戦争準備・・・(1)
ふと気が付けば、第11章の大半が【幕間】と【閑話】のような……。
本日は壬申の乱の詳細を詰める作業に入っておりますため、短くて申し訳ございません。
小角様のご協力が得られてから、徐々にですが味方が増えた事を実感できます。
一度、お会いした当麻豊浜様の嫡男、当麻国見様が加わりました。
当麻豊浜様はご信頼のおける方ですが、中大兄皇子とのお知り合いなので未来視の対象者です。
そこで国見様に白羽の矢が立ったという訳ですね。
鵜野皇女様と繋がりの深い当麻氏の参加は心強いです。
それ以上に小角様との繋がりは強く、小角様一押しの御方です。
その他、小角様と繋がりのある賀茂氏の流れを汲む方々が続々と参加を表明し、大和の中にも味方が増えつつあります。
このような調子で勢力の拡大を計っておりますが、未だに戦いの全容は掴めておりません。
不確定要素が多い事と、実際の戦いになると何処が主戦場になるのか分からないからです。
今現在、予想しておりますのは……
おそらく敵の本拠地は、建築中の近江大津宮になるでしょう。
そうなりますと飛鳥京を最大戦力を投入してでも絶対に落とさなければなりません。
となると、飛鳥京と大津宮を結ぶ途中で抑えておきたい要所が畝傍、現代で言う橿原になります。
寺社の調査をしている時、畝傍の地には小角様のご親戚筋に当たる賀茂氏の流れを汲む氏族の方が多かったことったと記憶しておりますので、その方々を当てにしたいと考えております。
リバーシで例えれば吉野と畝傍で挟んで、飛鳥京をひっくり返すみたいな?
そして畝傍は讃岐にも近く、鎧兜で身を固め武器を携えた兵士を派兵することも可能ですので、確実な兵力を計算できます。
もう一つの陪都である難波京の攻略は、住吉を本拠地とする大伴氏を頼りにしております。
東側から来る援軍は美濃の軍勢が関ヶ原で迎え撃つつもりです。
ですがこれはあくまで机上の空論。
間違いなく兵力は敵の方が上になるでしょう。
その兵力差を如何にして埋めるのかが、軍師・村国様の腕の見せどころになります。
最近の村国様は私が作った大きな地図と睨めっこして、あーでもない、こーでもないと、頭を悩ませております。
気のせいか頭の頭頂に日焼けした地肌が見えている気がしますので、私はそっと毛髪増毛の光の玉を当てて差し上げました。
チューン!
◇◇◇◇◇
兵力差を埋めるための武器の開発はずっと継続しており、だいぶ進捗がありました。
鎧兜は一万人以上に配るつもりなので、性能は満足のいくものではありませんが、すでに量産体制に入っております。
鎧を一領作るのにも時間が掛かりますので、改良を加えつつ、鎧兜が必要となるその日までに数を揃えるつもりで作業を進めております。
例え刀が無くしたって、逃げさえすれば命を失わずに済みますので、防具無しで敵に突っ込むような事態だけは避けるつもりです。
ノーヘルでバイクレースに出場するようなものですからね。
そして主戦力として当てにしている弓の改良は、ようやく最大射程距離が五十尺(150m)を超え、七十尺(210m)に届きそうとの事です。
正確に狙い撃ちが出来るの距離が約十尺(30m)、そしてこの弓を使って馬に乗って真横に矢を放つことが出来るようにもなったと報告がありました。
これで騎馬隊編成の実現が見えてました。
流鏑馬大会を開催しましょう。
今後は命中精度と弓手の育成に重点を置きたいと考えております。
膠も大量に必要となっているため、弓の試し打ちを兼ねて猪狩りがしょっちゅう行われているとの報告がありました。
ちなみに讃岐で一番の弓の使い手は里長の辰巳さん。
昔、護衛団の団長さんだった時から武士っぽい方だと思っていましたが、益々武士ぶりに磨きがかかっているかも知れません。
もしかしたら辰巳さんの子孫は有名な武士の家系に連なるかも知れませんね。
そして刀、皆さんには”剣”ではなく”刀”と呼ばせております。
僅かに反った曲刀の出来上がりは厨二病を刺激する完成度ですが、後世の日本刀と比べてどのくらい性能が追い付いてきているのかはさっぱり分かりません。
私からの要求としましては、同じ重さの剣と斬りあいになっても折れない事。
そして藁束を斬っても折れ曲がらない事です。
もしも元カレの高志だったら、きっと切れ味に拘ったり刀の芸術性な価値を求めるのでしょうけど、私は乱戦になった時に敵の剣の性能を上回れればそれで十分だと考えております。
後世の日本刀は多くの鍛冶職人が切磋琢磨して、改良に改良を加えた努力の結晶です。
そのような業物が数年間の改良で出来るはずがありませんもの。
それよりも、刀を打つ技術を槍に適用することを始めました。
何かのテレビ番組で戦国時代の集団戦と言えば、槍が主流だったと聞いたことがあります。
たしか秀吉が農民兵を集めて長い槍を持たせて模擬戦をしたら、鍛錬された兵士らを圧倒したとか?
薙刀でもいいのかも知れませんが、敵が竹槍を突いてくる可能性も考えて、性能の良い槍の量産を開始しました。
忘れてはならないのが食料。
美濃と讃岐の二拠点で食料の備蓄を始めました。
吉野でも備蓄を始めていると鵜野皇女様からの暗号文が届いています。
中大兄皇子が未来視で食料の備蓄する様子を見ても、戦争準備だとは思わないでしょうから。
そして船、私達には船がありません。
私掠船という方法もありますが、船を奪う度に死傷者を出しそうな戦法をあまり推奨したくありません。
そして美濃で造船したとしても、とてもじゃありませんが関ヶ原を超えて持っていけません。
今のところは琵琶湖の畔でこっそりと造船が出来る場所を探しているところです。
いっその事、近江に向かってグライダーを飛ばして大津宮を空襲しようかと、如何にも異世界らしい空想したりもしました。
しかし古代技術の粋を集めたグライダーを琵琶湖に向かって飛ばそうとしても、飛距離ゼロメートルの不名誉な記録を残しそうなので、考えるのは止めました。
【天の声】鳥○間コンテストか!?
それにしてもつくづく思いますのは、戦争ってお金がかかるものなんですね。
用意した金は瞬く間に減っていきます。
私は美濃と讃岐と大伴氏の軍資金を惜しみなく貢ぐ”都合のいい女”として、竹林で金色をした竹の採集にせっせと励むのでした。
これぞ本当の竹取のかぐや?
壬申の乱の功臣を調べると、役小角の関係に行きつくのは偶然なのでしょうか?




