


 身の危険を感じた秋田様が慌てて光の玉を阻止しようとします。


「世のため、人のため、女性のため。人・体・実・験にご協力下さい」


「勘弁して下さい。お願いしますよ」


 ちぇっ、つまらない。

 光の玉を引っ込めました。


「秋田様と萬田様はこれからどうするのですか? ずっと忌部の宮でイチャラブするの?」


「いちゃらぶって一体……、いや聞かない方が良いような気がします。

 とりあえず明日より私の両親が祭司を務める三室戸(※)へと向かいます。一日で行けない場所ではありませんが、乃楽なら(※※)で宿を借りるつもりです」

(※ 京都府宇治市あたり)

(※※ 奈良、後の平城京の場所です。日本書紀ではこの字が当てがわれています。)


「では忌部氏の宮は留守となるのかな?」


 お爺さんが質問します。

 治安や警護の関係もあるので気になるのでしょう。


「いえ、宮を無人にする事は御座いません。もうそろそろご長男の佐賀斯さかし様のご夫婦がいらっしゃるはずです。昨年お子様が産まれたので、是非姫に合わせたいとの事です。衣通そとおし姫も一緒に来るはずです」


 そう言えば以前、衣通姫が「お兄様夫婦にお子様が産まれたの」と言ってました。

 最近行儀見習いなどで忙しく、衣通姫は讃岐に来る事があまり頻繁で無くなりました。

 今年の小正月では衣通姫が十三歳の成人のお祝いの宴で、私は舞を披露しました。


 ちなみに私の場合、三年前の名付けを祝ったあの宴が私の成人を祝う宴だったらしく、既に成人してるのです。

 数えで八歳、満年齢で六歳で成人!? なんて現代の常識では考えられませんが、この時代の成人はかなり適当で、成人の年齢が明確に決められていないのです。

 生きるのに精一杯なこの時代に十八歳の成人年齢まで生き長らえる保証はありません。

「大きくなったなぁ……じゃあ成人だ」みたいなノリで成人してしまいます。


 もっとも女性の場合は初潮という分かり易いイベントがあるので成人をお祝いしやすいですが、私の場合、私自身が名付けを氏上様に強要してしまったので、あのような惨状イベントとなったわけです。

 それで良いのか? 飛鳥時代!


「分かりました。道中のご安全をお祈りしております。

 萬田様、もし何か御座いましたら秋田様の頭をツルピカにして差し上げますので、お言い付け下さい」


「はい、その時は宜しくお願いします」

「姫様、私に厳し過ぎはしませんか?」


 笑いながら快諾する萬田様と苦い表情で文句を言う秋田様の声が重なります。


「気のせいです」


「本当にそうですか?」


「気のせいです。気にしすぎると禿げますよ」


「どちらにしても私は禿げるのですか?」


「諦めればそこで試合を終了できます」


「オヤクソクの言葉が変わってませんか? 私は禿げもしませんし、諦めません」


「スケベな人は禿げやすいです。男性ホルモンが多いから」


「言っている内容は分かりませんが、もっともらしい事を言わないで下さい」


「仕方がありませんね。でも私なら無くなった毛根も復活出来ます。条件次第で助けてさしあげます」


「っ! ……本当ですか?」


 あ、やっぱり気にしているんだ。


「サイトウもピッカリを卒業しました」


 つい先日、刑期を終えたサイトウはピッカリ軍団を卒業したのです。

 その時に、卒業の証として髪の毛を再生してあげました。

 あれ程喜びを露わにする人は、スポーツイベントの観客席以外で見た事がありません。

 いえ、それ以上だったと思います。


「……是非、お願いします」


「これからも書物しゅみのほんを宜しく」


「分かり……ました」


 こうして私はウマウマと趣味の本を継続的に手に入れることになりました。

 ふっふっふっふっふ。


【天の声】やっている事が反社会勢力と殆ど変わらないぞ!


この時代の成人に関する資料があまり見つからず、かなり大雑把だった模様です。

身長で元服を決めたともあります。

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