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出航の前日

気がつくと400話を突破しておりました。

おかしいな……300話で終わる予定だったのに。


この分でいきますと500話まで行くかな?

あと一人、重要な登場人物がまだ出ていません。


(※長い逃亡の末、かぐや達はもと居た長津へと戻ってきた。

 そこで船に乗って出雲を経由し、難波へと向かい予定であった)



 長津(みなと)に行くと、私達が乗る船が待機していました。

 意外にも立派な船です。

 すっかり私は無人島から脱出するバラエティ番組で観たイカダに毛が生えた程度の舟を想像しておりました。

 もっともあのイカダは専門の方の監修の元、スタッフ一同で作られた安全に配慮した物で、危険と判断すればクルーザーで栄光……じゃなくて曳航するという、一見過酷なロケに見えて実は演者への配慮が行き届いた撮影現場だったとか?

 まあ今となってはどうでも良い事ですし、同じチャレンジ系バラエティ番組でも私は日曜夜7時派なので……。


 しかし目の前の船はどう見ても曳航される側ではなく、する側です。

 これなら安心ですね。


「お嬢ちゃんのおかげで良い船が押さえられたよ」


「いえ、私では何も出来ません。

 宇麻乃様のお役に立てたのならそれで十分です」


 どうやら(きん)に物を言わせて船をせしめたみたいです。

 これなら船の中でゆっくり寝られると思うと、一刻も早く出航して欲しいと思わずにはいられません。

 ですが出航は明日。

 潮の関係もありますが、今日は少し海が荒れているそうです。

 それまでに水とか食料を積み込んで、出航の準備です。

 隠れ家に戻りたく無い私たちは無理を言って、船室で夜を明かすことにしました。


 ゆらーん、ゆらーん、ゆらーん


 今思えば、今年の初めに筑紫へ向けて航海してからまだ一年も経っていません。

 しかし状況は全く変わってしまいました。

 あの時お元気だった斉明帝も、今頃は手厚く葬られているはず。

 そして私はお尋ね者(wanted)の様な生活です。


 長津の様子を見る限り、撤退の様子が無かったので白村江の敗戦はまだみたいです。

 しかしもう今の私にはそれを止めさせる手段(てだて)はありません。

 あの男の野望に利用され、敵国に殺させるために出兵させるだなんて、人として大切な何かを捨て去ったとしか思えません。

 良心とか、真心とか、思いやりとか、優しさとか、……。

 中大兄皇子は知っているのかな?

 男らしいって、優しい事なんだよ。


【天の声】かまやつか?!


 しかし、帝に準じる方とは言え、敵対してしまった以上、戦わざるを得ないかも知れません。

 自分の脳天に剣が振り下ろされたあの時の記憶は、今思い出しても身震いがします。

 本気マジで殺しにきましたからね。

 大海人皇子の舎人だった時に剣で切り付けられた時ですら、あそこまで明確な殺意を向けられた事はありませんでした。

 少しも躊躇ちゅうちょがありませんでしたから。

 (※第182話『とんだ新年の宴』ご参照)


 思い返してみますと、中大兄皇子には私の光の玉が弾かれてしまいました。

 正しくは皇子"だけ"に弾かれたのです。

 後ろに居た兵士達には命中していたし、皇子の後方にいた連中は皇子が(じゃま)となって光の玉が弾かれてしまいました。


 皇子の様子からすると、私の光の玉(チート)が効かない事を元々知っている節がありました。

 とすると、そうゆうチート持ちなのか?


 ……あれ?

 昔は疲労回復の光の玉(ヒール)が効いていた筈です。

 少なくとも疲れ切っていた皇子が回復しましたから。

 (※第82話『突然の皇子様の来訪(1)』ご参照)


 だとすると、今回皇子が意図的に弾いたのか、それともあの後に皇子の身に何かがあって弾かれるようになったのか?


「お嬢ちゃん、難しいを顔してどうしたんだい?」


 不意に同じ船室内にいた宇麻乃様が声を掛けました。


「あ、いえ、遠賀(おんが)の隠れ家で囲まれた時、私の光の玉が皇子に弾かれたのです。

 一体何故だろうと考えておりました」


「ああ、あれね。

 傍目からみていたら皇子は大きくて見えない球の中に居て、球の外に居るお嬢ちゃんからの攻撃を防いでいた様に見えたな」


「ええ、しかし昔は光の玉の効果が効いていたと思ったのです」


「おいおい、以前にも攻撃したのかい?」


「違いますよ。

 確か皇子宮を焼け出された時に讃岐にいらしたのです。

 その時に中臣様の宮で舞を舞う事を命じられまして、そのついでに疲労が回復する技をこっそりと施したのです。

 確かに効果があった筈でした」


「なるほどね。

 ならば目立たない様にやれば、通用するかもしれないって事かな?」


「う〜ん、そうかも知れませんし、違う様な気もします。

 皇子はハッキリと『お前の怪しげな技は私には効かん』と自信ありげに言いましたから」


「そうなると……昔は効いて、今が効かないのだからその間に何かがあったという事かな?」


 何かが?

 何かというと……!神の加護!

 そうゆう事か!?


「中大兄皇子は私と同じ様に神の加護を受けている筈です。

 その間にあった事とは、神のご加護では無いでしょうか?」


「お嬢ちゃんは皇子が授かった神の加護って何か分かるかな?」


「申し訳ございません。

 私は自分が授かった加護ですら正しく把握していないのです。

 ましては他人の加護なんて予想も付きません」


「お嬢ちゃんらしいね」


「そうですか?」


「ああ、何をやるにもいつも手探りなのに全力で頑張るところなんかがさ」


「それっていつも行き当たりばったりだと言うことにも思えますが?」


「一応は褒めているつもりだよ」


「まあ、そうゆう事にしておきます。

 それで皇子が神のご加護を受けた事で私の技が効かなくなったと思うのです」


「それはお嬢ちゃんの技が効かない、という加護を受けたという事かな?」


「それは難しいですね。

 それよりも私は、神の加護を受けた者同士は、神の御技が通用しないという制限があるのだと思います。

 神の使いと一度だけ話す機会があったのですが、神の御技とは思いのほか不自由なものだと教えられました」


「こう見えて私は祭祀の端くれなんだけど、お嬢ちゃんはとんでもない事を言うんだね。

 本当に神の使いに会って会話したのなら、お嬢ちゃんこそ神の使いじゃないのか?」


「ええ、一応はそうゆう立場です」


「えぇ!? 冗談のつもりだったけど本当なの!?」


「言ってませんでしたっけ?」


「聞いてないよぉ」


 ……何か現代のお笑い芸人みたい。


「とりあえず、皇子には私の技は効かないし、皇子の技が何であるか分かりませんが効かない可能性が高いという事ですね」


「すると、神の使いであるお嬢ちゃんのとんでも無いあの力を封じるため、同じく神の使いの皇子が出張って来ると言う事かな?」


「ええ、そんな気がします。

 残念な事に……」


「分かった。

 ではそのつもりで心構えをしておこうか」


「………はい」


 明日は出航。

 無事な航海を祈るだけです。


 ボンボヤージュ♪


本日はデスマーチがピークに達したため、少々短くて申し訳ございませんでした。

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