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チート幼女の農業改革(5)

お食事中の読者の皆さん、ごめんなさい。

<(_ _)>

 新年の騒乱から三ヶ月が過ぎました。

 中臣様からのお達しのおかげで讃岐はてんてこ舞いです。


 現代社会ならば公共工事ハコモノが相次げば好景気バブルに湧くのでしょう。

 ところが飛鳥時代の場合、公共工事は領民の労役で賄われるため、公共工事が続けば続く程、領民の生活は苦しくなります。

 今回の仕出かしは今回の原因が私にあるという自覚があります。曲がりなりにも……。

 そのせいで領民が苦労するのは耐え難いものがありますので、宮の建設に関わる人には労働の対価として一日あたりの日当の支払の取り決めと、食事ひるごはんの手配、怪我の手当て、万が一の場合の遺族への補償をお爺さんに懇願しました。

 幸か不幸か、神の御技か、我が領では精製済みの金が産出されます。不足分は、竹林で額に汗してあぶく銭(きん)をせっせと拾い集めております。


 足りない人足については周辺の領(国造)から人の派遣をお願いしました。

 これを機に左大臣様と内臣うちおみ様に渡りをつけたい国造さん達は積極的に協力してくれました。

 その上、この工事に関わる就労条件がこの時代に不相応な程の好待遇であるため、たくさんの労働力にんそくが集まり、まるで経済効果が5兆円あったという1970年の大阪万博関連施設の建設ラッシュの様な好景気に湧いています。

……2025年のではありませんよ。


【天の声】例えが古すぎて、ついていける読者ひとがいないぞ。


 ここからは事務職・かぐやの出番です。期日までにキッチリと仕上げる予定表スケジュールとそのために必要な工程管理表を作成しました。

 まずは集中し過ぎた労働力にんそくさんのため仮設住宅を三十棟建設しました。

 この仮設住宅はいずれ領民の家になる予定です。建設に貢献した人が優先で入居できる有料カクヤス物件です。頑張って働いて下さい。

 本当は中央から専門家スペシャリストを召集したかったのですが、今は建設中の難波宮のため人材がいなくて、全て地元いなかだけでやる羽目になってしまいました。

 おかげで猪名部さんにはすごく負担を掛けてしまいました。

 ごめんなさい。これからもよろしくお願いします。


 中央の有力氏族に必要な建築スペックの監修には忌部の方にご協力をお願いしました。

 私達が勝手に建ててしまうと、和式トイレと洋式トイレの違いとは比較に何らない程の認識のズレが生じてしまうかも知れません。

 間違いを指摘してくれる存在は有難いものです。


 出来上がった完成予想図は飛鳥京で見た忌部氏の宮に似た様式スタイルになりました。

 讃岐の自宅新築の時は私のリクエストに応えた結果、江戸時代の武家屋敷みたいになってしまいましたが、飛鳥時代の流行りの建築は唐と三韓の影響を多分にして受けております。

 日本建築でありながらどこかエキゾチックな感じです。

 おそらく遣唐使が廃止されて長い平安時代に培われた国風文化が私が思い浮かべる『古風』というもので、飛鳥時代は『古風』の更に前の時代なのです。


 そう考えますと飛鳥時代とは正に日本の出発点にあったのだと思えてきます。


 ◇◇◇◇◇


 もうすぐ四月うづき、太陽暦で五月上旬です。

 既に農業研修は三月やよいから始まっていて、先発の研修生の方々は讃岐での農業の取り組みを学んでいます。

 講師は太郎おじいさん、私が助手アシスタントです。太郎おじいさんは一年半前、病気で死にそうだった貧民です。

 研修生さんは中臣様、倉梯様直々に派遣された方なのでたぶん中央の下級宮人(くにん)出身の舎人とねりさんだと思われます。

 おかげで太郎おじいさんがガチガチに緊張して話が前に進みません。しかたがなく慣れるまで私が付き添います。


 私が身につけている着物は昨年と同様、農民ファッションですが同じものではありません。

 一年経って私も成長していました。ばんざーい♪

 という事で八十女やおめさんに新しく作って貰いました。

 古いのは同じくらいの歳の領民の子にあげたかったのだけど、誰も受け取って貰えませんでした。

 畏れ多いって言うほど立派な物ではないのですが……。


 もちろん、研修に来た人達にも農民ファッションに身を包み、実際に田んぼに入って作業して貰います。

 案の定、予想通り、研修生さん達はゴネました。


『どうして私がこの様な事をせねばならないのだ?』


見掛け九歳のお子様の言う事を聞かないであろう研修生さん達に説得を試みます。


『真面目に教わる気がありませんでしたので、代わりの方を派遣するか、中止をお願いします』

そう書いた木簡を見せながら、懇願しました。


「嫌ならお帰り頂くだけです」


私の誠意が伝わったらしく、それ以降素直に言う事を聞く様になってくれました。

 うん、借りた虎のけがわはとても暖かいですね。

 謎の髪型をしたザマスママの息子ボンボンの気持ちがよーく分かりました。


 ◇◇◇◇◇


 今年の農業改革のメインテーマは『土作り』です。

 大量の落ち葉を半年以上寝かせた堆肥と雑草を燃やした灰を田んぼの土に撒いて、すきでマジェマジェしました。ロースちゃんが大活躍です。

 広さ一反(※約30メートル四方)の試験用の田んぼをいくつか開墾し、ロースちゃんが耕してくれました。

 それぞれに肥料の種類や条件を変えて、どの土が最適か調べる予定です。

 今は糞尿(人)ベースの堆肥は畑限定にしていますが、効果が認められたら田んぼにも導入するつもりです。

 牛ちゃんのウンチは良い堆肥になりそうなので、堆肥化出来たらとっておきの田んぼに使う予定です。

 残念ながら、まだ量も少ないし新鮮なウンチなので堆肥になるにはもう少し時間が必要そうです。

 お食事中の皆さま、ごめんなさい


 今年の田植えは領民全員が行う事になりました。

 そのために去年、領民全員に田植え体験させたのですからね。

 木箱プランターを用意して、足りない分は苗床を用意して貰い、苗を育てる環境を確保しました。

 種籾の選別は、二月から粛々と進めてきました。

 塩もカメ予め用意しておきました。

 この選別方法は研修生もびっくりしていました。


 さて、田植え当日。

 研修生さん、頑張れ〜。

 先ずは姫たる私がお手本を見せました。

 これで文句を言ったら返品おかえりです。


 やり方は昨年と全く同じです。

 苗箱の中で五寸くらいまで育った苗を縄で括って、腰紐に縛りつけます。

 そして長い物干し竿を田んぼの上に橋渡しして、物干し竿にしがみつきながら田んぼに入ります。

 そして苗を一本一本等間隔で植えていきます。

 全身泥塗れになりながら、十列植えたところで選手交代。

 小さい田んぼなので作業は楽で、光の玉の出番もありませんでした。

 もしかしたら舞の稽古で鍛え上げられた『マッスルかぐや姫』の効果かも知れませんけど。

 おほほほほ。


 五日後、領内全ての田んぼは苗がキレイに整列しました。


 ◇◇◇◇◇


 農業研修は農作業だけではなく、様々な知識の習得べんきょうをします。

 自分でやってみて思った事は、生物バイオだけではなく、化学ひりょう工学のうきぐ、暦の知識、気象の知識、地形学の知識などなど、農業って総合産業なのだと思う様になりました。現代の農家さんが販路拡大、市場調査マーケティング運輸ロジスティックなどの農業経営を個人で行うのは大変ですね。

 農協頼りになってしまうのも頷けます。


 と言っても私が知っているのは中学生レベルの気象の知識と、日時計を使った暦くらいです。

 暦については日時計を使った太陽暦を標準スタンダートにしました。

 太陰暦ですと閏月うるうつきとかがあるので農業管理には向かないからで、当然日時計も使いこなして頂きます。

 研修生は文官系の舎人とねりさんなのでお勉強は得意分野ですが、この手の知識は持ち合わせていなかったみたいで、私の話についていくのは大変そうでした。


 改めて衣通姫の優秀さを再認識するのでした。


タイムリーなネタをぶっ込んでみました。

1970年の大阪万博では全国から出稼ぎの人が集まったみたいです。


次話ではほんの少し話しが進みます。

ほんの少し。

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