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チート幼女の農業改革・・・(1)

新章始めました。

新たにリスタートするつもりで頑張ります。

宜しくお付き合い下さい。

 新年あけましておめでとうございます。

 ……と申しましてから三ヶ月が過ぎました。

 現代でしたら新暦の四月。

 ランドセルを背負ってピカピカの一年生として小学校に通い始めているはずです。

 ランドセルの色は何色にしましょう?

 現代の私が小学校の時には……ブツブツ。


 厳しい寒さも過ぎ、昼の時間が段々と長くなっているのを感じます。

 明日はお爺さんの許可を頂いて、領地の田畑を見て回る予定です。

 この世界にやってきてから、現代人の感覚で考えている常識と、飛鳥時代の常識との乖離を感じる事は相変わらずです。

 なまじ同じ日本であるので、ちょっとした違いが分かり難いのです。

 そこでまず手始めに、この時代の稲作を知りたいな、と思った訳です。

 同郷出身のアラヒフアイドルのテレビ番組をしょっちゅう観ていたので、自分も農業体験が出来るのならやってみたいと思わない訳では無くも、ですが……。


 ◇◇◇◇◇


 さて今朝は翌朝です。レッツ、視察隊!

 奇しくも昨年の租税調査の時と同じメンバー。

 家人の源蔵さん、傘持ちのお姉さん、そして自警団の三人です。

 しかし、あの時から変わった事と言えば二点あります。

 一つは自警団の団長さんだけでなく団員さん達にもぶきが支給され、攻撃力が3上がった事です。

 (パパパパ、パパッパー♪)


 そしてもう一つ、源蔵さんです。

 最近、顔色がツヤツヤしている様な気がしていたのですが、昨日その理由が分かりました。何と再婚していたのです!

 じょうしに黙ってです!

 私の中の常識では、結婚する際に上司に報告するものでした。

 しかし飛鳥時代の常識ではそうではなさそうです。

 しかもお相手は傘持ちのお姉さん!?

 今、私の傍にいるお姉さんです。思わずお姉さんに聞いてしまいました。


「どこが良かったの?」


 どうやら我が家の家人さんへの待遇が恵まれているため、今の源蔵さんは貧民らしさが抜けて垢抜けた結果、領民のなかでは中流階級めぐまれたひとになってしまった様です。

 言われてみれば、目の前にいる領民さんたちに比べて生活に余裕がある感じがします。

 コンビニで1個135円のお買い得ツナマヨおにぎりでなく、234円のプレミアなおにぎりを買っていそうな、そんな感じです。

 まあ、反対する理由もありませんので、お祝いの言葉を 送っておきました。


「次結婚する時には報告してね」


 ◇◇◇◇◇


 領民の皆さんはひたすら鍬でエッチラホッチラと畑を耕していました。

 人手が足りない時にはピッカリ軍団の出動です。

 租税滞納者、不法占拠、元山賊、皆、私のピッカリの光の玉でピッカリさんになった人ばかりです。

 ……あ、サイトウだけはその前からピッカリでした。

 彼らを雇っているのはお爺さんです。

 新年の宴会の時に建てた仮設住宅を田畑の近くへ移設して住まわせています。

 竪穴式住宅に住んでいる領民に比べれば、むしろ恵まれた待遇かも知れません。


 この時代の奴婢ぬひは主人の所有物として取り扱われています。

 現代育ちの私としては奴隷を所有するという行為そのものに嫌悪感を感じますが、これもまた現代の常識と飛鳥時代の常識の乖離なのでしょう。

 とは言え無体な事はしたく無いので、奴婢ではなく労役に従事する囚人としての扱いをお爺さんにお願いしました。


 その労役の条件というのはこの三点です。

 ・衣食住を保証してあげる事。

 ・一日の労働時間を決めて、労働の記録をつける事。

 ・刑期が終わった後、労働に見合った対価(税引き)を支払う事。


 特に三つ目は甘やかし過ぎと言われました。

 現代の感覚で考えても山賊達には甘過ぎる処分ですし、逃亡して同じ事を繰り返すかもしれません。

 しかし彼らからすれば逃亡したらそれまでの苦労が水の泡なのです。

 しかもここで労役に従事していれば食い詰める事はありませんし、こちらとしても逃亡を防ぐための労力だと考えれば安いものです。

 万が一、領民へ危害を加えたりしたら没収ですので、抑止力としても働きます。

 更にもう一つ、刑期を終えたら頭をフサフサにする約束もしていますので、勤務態度は至って真面目です。


 特にサイトウは目の色を変えて働いている様です。

 三年後、明るい頭とオサラバする明るい未来のため、眩しい頭に眩しい汗を光らせてキラキラと頑張っています。

 何てったって、サイトウは手遅れのピッカリですらフサフサに出来るという事を実証した被験者ですから。

 頭髪こればかりは現代の常識と飛鳥時代の価値観は同じみたいです。


 ◇◇◇◇◇


 飛鳥時代の稲作は、現代と同じで水田です。

 田植え前に既に水が張ってあるのかと思っていましたら、実は年中水を張っているとの事でした。

 水田は水田でも少し違うっぽい気がします。

 臭いもします。

 これもまた現代の常識と飛鳥時代の常識の乖離なのでしょう。


 私みたいな素人がちょっと聞きかじった知識で横槍を入れるのは大失敗の元の様に思えます。

 源蔵さんも農作業について多少の知識はあるのですが、出来ましたら達人の知恵が欲しい所です。

 現代で言う農業指導者ですね。

 源蔵さんに聞いてみましたら1人心当たりがあると言うので、予約アポ無しですが会いに行きました。

 行った先は見覚えのある竪穴式住居。

 昨年の調査の時、ほとんど全ての住居に行ったのですから当たり前ですが、この住居には特に見覚えがありました。

 私が初めて回復ヒールをした、太郎さんのお家です。

 ……ということは、太郎さん?


 源蔵さんが中へ入っていき撮影許可交渉みたいな事をしています。

 しばらくしたらお年寄りが飛び出して、年齢を感じさせない見事なスライディング土下座を決めました。

 私が病気を治したおじいさんです。


「ははぁ〜〜!」m(_ _)m


 思わず拍手をしそうになったくらいです。

 スライディングのキレ具合をみますと、身体はすっかり治ったみたいですね。


「姫様、太郎さんはここでは農業に詳しいので皆さんに頼りにされています」


 そう言えばチート騒動で有耶無耶になってしまいましたけど、ここの家族は男性の名前がみんな『太郎』さんでした。

 ネトゲでプレーヤーネームを付ける時、名前を考えるのが面倒だと思いませんか?

 私は苦手です。

 同様に考える人は多いみたいで「aaa」とかアニメキャラを拝借したプレーヤーネームをよくみますが、太郎一家はHM固定タイプなんですね。

 しかし、息子さんの太郎さんと区別が付かないので、ここでは『太郎おじいさん』と呼びましょう。


「太郎おじいさん、元気?」


「はは〜、姫様のおかげで命を救われまして、万全でございます」


「よかった。太郎おじいさん、稲作教えて」


「姫様に教えるなんて恐れ多い事です。ワシには勿体無くて出来ません」


「じゃあ、相談にのって。それとも嫌?」


 少しだけ圧を掛けます。


「いえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえ。

 その様な事は全く思っておりません。

 精一杯、命を賭けて相談します」


 太郎おじいさんは今年六十二歳になったはずです。

 この時代の人の中では長寿で、本来ならリタイアする年齢です。

 しかし、現代であれば定年後の再雇用契約する年齢で、昨日まで部長だった人が、新入社員とさほど変わらない給料で、嘱託として元部下の下について雑用係として扱われます。

 総務の立場から見て言える事は、管理職だった人は口ばかりで今ひとつ使えず、現場だった人は去って欲しくない貴重な人材だったというケースが多いですね。

 なので現場の叩き上げである太郎おじいさんも嘱託として私が雇ってもいいかも知れません。

 とはいえ、おじいさんにいつまでも土下座させる訳にはいきません。


「太郎おじいさん、立って」


「いえいえいえ、姫様、私なぞに『さん』付けは恐れ多いでございます」


「じゃあ、太郎おじい様」


「いえいえいえいえいえいえいえ、姫様に様付けで呼ばさせたら私は処分されてしまいます」


「じゃあ、太郎おじいちゃま」


「いえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえ、その様なことが国造様の耳に入りましたら、どの様に思われるか」


「じゃあ、太郎おじいさん」


「………はい、姫様が仰る通りに」


「稲作、どうやっているか教えて」


「へ? ……はあ。姫様がご覧になっている通りで、田に籾を撒いて、穂が実ったら刈り取るだけですが」


「知っている稲作と違う。何処が違うか知りたい。一つ一つ教えて」


「はぁ……姫様から私が教わる通りにやればよろしいのでしょうか?」


「それダメ。私が知恵を貸す。太郎おじいさんが試して自分で改良して」


「承知しました。何なりと仰って下せえ」


 これで一歩前進です。


 あと五十年(半世紀)くらいしたら……

 新たに施行される税の負担が重すぎて、庶民は苦しい生活を強いられる事を私は知っています。

 だからせめてここに住む領民だけでもいいから、少しでも生活を楽にしてあげたい。

 たった五十年しかないのだから、そのための布石を今のうちに打っておきたい。


 そう思っての行動でもあります。

 時代の節目まであと少しです。



(つづきます)

新章では色々な事件があったりして、息苦しい展開になりがちです。

出来るだけサラッと読めて、コメディー色を失わない様にしたいですね。

読んでいる皆さんにとって程よい息抜きの時間を提供できればそれが1番だと思っています。


ぶっ込みすぎて空振りしそうですが……。

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