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チート幼女の激昂・・・(2)

誰にでも逆鱗というもにはあるものです。


 私を攫い大切な家族を始末するという連中の話を聞き、頭の中が爆発しそうな私。

 もし私の能力チートに人を殺める力があったら躊躇わずに連中にぶつけたい、という衝動が頭の中を駆け巡っています。

 周りの声が耳に入らず、周りの様子は目に入りません。


 大切な人を失いたくない。

 大切な人を失いたくない。

 大切な人を失いたくない。

 大切な人を失いたくない。

 もう二度と……


 呪文の様に頭の中を同じ言葉がループします。

 私の異変に気づいた八十女やおめさんが私に声を掛けました。


「どうされたのですか?」


 でも声は耳に入っても頭まで伝わりません。

 反応がない私を見て、八十女さんが私を揺り動かします。


「姫様、姫様、姫様!」


 ……はっ!


 ようやく自分自身が意識の底に沈んでいた事に気づきました。

 これではいけません。自分に向けて精神鎮静の光の玉を立て続けにぶつけました。


 チューン! チューン! チューン! 

 チューン! チューン! チューン! 

 チューン! チューン! チューン!


 頭の中が冷や水を浴びせた様にシャキッと回復して、周りを見る余裕ができました。

 幸い連中は私達の存在に気づいたらしく何処かへ去って行った後でした。私が姫である事はバレなかったみたいです。

 冷静になった私は連中を怒りに任せて痛めつけても解決にならない事に気付きました。

 万が一、有力者の身内だった場合、豪族同士の戦さに発展する可能性もゼロではありません。

 掃除しまつするのなら、まずは連中が何者か調べる必要があります。


「田植えは太郎おじいさんに任せる。私達はお屋敷に戻る。急いで」


「一体、どうされたのですか?」


「詳しい事は戻ってから話す。急いで!」


「分かりました」


「太郎おじいさん、ゴン蔵さん、後をお願い」


「「へいっ!」」


 源蔵さん、八十女さんと護衛の三人は走らず、落ち着いて、尚且つ急いで屋敷へと戻りました。

 護衛の人達にも屋敷に残る様に伝え、緊急会議ミーティングです。


 ◇◇◇◇◇


 一部屋にお爺さんとお婆さん、家人の皆さん、警備の人、自警団の人が集まりました。


「かぐやや、皆に集まって貰ったが一体どうしたのか?」


 緊急事態ですので、誤解を生まない様、ハッキリと言っておきます。


「ちち様、はは様。この辺りをうろついている連中ゴロツキの会話を聞いた。

 私をさらい、邪魔なお爺さんお婆さんを殺し、財産を乗っ取る。

 そう言ってた」


「「「「「 !!!!!! 」」」」


「アイツらが何者か分からない。慎重に!

 アイツらは考えなしで短慮。だから放っておけば何をするか分からない。

 身につけているものは貴族風。だから殺せば諍いの元になるかも」


「一体どうするおつもりですか?」


「外で泳がせるより屋敷の中に閉じ込めた方がいい。

 危ないことも分かっている。だから護衛の人達は協力をお願い。

 家人の皆さんにも手助けをお願い。

 皆が協力してアイツらを追い詰める」


「「「「 はっ! 」」」」


「かぐやや、危ない真似はやめておくれ」


 お婆さんが私に嘆願します。


「連中の目的は私。

 お爺さん、お婆さんに何かあったら私は私を許さない。

 だからお願い。無事でいて。お願い」


「かぐやや……」


 お婆さんは涙を流して私を抱きしめてくれます。

 こんなにいい人を、こんなにも大切な人を傷つける連中を絶対に許さない。

 そう決意を新たにしました。

 そして光の玉を浴びる様に当てて冷徹モードになった私は、連中を追い詰める計画プランを皆に話すのでした。


 ◇◇◇◇◇


 程なくして、懲りずにまた連中がやって来ました。


「おい、そこの者! 造麻呂の娘に用がある。

 造麻呂と娘に会わせろ!」


「どちら様でしょうか?」


「お前ら下賤の者に名乗る必要は無い。早く通せ!」


「せめてお名前だけでも……」


「しつこいヤツだな。

 私は大伴氏に連なる者だ。いい加減にせぬと、国造が困る事になるぞ!」


「はは〜、それは失礼致しました。すぐにご用意しますのでお待ちくだせい」


「分かれば良い。急げ!」


「はいぃぃ」


 自警団の中で一番頼りなさげな人に警備に立って貰った甲斐あって、舐めプ全開の連中はこれでもかというくらいの威丈高いたけだかな態度で威張り散らします。

 よく見ると連中はあちこち薄汚れていて、野宿をしているみたいです。ますます貴族であるか怪しいです。

 奥の離れに案内させ、そこで待機させるよう指示しました。


 {「おい、本当に讃岐国造は羽振りがいいな」}

 {「ああ、これが俺らの物になるんだ」}

 {「外に蔵もあったぜ」}


 もう少し静かな声で内緒ヒソヒソ話をしなさいよ、と思うくらい隠しようもない本音がダダ漏れです。

 たぶん、現代の小学生が悪巧みをしているくらいに考えが浅いのでしょう。

 授業中居眠りをして、本人だけがバレていないと思っている様な?

 おねしょがバレない様、布団を押し入れに隠して知らんぷりしているみたいな?

 だからと言って手加減はしません。


 ではお爺さん、出番です。


「ようこそいらっしゃいました。ワシは讃岐造麻呂さぬきのみやっこまろに御座います。貴方は……?」


「俺はかの大徳(※)、大伴咋おおとものくいの孫に当たる者だ」

 (※ 冠位十二階の最上位)


「ほぉ、それで貴方様のお名前は?」


「な……オレの名前は麻呂だ」


「ほう、大伴麻呂様で御座いますか。

 大変、申し訳ございませんぬ。ここは片田舎にて麻呂様のお名前を伺った事が御座いませぬ。

 麻呂様がどの様なお立場のお方お教え下さいませぬか?」


「なんだ! 俺が怪しいとでも言うのか!?」


「いえいえ、とんでも御座いません。

 片田舎の国造にとって中央でどのくらいお偉い方がいらしたのか気になって仕方がないだけですじゃ。

 我が娘ももうすぐ妙齢につき、良い縁を探しておるところですので」


「へ? 子供じゃないのか?」


「さて、何処でお聞きになったか存じませんが、娘はもうすぐ十六ですじゃ。

 世間からすればまだまだ子供ですが、ワシらもいい年なので良い婚姻相手を探しております」


 ………お爺さん、上手。

 私は連中のいる離れの隠し扉から連中の会話を盗み聞きしています。

 ちなみに何故その様なとびらがあるのか?

 それは、将来かなたから迫り来る求婚者しんりゃくしゃに備えて必要だと思ったので、屋敷を新築する際に猪名部さんにお願いして作ってあったのです。


 連中の話を鑑みてみますと……

 嘘が大半ですが、その中に犯人を特定するヒントが隠されています。

 全く知らない土地を出身地と偽る人はあまり居ません。

 多少は知らないと嘘が付けませんから。

 ……と言う事で、摂津国(現代の大阪北部)に確定。


 普段やっている事や自分の得意分野の話になると妙に饒舌になります。

 ……という事で、建築関係。多分大工で確定。


 嘘をついているときは嘘の上に嘘を重ねようとするので言い訳がましくなります。

 ……という事で、名前は100%偽名。


 血統は大伴氏の流れを組んでいる可能性はゼロではありませんがせいぜい傍流。

 母方がその関係者だったと言っていますが、豪族の暮らしを全然知らないので繋がりは薄そう。


 私の正確な年齢も知らない程、情弱。

 計画は子供の悪巧みレベル。

 持っている武器は、鞘と刀が合っていないらしく刃が収まっていません。

 帯紐が麻なんてあり得ません。

 間近で見れば学芸会レベルの変装です。


 聞く人が聞けば、見る人が見ればバレバレなのです。

 こうゆう時は人生経験《アラサーOL》がモノを言うのです。

 おーっほっほっほっほ、けふんけふん。


 出来上がった犯人像プロファイリングしたためて、早々に忌部氏へ一文を添えて使いを出しました。

 その返事が来る間、私は不在という事で連中の目を逃れて、自室に隠れていました。

 私が連中と鉢合わせしない様、家人さんが全面的に協力してくれました。


 その間、連中は食っちゃ寝と飲酒を繰り返し、家人の女性にはセクハラ三昧の堕落した生活を送り、隙あらば家探ししようとするので警備さんには昼夜問わずしっかりと見張って貰いました。

 そして私も隠し扉から不可視の(見えない)光の玉を誰か一人に当てて、体調不良者が常にいる状態を作り出し、連中が決起する気を起こさせない様に牽制しました。


 そうしているうちに三日が過ぎ、待望の返事を持って秋田様がいらっしゃいました。

 返事に目を通して、予想以上の成果に目を見張ります。


 いよいよ今夜。

 決行です。



(つづきます)


次回はチューン!の回です。

今ひとつカタルシス成分が足りません。


もっとストーリーを練りたいので、明日の投稿は遅くなりそうです。

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