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新作チート 真実の血清!

段々と蘇我赤兄のキャラがあらぬ方向へと向かっております。

一旦引き上げさせます。

次の出番はずっと先になります。

 帝からの便りが来て、帝御一行は神嘗祭に合わせて、紀の国から伊勢を経由して帰って来るそうです。

 まだもう少し先です。

 長いですね。

 金鉱脈の探索でもやっているのでしょうか?

 私でしたらものの数秒で金を掘り当てる自信がありますが……。


 国のトップが不在なのをいいことに、留守官はやりたい放題です。

 例の『後宮押し掛けパンツ泥棒未遂事件」の一件以来、留守官の蘇我赤兄は何かにつけてアレやれコレやれと言ってきます。


 宴の酌をする者を寄越せ。


「私達は特に許しがなければ闈門より外に出る事は叶いません。

 もし酌をする者を要り用で御座いましたら、後宮の中でどうぞ。

 帝の許可もありますので。

 ただし宦官となってからおいで下さい」


 舞を披露せよ。


「恐れ多くも留守官様からの直々のご指名は大変光栄なご申し出で身に余るほどでございますが、誠に申し訳ございませんことに、あいにくと私は帝に女嬬(めのわらわ)としてお仕えする身につき、その他の申し出につきましては業務外むかんけいであり、帝のご許可無く勝手なことは致しかねますので、また別の機会に日を改めて、然るべき手順をお踏みの上でお申し出下さいますと、私としては大変に助かります。

 ご期待に添えず申し訳ございません。


 (尻さわさわ)


「きゃぁぁぁぁ」

 ばっちーん!


 私を怒らせるとタダでは済まぬぞ!


 チューン(記憶消去)


 何かを言うたびに私が出張って反論します。

 今やすっかりと私は蘇我赤兄(セクハラオヤジ)担当になってしまっており、蘇我赤兄という名は後宮全体でセクハラ親父の代名詞となっております。

 現代の会社でも、セクハラの挙句に降格になった営業部のスケベ課長は、総務部の女子社員全員に嫌われていて散々な言われようでしたが、アレとそっくりな状況です。


 しかしそれももう少しの辛抱。

 帝が戻られるまでのあと僅かな期間です。


 ◇◇◇◇◇


 一時は生死の境を彷徨っていた建クンもほぼ元通りです。

 好きなものをたくさん食べて、元気モリモリです。

 帝がお帰りになる時までに完全回復しようね。


 なので、神社仏閣の関係者の方々との面談(インタビュー)を再開する事にしました。

 後宮の(一部の)皆さんも新作を待ち侘びておりますので、私が忌部氏の宮へ行く事諸手をあげてお見送りしてくれます。

 ……特に玉さんが。


 久々の面談も滞りなく終わり、お土産も頂きました。

 護衛を連れて意気揚々と岡本宮へと戻っていきました。

 私がご機嫌だと、建クンもご機嫌です。

 二人で手を繋いで大きく手を振って歩いていきます。

 ♪(Hey)(Let’s)こ〜(go) (Hey)(Let’s)こ〜(go)


 宮へと入り内裏へと向かった所で護衛さんとはさよならです。

 建クンと一緒に手を振ってバイバイをします。

 飛鳥時代も現代も同じなのだと、妙な所で感心します。


 そして後宮の闈門へ向かおうとした所で……、男達に囲まれました。

 建クンは私の衣の袖をギュッと握り締めます。


 人数は五人。

 まだ鞘の中に収まっていますが、皆んな剣を持っています。

 よく見ると……一人は、闈門の攻防戦で実験台になっていた兵③の人です。

 ……という事は蘇我赤兄の手の者?


 先ずは落ち着きましょう。

 私は自分と建クンに向けて、不可視(ステルス)の光の玉を当てました。


 チューン(精神鎮静)


 そして周りを見渡します。

 逃げ場は……闈門の方向しかありません。


 相手の意図は分かりませんが、まずは牽制しましょう。


「先に進みたいのでおどきになってくれませんか?」


「スマねぇな。

 アンタを先に行かせるつもりが無いからこうなっているんだぜ」


「皇子様に何かがあれば一大事です。

 そこをお退きなさい!」


「皇子様は我々が責任を持って闈門までお連れしよう」


「見ず知らずの者どもの責任なんてないのと同じです。

 それとも有間様に続いて建皇子も亡き者にするもり?」


「さて、何の事かな?」


 このままでは建クンが危ないかも知れません。

 しかし黒幕がいるのならその黒幕が誰なのか知っておきたいというのもあります。

 何故ならこの先も同じ事が起こり得るからです。

 [歴史の修正力]は何が何でも建クンを亡き者にしようとするでしょう。

 その眼をプチプチと摘んでおかなければなりません。

 イメージ、イメージ、イメージ、……


 相手がにじり寄ってきたその瞬間、私は光の玉を五連続で発射しました。


 チューン! チューン! チューン! チューン! チューン! 


 光の玉を受けた五人はキョトンとしています。

 ……失敗か?


 しかしこちらへと歩こうとした瞬間、ふらふら〜とよろけて尻もちを付いてしまいました。

 ヨシッ!


 五人はまともに動けません。

 私は兵③の人に歩いて近づいて行きました。


「私の事、覚えている?」


「あぁ? ああ、覚え(おびょ)えている。

 えーっと、か……か……かぐやだったっけ?」


「そうよ、私はかぐや。

 一つ質問します。

 私達をどうするつもりだったの?」


「そりゃ……えーっと、あれ?

 ……そう、連れていくんだ」


「何処へ?」


蘇我(しょが)様へだ」


「そう、ありがとう。

 じゃあ、おやすみなさい」


 チューン(記憶消去!)


 光の玉で酒に酔っ払って酩酊状態を作り出すのに成功したみたいです。

 ただ少し加減を間違えたらしく、完全に出来上がってしまい、他の四人は完全に伸びてしまっております。

 とりあえず証拠隠滅しておきましょう。


 チューン(記憶消去)

 チューン(記憶消去)

 チューン(記憶消去)

 チューン(記憶消去)


 気絶したついでに所持品を調査(チェック)しておきましょう。


(がさごそ)


 ……なんか体育館の裏手でカツアゲしている不良になった気分です。

 ジャンプさせれば良かった?


 チャリーン チャリーン


「うぉらっ、金持ってんじゃねーか!」


 さて、目ぼしい物はありませんでしたが、貨幣代わりの銀の粒を数個と小袋を皆それぞれにもっていました。

 お金には困っていませんが、私達に危害を加えようとした慰謝料代わりに没収(ボッシュート)します。

 小袋の中身は後で確認しましょう。


 それにしましてもあ急性アルコール中毒の状態を作り出す光の玉は今後も使えそうです。

 真実の血清(アルコール)の力で自白させる事も出来ました。

 長時間放置するのは危険なので、急性アルコール中毒の症状は消し去っておきましょう。


 チューン(酔い覚まし)

 チューン(酔い覚まし)

 チューン(酔い覚まし)

 チューン(酔い覚まし)

 チューン(酔い覚まし)


 何が目的か分かりませんが、蘇我赤兄は建クンを亡き者にしようとした可能性がありそうです。

 アイツを飛鳥に居させるわけには参りません。

 帝がお帰りになりましたら何処かへ左遷する様、直訴しましょう。

 建クンが危うい目に遭った事を申し上げれば、否はないでしょう。


 しかしまさか宮の中で実力行使するとは思いませんでした。

 残念ですが、帝がお戻りになるまで、後宮に閉じ籠るしかありません。


 赤兄めぇーー!


 ◇◇◇◇◇


 そして長月(くがつ)、帝がお戻りになられました。

 戻ってくる早々、帝は建クン元へとやって来て、来るや否やガバッと抱きついて、涙を流されました。

 殆ど号泣でしたね。


 周りの者も帝がどれだけ建クンの事を心配していたかを知っているので、もらい泣きする人多数でした。

 私もその中の一人です。


「かぐやよ、よく頑張ってくれた。

 重ね重ね礼を言おう。

 ホンにありがとうよ」


「勿体なき言葉です。

 しかし建皇子がご無事なのは帝の建皇子様を想う気持ちが天に届いたからに他なりません。

 帝が果たされた事に比べますれば、些細な事です」


「そう言うな、かぐやよ。

 其方が居らなんだらどうなっていたかくらい容易に想像がつく。

 謝礼は何でもしよう。

 米でも布でも冠位でも、何なりと申すが良い」


「それでは采女には差し出がましいお願いになりますが、一つだけ。

 建皇子様をお守りするため、蘇我赤兄様を飛鳥の地以外へ赴任(させん)する事をお願い申し上げます。

 先月、皇子様と共に外出先から戻る途中、かの方の手下により拐かされそうになりました。

 それ以来、私と皇子様は闈門より外に出られなくなっております」


「そうか……。

 赤兄は葛城(中大兄皇子)のお気に入りじゃがどうにかしよう。

 そんな話を聞いては黙ってはおられぬ」


 三日後、蘇我赤兄は近江へと赴任となりました。

 これで当面の危機は回避できました。

 後宮の皆んなも蘇我赤兄(セクハラオヤジ)が追放になって、嬉しそうです。


真実の血清とは、つまり自白剤の事です。

自白剤の成分は判断を鈍らせて嘘をつきにくくする麻酔薬だったり睡眠剤で、お酒に含まれるエタノールも自白剤の一種に挙げられるみたいです。

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