与志古様のマタニティスケジュール
キャンディーズネタ、てんこ盛りです。
※一部、フリー◯ンネタあり。
私達が讃岐に到着して3日後、与志古様が讃岐へといらっしゃいました。
一時期の消耗ぶりに比べますと、かなり回復したご様子です。
中臣様の二人のお子様も一緒です。
名前は氷上ちゃんと五百重ちゃん。
歳は建クンとあまり変わらないか少し年上のお姉さんみたいな感じです。
建クンと仲良くしてくれるかな?
建クンは生意気でも忘れん坊でも意地悪でもない、可愛い年下の男の子~♪ だからね。
落ち着いて考えてみますと、建クンは後宮で綺麗なお姉さん方に囲まれて育ってきましたから美人耐性があるかも知れません。
でもいつも一緒に居るのが私だからジミ顔に耐性があるかも知れません。
でもでも建クンが親しい年頃の女の子といえば鸕野お姉様くらいしかいませんでしたから、ちょっとお姉さんの彼女達は建クンの好みにドンズバかも?
【天の声】ズバリ、ドンピシャ。略してドンズバ。アラサーでも知らない人の多い死語である。(諸説あり)
乳母代わりの私としては建クンの恋愛を応援すべきでしょうか?
それとも立ちはだかる壁として、恋の障害となるべきなのでしょうか?
そんなことを考えているうちにご挨拶が終わっておりました。
で、当の建クンはというと、我関せずで全く興味を示していない様子でした。
ん、もう!
彼女達をけし立てて建くんに迫って貰おうかしら?
エル、オー、ブイ、イー、投げキ~ッス♪
【天の声】すごくえっちだ……。
◇◇◇◇◇
「それでは今後の方針をお話し致します」
与志古様が落ち着いたところで、与志古様にこれからどうするか、気をつけて頂く事などを説明します。
これは難波の施術所を運営していた時に散々行ってきた事です。
出産や女性に対する偏見や誤解が罷り通る迷信を一切排除して、妊婦さんの健康と心の安定を最優先した計画です。
暫くぶりでしたが、一晩掛けて思い出しました。
「与志古様は経産婦ですので出産の苦しさはよくご存知ですよね?
あれをもう一度繰り返すのです。
ですので体力を落とさぬ様、多少は身体を動かして頂きます」
「そうね。
人生の中であれ程痛い思いしたことはないと思うわ。
赤子と一緒に身体の中の力が全て持っていかれた様な気分でした」
「はい、しかし夏の暑さというのは体力を擦り減らします。
夏に備えて体力をつけて、夏の間その体力を維持する生活を心掛けて頂きます」
「まずは体力ね」
「はい、食欲が落ちてしまいますと、お腹の中の赤子への滋養が不足してしまいますので。
だからと言って精神にゆとりが無いのも宜しく御座いません。
無理や我慢はなさらないで下さい。
心の動揺は赤子にも響きます」
「そうゆうものなの?」
「信じられないかも知れませんが、お母様の心の不安は胎児にも伝わるのです」
「え、嘘! そうなの!?」
「なのでどうしても不安を感じましたら私にお伝え下さい。
それを軽くする方法が私には御座います」
「お願い、頼りにしているわ」
「はい、お任せ下さいませ。
献立はこちらからご指示しますが、好みに合わせますので遠慮なくお申し付け下さい。
我慢は大敵ですので、ご自身のため、お腹の中の子のためとお思い下さい」
食料につきましては中臣氏の伝手を頼って必要なものを用意する事になっております。
調理も中臣氏の方々がします。
私はレシピを渡して指示をするだけ。
これまでずっと忌部氏にお世話になっていましたのでその伝手を使えば楽ですが、何かあった場合、例えば与志古様が腹痛を訴えたとか、お腹の子に何かあったとか、問題が起こりましたら氏同士の争いに発展しかねません。
忌部氏は与志古様の出産に関して完全に手を引く事なりました。
代わりに中臣氏で小麦とか大豆、魚などを全て準備するため、軌道に乗るまでは苦労の連続です。
「至れり尽くせりで申し訳ないわね」
「後宮に入る前はこれが当たり前でしたので」
「今でもかぐやさんが開所した施術所は賑やかよ。
だけどかぐやさんが居れば、と仰る方は今でもおります。
間人太后様は特にそうね」
「畏れ多い事です」
「そのかぐやさんを独り占め出来るなんて贅沢よね。
帝には重ね重ね御礼を言っておかなければなりませんね」
「私と致しましても、与志古様の一大事にお役に立てるのは喜ばしく思っております。
長らく家に帰っていませんでしたので、親孝行も出来ますし」
「ご両親は喜んでらしたの?」
「はい、母様とは積もる話が絶えず、いつまでも話をしてしまいます。
父様は皇子様をお連れして帰省した事の方をお喜びしているみたいですが」
「かぐやさんは建皇子様とずっと一緒なのね。
もしかして婚約するの?」
「私は建皇子様の乳母代わりみたいな者です。
ずっと一緒だからといって婚姻するとは限りません。
もし皇子様が望めばそうなるかも知れませんが、もし皇子様に想い人が現れましたら、私は全力で応援しますよ」
「という事は、氷上か五百重が建皇子様に気に入れられる事もあり得るって事?」
「もちろんです。
ただ今のところ皇子様はあまり女子への興味が無いみたいですので、一筋縄ではいかないと思いますよ」
「私としてはかぐやさんには真人が帰るまで独り身でいて欲しいから、二人には頑張って貰いましょう。
かぐやさんが真人の伴侶でいるのなら、これほど心強い事はないもの」
「安心して下さい。
人妻になっても味方でおりますので」
「人妻になれそうなの?」
「諦めたらそこで負け戦です」
「つまりまだ当ては無いと?」
「諦めてはおりませんので」
「ふふふふふ、初めて会った時はあんなに小さかった貴女とこの様な話をするなんてね。
おかげで希望が湧いて来ました」
「とりあえず一度に申し上げましても混乱するだけですので、暫くはいつもと同じ生活を続けて下さい。
起きる刻、寝る刻、食事の量などですね。
出来ましたら身体の中を洗うつもりで、朝な夕なに湯冷ましの水をお飲み下さい。
水に当たる事は非常に怖いので、必ず煮沸したお湯をお使い下さい。
数日内に水の濁りを取り去る浄水炉をご用意します」
木炭を使った簡易浄水器ですが、施術所で使う水は必ずこの水を使っておりました。
使う水の量が多かったので浄水に使った炭を一日で交換しておりましたが、ここでは数日おきに交換しましょう。
「分かりました。気をつけるわ」
何故か私がアロ〜ンなのが与志古様の励ましになってしまっているみたいです。
人妻になってしまったらゴメンなさい。
当て?
讃岐に白馬に乗った王子様が迎えに来ない限り有り得ないのだけど。
おろろ〜ん。
◇◇◇◇◇
さて与志古様の出産計画が始まりました。
……と言っても特別何か始める訳ではありません。
今までの生活を続けて貰いながら、少しずつQOLを上げていきます。
夏はまだ先ですが、蚊は病気の媒介になりますので特に気を使います。
予め蚊帳を用意したり、蚊取り線香を用意したりします。
除虫菊はありませんので、代わりにサルノコシカケを燻すのがこの時代の人の蚊よけです。
現代の知識と古代の知恵、使えるものを全て使って、歴史の歪みに立ち向かいます。
そのためにも与志古様の出産を絶対に無事やり遂げなければなりません。
終幕までには先は長いのですが、ボチボチと伏線回収しておかないと説明がとんでもない事になりそう……と言う事に最近気付きました。




