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パンツ仲間とお土産

最近、書きだめストックが目減りして、文章を見直す期間が短くなっております。

今週末の連休には挽回しなければ………。



 収穫が終わったら一年ぶりの徴税前の姫検知です。

 五十年後に始まる班田収授制では、六年に一度、戸籍調査が行われるはずです。

 しかしこの時代の民衆の生活や人の寿命、結婚観や風習など、やはり現地調査しないと分からない事が多いですから、私は毎年行うつもりです。

 そしてついでに、領民全員に寄生虫をやっつける光の玉を当てるのも姫検知の隠れた目的の一つです。


 調査そのものは三日で終わりましたが、光の玉(チート)のおかげで少し子供の数が増えていました。

 残念ながらわたしまりょくは万能ではありませんので、全ての命を拾うことは出来ません。

 病気の原因がハッキリしていれば助ける事が出来ますが、原因が不明ですと快癒のイメージが出来ないので光の玉が効果を発揮してくれません。

 全ての人を救う事が出来ると思うほど自惚れているわけではありませんが、やはりやるせ無い気持ちです。


 そして、今年も流民が居ました。

 身なりの良い秋田様がいるお陰で、お貴族様と武器を新調した自警団さん達、そして小間使いのお爺さん(※実はこの人が国造ボス)と勘違いされて、殆どの人が素直にいう事を聞いてくれます。

 要はここに住みたければ土地を貸すから小作料を納めよ、って事です。

 断ったら出て行かなければなりません。讃岐ウチには浮浪者を養えるほどの余裕は無いのです。


 結果として奴婢落ちは若造一人だけでした。

 チューン!


 ピッカリ軍団、1人補充です♪


 ◇◇◇◇◇


 十一月に入り、もうすぐ冬至(太陽暦12月21日)です。


 朝夕がとても冷えますので、衣通そとおし姫にも私とお揃いの半纏はんてんとパンツを用意し、また一人パンツ仲間が増えました。

 巫女さん達も昨年プレゼントしたパンツを大切に使っています。

 その巫女さん達パンツ仲間は大嘗祭だいじょうさいがあるという事で、秋田様と共に天太玉命神社へ帰って行くことになりました。


「秋田様が昨年足が遠のいていたのは大嘗祭だから?」


「そうなのですが、厳密には違います」


「どうゆう事?」


「毎年この時期、収穫をお祝いし執り行うのが新嘗祭にいなめさいです。

 ですが、今年は大嘗祭だいじょうさいが執り行われます」


「何故?」


「帝が退位されて、新しい帝が即位されました。帝が即位された最初の新嘗祭を大嘗祭と言うのです」


 ああ、そうでした。例の事件を受けて、女性の皇極帝が退位されたのでした。

 私が覚えている歴史では、帝(大王おおきみ)の在任中の退位は前代未聞らしく、それでもと中大兄皇子に即位を促したのですが固辞されて、別の皇子が即位したという流れ……のはずです。

 でも実質は中大兄皇子が政権を担い、大化の改新が進められる事になった……はずです。

 きっと中臣鎌足様も重臣の中心人物として手腕を振るうのでしょう。


「氏上様も美濃より無事お戻りになり、大嘗祭を執り行います。我々も氏子として氏上様をお支えします」


「頑張ってね。気を付けて」


「はい、姫様もくれぐれもお気を付け下さい。あと頼まれていたものは何とかなりそうですので、次の機会に」


「わぁ、ありがとうございます」


「ふふふ、それでは」


 秋田様とパンツ仲間は行ってしまいましたが、ただ一人、衣通姫はお付きの人と共にこちらに残りました。

 政情が安定するまで讃岐こちらに滞在した方がいいとの判断です。

 衣通姫も私と離れたく無いと言ってくれますが、親元を離れて寂しいはずなのに気丈なお姫様です。

 私といえば中身アラサーのくせに最近は肉体年齢に精神年齢が引っ張られて、幼児化が進んでいる様な気がします。


【天の声】その結果がパンツを連呼か?


 最近の衣通姫は星座に目覚め、そちら方面の書を読んでいますが、流石に難しいみたいです。

 占星術は星の廻りと人の運勢の関係性を読み解く学問で、理解するのも暗記するのも大変です。

しかも正しい知識があるばかりに、間違った考えに基づく星の巡りを理解するというのは二重に大変です。

 しかし現代では当たり前の知識である地動説や惑星の運動、地球と月の関係が分かれば、空に浮かぶ星々がドームに描かれた絵ではなく無限に広がる大宇宙なのだと感じる事が出来ます。

 理解力の高い衣通姫はこれを抵抗なく受け入れ、世界で彼女だけが知っている宇宙の真実に衣通姫の天文好きが更に加速する勢いです。


 日が暮れると星座観察を一緒に観察して、唐の書に二十八宿(※)という星座表について記した書と見比べながら星座のお勉強しています。

(※作者注:二十八宿とは、月の周天を四方×7宿の二十八分割して、それぞれに名付けられた星(星座)の事。四方とは青龍(東)、玄武(北)、白虎(西)、朱雀(南))

 原本から写本へ、写本から写本へと書き写していく過程で、星座の位置や形がだいぶいい加減になってしまっているので、自分で新しい二十八宿を作る意気込みです。

 そのお手伝いのため、私は屋外照明係を買って出ました。私にもう少し星座に詳しかったら教えてあげられたのだろうけど、自分の星座が何処にあるのかすらも知らないくらい天文音痴です。だから一緒に観測を手伝ってあげる事しか出来ませんが、星を探してあげます。


 現代の空はこんなに澄んでいませんでしたから。

 なにより大切な友達ですから。


 ◇◇◇◇◇


 昨年と同様、徴税の日を迎え、私は帳簿係でした。

 私と並んで座った衣通姫、ツイン姫様は領民の皆さんからお地蔵さんの様に拝まれました。皆さん良かったね。これぞ本物モノホンのお姫様だよ。偽物わたしを拝んでもご利益は無いからね。

 お陰で徴税も滞りなく終わり、未納者はゼロ。ピッカリ軍団の補充もゼロでした。

 ちょっと残念。


 さて、師走に入ると、いよいよ冬本番です。

 オコタから出られなくなりそうな寒い日、ひと月以上ぶりに秋田様がいらっしゃいました。

 待望のお土産と一緒に。


 お土産その一、モーさんです。

 食べるためではありません。古代のトラクターです。

 ♪ 萌える男の〜 赤いトラクタ〜 ♪


 荒地を耕したり、田んぼの土(泥?)をひっくり返すのに、人の力では限界があります。

 初めて牛をみる領民は皆びっくりして野次馬がものすごいです。

 牛なのに……。

 さながら飛鳥時代の動物園ですね。


 お土産その二、すきです。付き合って下さい。

 牛さんだけでは耕地を開拓できません。道具が必要です。

 大陸から来た渡来人の方々が牛耕をやっていると聞いたので、秋田様に入手出来ないか相談していました。

 秋田様だけでなく忌部の方々がアチコチに手を尽くして入手してくれたみたいで、牛耕をしている渡来人に交渉して作って頂きました。


 スポンサーのお爺さんは牛さんとすきが欲しいと言ったときは何の事かサッパリ分からなかっみたいですが、これがあれば開墾が進むと聞いて大金をはたいてくれました。

 耕地不足は悩みのタネなので、きっと役立つと思います。


 猪名部さんには牛小屋の建設をお願いしました。牛さんには申し訳ないのですが、テレビで見た程度の知識の私の他には、牛がどの様な環境で飼えばいいのがを知っている人がいません。

 家人さんの一人に牛さん専属の飼育員マネージャーになって貰います。

 当面の餌は稲藁ですが、たまには穀物も食べさせないと栄養が偏りそうなので、専属飼育員には牛さんの体調管理を徹底してもらいましょう。

 この時代の人達の動物に対する意識が低いので、気がついたら放牧された挙句に野良牛になっていないか心配です。

 熊もいますし、まだオオカミも絶滅していません。

 飛鳥時代の夜は人にも動物にとっても危険なのです。


 お土産その三、荷車です。

 重い荷物を運ぶため、車輪の着いた台を探して頂きました。

 牛さんが引っ張るようになっているので、人が乗ったら牛車です。

 車輪を作る技術が大変で、専門の職人さんがいるみたいです。

 猪名部さんには車輪の複製コピーが出来るようになって貰うよう、お願いするつもりです。

 秋田様も荷車のお陰で讃岐ここまでの道のりが楽だったと言ってましたが、班田収授制が施行されると重いお米をみやこまで自分で運ばなければならないのです。

 そうなる前に荷車の台数を増やしたいと目論んでいます。


 お土産その四、書物です。

 最近の衣通姫が天文に夢中と聞いた衣通姫のお兄様が、天文や占星術に関する書物をたくさん送ってきました。

 衣通姫も寂しいですが、お兄様も寂しいのでしょう。一度ご挨拶したいのですが、正月の宴でピッカリの光の玉をぶつけて気絶させてしまったお方の一人みたいです。

 少し気まずいです。思い返してみれば、初めて衣通姫に会った時、ものすごく緊張していたのもそのせい?


 お土産その五

「かぐや様にご伝言がございます。翌る年、飛鳥宮の新春の宴にて舞を披露して頂きたいと事です」


「…………は?」



(つづきます)

ここで言う二十八宿は、月の周天を四方×7宿の二十八分割して、それぞれに名付けられた星(星座)の事です。

四方とは青龍(東)、玄武(北)、白虎(西)、朱雀(南)です。

異世界ものの定番ですね。

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