チート幼女の農業改革・・・(2)
家庭菜園すら殆どやらない作者が、異世界とはいえ農業の話を語るのは少~し心苦しいです。
ダンボールコンポストは一回やって挫折しました。
<(_ _)>
***** 視察隊活動続いております *****
太郎おじいさんという農業指導者、兼 農業技術者を雇った私は、飛鳥時代の農業技術で知識チートするため、新しい試みをするのでした。
「太郎おじいさん、田畑に水以外に何あげている?」
「水……以外でしょうか? 特にあげてはいませんが、生い茂った草や木を燃やすと作物の育ちが良いんで……」
焼畑農業ですね。現代でもアマゾン川流域でやっている焼畑が環境問題になっているって聞いた事があります。
アレって一定期間休耕しないと地力ってものが段々と落ちるって聞いた事があります。
広い土地があれば順繰りに土地を周って焼畑をすればいいのですが、植生が回復する前に焼畑やったりすれば土地はどんどんと痩せて行くような……。
やはり肥料が必要そうな気がします。
「焼くだけじゃ足りない。
足りないものを補う。
そうしないと土地は腹ペコになる」
「腹ペコ……ですか? 米を作るのに米をあげるんですか?」
「人と稲の食べ物、違う。土の中に滋養が必要」
「土の滋養って何でしょうか?」
「作って、試す。それ調べるのが太郎おじいさんのお仕事。源蔵さん、手伝って」
「はっ」
とりあえず堆肥作りに着手ですね。
私が知っているのは現代に居た時にやった事のあるダンボールコンポストくらいです。
しかしこの時代の人たちは食品ロスを出す様な生活はしていません。
なので魚介類専用のコンポストを設置しましょう。
猪名部さん、出番です!
◇◇◇◇◇
ここはピッカリ軍団の宿舎に近い、何もない荒地です。
源蔵さんと傘持ちのお姉さんと護衛さんを引き連れて、やってきました。
「ここに木箱を置いて」
「はい」
「中に土を入れて」
「はい」
(ザックザックザックザックザックザック)
「お姉さん、応援して」
「頑張って~♪」
(ザックザックザックザックザックザックザックザックザックザックザックザックザックザックザックザックザックザック)
「蓋して」
「はい」
「看板立てて」
「はい」
出来上がりました。
領民は字を読めませんので魚とカニのイラストを看板に描きました。
貝はそのまま入れると貝塚になってしまうので、貝専用の箱を用意して後で粉々にしましょう。
次に糞尿です。
中臣様はお馬さんに乗って讃岐にいらしたので、この時代にお馬さんがいるのは確かです。
しかし、我が領地内には牛も馬もいません。
……となると人糞です。
人糞用のコンポストで心当たりがあるのは、何処かの神社で見たことがあるバイオトイレです。
確かおが屑にポットンする感じでした。
おが屑ならば猪名部さんの所に沢山ありますので、有償で分けて貰えますし、おが屑以外でも藁とか雑草でも良いかも知れません。
とりあえず人糞を一箇所に集める集合型のコンポストステーションの設置を義務つけました。
我が家のオマル式ポットントイレも糞尿を回収して川へ捨てさせていますので、同じ事を集落単位でやって貰います。
穴の中に雨が入り込むと悲惨な状況になりそうなので、猪名部さんにお願いして屋根と浸水防止の土塁、そして臭い飛散防止のための蓋を付けました。
懸念は寄生虫ですね。太郎おじいさんが危篤状態になったのは寄生虫が原因ぽかったし、多分この時代の人は皆お腹の中に寄生虫を飼っていると思います。(※第一章『チート幼女、デビュー』参照)
寄生虫の卵を含んだ堆肥を使うと、収穫した作物に寄生虫の卵が付着して、それを食べた人が寄生虫に侵され、その人の人糞を堆肥にして、………とグルグルとループしてしまいます。
肥やしに光の玉をぶつけてもいいですし、領民の健康のために全員に寄生虫退散の光の玉を当てて回るのも良いかも知れません。
とりあえずここに居る源蔵さん、お姉さん、太郎おじいさんの3人と私、プラス本日の護衛当番さんにやっておきましょう。
チューン! チューン! チューン! チューン! チューン!
最後に、広葉樹の落ち葉を集めて堆肥にする方法。
これはテレビで見た程度の朧げな記憶ですので上手くいくか分かりません。
しかし広大な農地面積から考えると、これが一番効果的な気がしますので、時間を掛けて検討したいですね。
藁を燃やした灰も土に良いらしいと言っていたので、雑草とかを刈った草を一箇所にまとめる様指示して、ここにも屋根を付けるよう、お願いしておきました。
天女と噂される私がいう事に限って領民の皆さんは進んでやってくれます。
段ボールコンポストの経験からすると堆肥化に3ヶ月から半年掛かると思いますので、今年は太郎おじいさんの田畑を使って試験的にやってるつもりです。
ピッカリ軍団も頑張って各家庭の糞尿処理をやってね。
◇◇◇◇◇
日本人の心の風物詩の一つ、と言えば田植えです。
一家総出で田植えをしているだろうと想像しながら、本日も視察です。
メンバーは源蔵さん夫妻、太郎おじいさん、警備当番さん。自警団さんも農作業がありますのでいつも三人とも拘束する訳にはいけません。いざとなったら私も光の玉で戦えますので、警備は一人で。
水田へ行きますと、私の想像とは違っていました。
種籾を直播きしております。田植えじゃ無いんですね。
「太郎おじいさん、田植えをしないの?」
「田植え、とは何でしょうか?」
「種籾から苗を育てて、苗を田んぼに植える」
「いや、その様な事はやった事はございません。そうすると何が宜しいでしょうか?」
「………分からない。何故?」
「申し訳ありません。姫様が分からない事は私には分り兼ねます」
「じゃあ、やってみよう」
まずは苗を育てる箱というかプランターみたいなのが欲しいですね。
何箱必要かしら?
とりあえず試験的に三十箱用意して、来年幾つ用意するか考えましょう。
種籾の選別もテレビ番組で見た覚えがあります。
確か濃い塩水に種籾を入れて沈んだ種籾はOK、浮いた籾は使わないってやっていたはず。
飛鳥時代では、塩は貴重品ですので大事に使いましょう。
必要なのは瓶と塩、そして浅い箱です。
遅々としてなかなか進みませんが、最初はこんなものです。
一日一歩、三日で三歩、綺麗な花を咲かせましょう♪
ちなみに太陰暦は一月29.5日なので、飛鳥時代の一年は354歩です。
◇◇◇◇◇
三日後、準備ができました。
ところで塩ってどれくらい入れればいいでしょう?
分からないので、種籾を入れて水を入れてみましたが、ほぼ全部沈んでいました。
塩を入れてみました。
グルグルグルグル……、変わりありません。
もう少し入れてみました。
グルグルグルグル……、変わりありません。
もっと入れてみました。
グルグルグルグル……、種籾が舞い上がり易くなりました。
思い切って入れてみました。
グルグルグルグル……、あら、ほぼ全部浮かんでしました。
水を少しずつ加えて、大部分の種籾が沈むくらいの濃さになったみたいです。
それでは水面に浮かんだ種籾を回収します。
「太郎おじいさん、この種籾を調べて」
「どれ? ………何じゃこれは、皆スカスカじゃないか!」
「この方法で良い種籾を選ぶ。太郎おじいさん、やってみて」
「ほ〜〜〜、こんな方法があるとは……」
確か消毒とかすると効果が上がるらしいのだけど、それは来年以降ですね。
瓶の大きさがあまり大きく無いので少しずつしか選別出来ず、結局丸一日掛かってしまいました。
塩が貴重なので仕方がありません。
使い終わったら塩水は取っておいて、乾燥させて来年用に保管する様にお願いしました。
選別した種籾は十分に水洗いして、土を入れた箱に蒔いていきます。
どのくらい種籾を蒔けば良いのか分からないので、幾つかの条件で九箱ずつ用意しました。
そして残り三箱は種籾の色で仕分けしました。
この時代のお米はいわゆる古代米です。
赤米、黒米が混じったお米で、栄養価は高いのですが味はイマイチ。
少し原始的です。
もしまっ白なお米は中央のやんごとなき方々に納めたり、かぐや米とか、 竹取米とか、ピッカリ米とか名前を付けてブランド米として売り出すのも良いかも知れませんね。
このまま農業系かぐや姫を目指すのも悪く無いかな? と、思う今日この頃です。
【天の声】残念ながら、そう言っていられるのも今のうちだ。
(つづきます)
古代の稲作に関する時代背景等につきましては、新紀元社刊『現代知識チートマニュアル(著者:山北篤)』を参考に執筆しました。
湿田という言葉を初めて知りました。
ネット情報では田植えが奈良時代、今のような乾田がメインになったのは明治以降の様です。