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【閑話】飛鳥時代の情報伝達事情

解説回です。

短いですが申し訳ありません。

後の話のための布石ですので、(特に作者が)後になって見返すことになると思います。

 役小角様とのコンタクトに成功した私は、無事に協力を得る事に成功しました。

 やはり小角様って霊能力をお持ちだったのですね。

 前々から不思議に思っておりましたが、確かめてみて正解でした。

 妙に感の良い方だとは思っておりましたが、人の心を読めるなんてやはり小角様ってば神仙様(チート野郎)ですね。

 将来は伝記の通り、空を飛ぶのかしら?


 小角様が私達の作戦に参画していただけるおかげで、信頼のできる味方の目途が立ちました。

 味方のフリをして近づいてくる敵は怖いですから。

 早速、鵜野皇女様へ暗号文を送りました。

 鵜野様は小角様ともお知り合いなので、きっと関心を持ってくれるでしょう。


 生駒山の帰り際、小角様には美濃産の伝書鳩を三羽預けました。

 これに文を付けて飛ばせば、私の元に帰って来る手筈です。

 伝書鳩は讃岐にも、秋田様の居る室戸にも、大伴氏の本拠地である住吉にも配置してあります。

 常に伝書鳩による試運転テストランで情報交換をしておきませんと、いざ本番で使い物にならなくなりますので。


 ちなみにこちらから小角様に連絡するのに、普段いらっしゃる大峯山の麓で狼煙を上げてくれと言われましたが、本当に連絡が付くのでしょうか?

 大峯山は女人禁制なので私は入れないから、御行クンに頑張って貰いましょう


 実際に伝書鳩を使ってみて、生き物を使うというのは想定外な出来事が多すぎる事を実感しました。

 帰還率が今一つで、今のままでは確実な伝達法として使うには不安が付きまといます。

 普通のキジバトを使っているので、現在のレース鳩の様な外国産の改良種のようにはいきません。

 少しでも帰還率を上げるために、讃岐の領民さんは日々研究を続けております。


 また伝書鳩だけではなく、通信手段として馬による連絡も行っております。

 戦で用いる軍馬を育成するため、百頭の馬の飼育を目指しております。

 しかし今はまだ讃岐で二十頭、美濃で六頭です。

 馬という生き物はエサの負担が大きく、下手をしたら人間様の貴重な食料を食べ尽くしかねません。

 近隣からも藁や干し草をかき集めて経費節減に努めておりますが、やはり維持費が大変です。

 負担軽減のため、馬を飼育するための牧場の開拓を行っているところです。


 その馬を使って、秋田様は各地を移動しております。

 この時代の馬とは現代の高級車に相当します。

 レク○スとかベ○ツみたいですね。

 お金持ちでもない限り、飼葉だけで破産パンクしてしまいますから。

 秋田様、いい気になって道中女性をナンパしないでね。


 一方、中央政府はというと馬による伝令が主流です。

 馬の乗り換えのための街道の途中に駅馬が設けられていて、駅鈴(えきれい)を下付された駅使うまやづかいと呼ばれる官人くにんが、駅馬に乗って駅で宿泊、食糧の供給を受けながら各地を行き来しております。

 もしも戦となった場合、中央政府の馬による伝達に負けない情報伝達手段を保有しなければならない訳です。


 ◇◇◇◇◇


 最近になって変わったことは、美濃を通る人の流れです。

 東国の人が筑紫へ行くために、難波津を目指して西へと向かう東人あずまひとの姿がしょっちゅう見られるようになりました。

 いわゆる『防人さきもり』ですね。

 関東から難波津への道のりは遠く、徒歩半月の長い旅です。

 しかし出張旅費は出ず、手当もありません。

 もちろん食料も自分持ちです。


 彼らが苦しい思いをする原因。

 それは百済の役で唐と新羅の連合軍と戦い、白村江で大敗したからです。

 その原因は言うまでもなく中大兄皇子にあります。

 しかも白村江で多くの方が亡くなることを承知の上で、その後、軍事の空白地帯となる筑紫へ兵士を送り込むために、中大兄皇子が企てた事です。

 彼らもまた中大兄皇子の野望の犠牲者でもあります。


 先々を考えた時、筑紫で防人となった彼らに恩を売っておけば、戦になった際、美濃へ攻め込むことをしなくなるかも知れません。

 そうゆう妥協的な考えで、一日分の食料を握り飯にして差し上げる奉仕サービスを始めました。

 東言葉を話す人限定のサービスです。


 これを同僚相哀れみると言うのでしょうか?


【天の声】少し違うと思う。


 そしてもう一つ。

 労役として美濃の人が近江へと徴収されております。

 言わずとしれた近江宮の建設のための人足としてです。

 そこで建設途中の宮の構造、間取り、地理、地形、水路、交通などを詳細に調べさせる様、村国様の部下の一人が、村上様から密命を受けてその建設現場へと向かいました。

 そして逐一、連絡を入れさせて情報収集に努めております。

 宮の情報を丸裸にしてしまう訳ですね。

 赤穂浪士が吉良邸の見取り図を入手するようなものでしょうか?

 村国様は特に宮の構造と周辺の地形を念入りに調べさせているみたいです。

 私が作成した地図も大活躍です。


 ◇◇◇◇◇


 こうして敵に先んじる情報収集能力に磨きを掛けていきました。

 そしてその中に、気になる情報が入ってきました。


 『中臣鎌足様が病気で臥せっている』


 今の私は中臣様に決して会えません。

 間違いなく中大兄皇子の未来視に引っ掛かるからです。

 しかも、中臣様のいらっしゃる場所は敵中の真っ只中です。

 会えないのは分かっておりますが、この世界に来て間もない頃にお会いしてからずっと世話になった方でもあります。

 怖い人でもありますが、真人クンの義父であり、決して真人クンを邪険にしている様子はありませんでした。いえ、むしろ真人クンは父親である中臣様をとても尊敬していました。

 与志古様も中臣様の女性尊重フェミニストぶりを尊敬しておりました。

 きっと家族思いの方なのでしょう。

 悪い方ではないと思うのです。

 でもやはり中臣様は中大兄皇子に与する敵なのです。

 これまで数々の中大兄皇子が行った黒い企みに中臣様が全く関与していなかったのか?

 冷徹な政治家でもある中臣様の事ですので、必要とあれば政敵の暗殺をしても不思議ではありません。


 私の予想では壬申の乱の前に中臣様は亡くなっていたような気がします。

 最近思い出したのが、中大兄皇子が亡くなる直前の中臣様を見舞って、中臣様に『藤原』の姓を与えたという逸話です。

 つまり、中大兄皇子が亡くなった後の勃発するとされる壬申の乱の前に、中臣様は『藤原鎌足』となる訳です。

 中臣様の体調が優れないという事は、その日が近づいているという事なのでしょう。

 だとしたら、もし私が覚悟を決めて出張って中臣様のご病気を治そうとしても、歴史の修正力により治癒は無効化されるという事、つまり私には何もできないという事です。


 会うべきではないと頭では分かっておりますが、ここで中臣様にお話しできないのは後々の後悔となるだろうと思うのです。

 何か方法は無いでしょうか……?


 無理だろうと思いつつも、頭を悩ませるのでした。 


駅鈴(えきれい)は馬具の一種で、鈴と同じ原理で音の鳴るものです。

神樂鈴かぐらすずを作る話の時に参考にしました。

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