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チート幼女の激昂・・・(3)

予告通り、チューン! 多めです。


 いよいよ決行、許すまじ、お家乗っ取り犯!

 覚悟なさい、ニセ求婚者!!


 連中はすっかりこの屋敷が自分たちの物になった気になって、昼から酒を飲んで、ご機嫌な様子。

 そこへ家人のお姉さんにウソのお誘いをさせました。


「本日、姫様がお帰りになられました。御目通り願いたいのですが、如何しましょう」


「おお、ようやくだな。イイだろう。会ってやらぁ」


 全員が立ち上がりました。


「初めてお会いする女御に、大勢で押しかけるのは流石に無粋ではないでしょうか?」


「ああ、そうだな。お前ら、ここで待ってろや」


「「「へいっ」」」


 家人さんの言葉に、麻呂という輩が屋敷の中を一人で我が者顔で歩いて出ていきました。

 それを見た私は奴に見つからない様、男をやり過ごした後、護衛と称するゴロツキ三人がいる部屋へと向かいます。

 対するこちらも護衛さんが三人です。


 (ガラッ)


「何だ? この子供は?」


「ごきげんよう。邪魔なので退いて頂きます」


 ここぞとばかりに黄金色デフォルトの光の玉を思いっきりぶつけてやります。


 チューン! チューン! チューン!


「あでっ! あたたたたた」

「いてぇ!いてぇ!いてぇ!」

「むっ!………くっ!」


 山賊の襲撃の時は左足限定でしたが、両足とも痛くする事ができる様になりました。

 何事もイメージですからね。ケンケンすら出来ず、身動きできなくなりました。


 チューン! チューン! チューン!

 チューン! チューン! チューン!

 チューン! チューン! チューン!

 チューン! チューン! チューン!

 チューン! チューン! チューン!


 実際に怪我をさせているわけではありません。だから全然平気です。

 身体のありとあらゆる所が痛いイメージを植え付けて光の玉を乱打します。

 上手くいくかどうかは分かりませんが、良心の呵責をせずに済む、丁度いい人・体・実・験です。

 大事な人を失ったあの心の痛みを思えば、多少腹が痛くても、頭が痛くても、肘をぶつけて腕がジンジン痺れても、肩が凝っても、花粉で目が痒くても、タンスの角に足の小指をぶつけても、全然比じゃありませんもの。


 チューン! チューン! チューン!

 チューン! チューン! チューン!

 チューン! チューン! チューン!

 チューン! チューン! チューン!

 チューン! チューン! チューン!


 自分の抑えきれない感情のまま、光の玉を打ち付け続けて……、ふと我に帰るとゴロツキ達は、一人は殺虫剤を振り掛けられたGみたいにゴロンゴロンと転げ回って、一人は釣り上げられたカツオみたいにピョンコピョンコと飛び跳ねて、一人は涙を流しながら声も出せず芋虫みたいにのたうち回っていました。

 若いっていいね。元気バカで……。


「縛り上げて、外へ放り投げなさい」


「「「はっ!」」」


 護衛の三人はゴロツキ達を縛り上げ、猿轡をして、戸の外へ蹴り出しました。

 食い散らかして汚れた部屋のゴミも連中へ放り投げて、少しだけお部屋が片付きました。

 しばらくそこに座って待っていると、乱暴な足音がして来ました。


「おい、娘なんていなかったじゃねーか!

 どこへ行ったんだ!

 ……? なんだこの子供は?

 お前らは何だ! アイツらをどこへやった?!」


「讃岐造麻呂が娘、かぐやと申します。皆さんには席を外して頂きました。

 どうぞお座り下さい」


「なんだぁ? もうすぐ十六になる娘ってのは居ねえのか?」


「あと八年すれば、私も十六になります。

 違いますか? 工人くひとさん」


「な………何故俺の名前を!」


「秋田様、どうぞお入り下さい」


「失礼します。姫様」


「秋田様、詳しい調査報告をありがとうございました」


「いえ、姫様が『忌部に窺見うかみ(※)がいる』と教えて下さったおかげで楽に進みました。

 該当者は多くなかったので簡単に絞り込めまして、其奴に摂津の三島鴨神社に滞在している鎌足様へ問い合わせさせました。

 大伴咋おおとものくい様の名を騙ったのは致命的でしたな。何せ鎌足様の母上様が大伴咋様の娘ですから」

(※ 窺見:間諜スパイのこと)


「それで返事は何とありましたか」


「鎌足様が直筆でお答え下さりました。

『麻呂とかいう従兄弟は居らぬ。ただし摂津に大伴咋の落とし子やその親族を名乗る輩がいると聞いている。当方とは無関係につき、その者がどうなろうと知った事ではない。伯父の長徳殿にもそう伝えておく』との事です。

 鎌足様のお耳に入るくらいですので、本人を特定するのは造作もない事でした」


「だそうです。大伴おおともの麻呂さん」


「チクショー!」


 工人というニセ貴族は破れかぶれになり、その場で一番弱そうな幼女の私に飛びかかろうとしました。

 私はすかさず光の玉で応戦しました。

 チューン!


 両足が動かなくなり見事にすっ転びます。


「うあっ! あ、あ……いてぇ〜、いてぇ〜!

 何だこりゃぁ! くっそっ! いてぇよー」


 私はゆっくりと立ち上がって、ゴロツキが放り出された戸の方へ歩いていき、戸を開けました。

 外には先ほど蹴り出されたゴロツキ三人が、死にかけの毛虫の様にモゾモゾと動いています。


「工人さん。貴方は私を攫って、邪魔者のちち様とはは様を始末すると言ってましたね。覚えてますか?」


「そんなこたぁ言ってねぇー」


「そうですか。……まあ良いです。

 今更本当だと言って懺悔されるより、トコトン嘘をついてくれた方が良心の呵責をせずに済みますから」


「何言ってんだ! このガキは!」


 私は徐に外に転がっているゴロツキに向かって、あえて眩しくて大きな光の玉を飛ばしました。

 チューン! チューン! チューン!


 みるみるうちに髪の毛が抜けてピッカリになっていきます。


「うわっ!」


「お願い、取り押さえて下さる?」


 控えていた護衛さんに命令し、工人を身動きできない様、二人がかりで両腕を固めて、うつ伏せで取り押さえられました。

 私はトコトコ男の方へ歩いて行き、髪の毛を掴みました。


「うぅ……」


 チューン!


 手に持った髪の毛の抵抗が無くなり、髪の毛がぬるりと抜けました。

 そしてその汚らしい髪を男の目の前でパラパラパラ、と舞い散らせます。

 それを見てようやく男にも自分が敵に回した幼女の異様さに気がついたみたいです。

 その目に怯えの色がハッキリと現れています。


「お前が企てた事は国の転覆を計ったのと同じなの。わかる?」


 声すら出ない男はコクコクコクと頷きます。急に従順になりました。

 でもね。

 口を開けば嘘と誇張ばかりのお前から、反省の言葉も懺悔の言葉も求めていないの。


「お前を痛めつければ期待してしまうでしょう。この痛みに耐えれば自分は助かるかもって。だから何もしてあげない」


 私は光の玉を男にぶつけて足の痛みを取り除きました。

 チューン!


 男は自分の身体に起こった異変に理解がついていかない様子です。


「それじゃ、この男を引っ立てて。もし逃げる素振りを見せたら、後々の後悔にしたくないから斬り捨てて」


「「はっ!」」


「ま、待ってくれ。誤解だ! 話を聞いてくれ!」


 体格の良い護衛さん二人に引きずられて、工人という男は引きずられて行きました。

 これで、ひとまずは終わりました。

 大山鳴動して鼠一匹、とはこんな事を言うのでしょう。

 鼠だったから容易く捻り潰せました。でも、こんな小物に振り回された自分が虚しくて、悔しくて、つくづく嫌になりました。


 現代にいた私なら、きっとあの男を許したでしょう。

 然るべき警察ところが調べて、

 然るべき逮捕てじゅんを経て、

 然るべき裁判はんだんによって、

 然るべき刑罰ばつを受ける。

 現代では敵討ちや私刑リンチをする権利を放棄する代わりに、全ての処遇を行政が完全、かつ公平に執行するという信頼たてまえがあるのです。


 しかしこの時代には何もないのです。

 頼るべく検非違使けいさつはまだありません。

 けいほうが出来るのは五十年後です。

 検察も弁護人も裁判官すらも存在し得ません。


 まるで獣の国なのです。


 今回は小物による犯行でしたが、仮に名のある豪族の場合は全面戦争だってあり得るわけです。

 現代ではそんな物騒な場所は特定の国の特定の場所でしかあり得なく、少なくとも日本ではゲームのPvPくらいしかあり得なかった話です。

 私はこの世界、この時代の居心地の良さに甘えて、大切な事を見落としていたのだと気付きました。

 この世界は理想郷シャンバラなどでなく、弱肉強食ジャガーノートの世界なのだと。


 私がこの世界で自分のやりたい事をやるためにも、周りが幸せになるためにも、役に立つのか分からないこのチートを使って、闘っていかなければならないのだと決意を新たにしました。



何度も見直しても、今ひとつ満足のいく仕上がりになりませんでした。

もっと精進します。


m(_ _)m

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