【幕間】お転婆皇女の冒険・・・(2)
申し訳御座いません。
今回も役小角の出番はありませんでした。
やるやる詐欺、二度目です。
三度目がない様、ペースアップします。
改めて深く神妙に心からお詫び申し上げます。
m(_ _)m
とある皇女様の冒険譚です。
妾は皇女じゃ。
改めて即位する帝の長子である実父に呼ばれ、飛鳥へと参った。
実父はなんとも癖の強い男で、反りは合わなそうじゃ。
同じ母を持つ姉とも初めて会った。
姉の話によると、実父はかなり物騒な御方らしく、祖父を欺き、妾が五つの時に母上を死に至らしめたのも実父が原因だと教えてくれた。
飛鳥に来て三日目、もう里が恋しくなってきた。
讚良へ帰ってええかの?
◇◇◇◇◇
結局、姉から即位の儀が何処で何時催されるかを聞きそびれてしまった。
まあええじゃろ。
無理して出席したい訳でもない。
会場に入れなかったならばその足で帰れば良いのじゃ。
しかし妾の淡い期待は招待の木簡一枚で脆くも崩れ去った。
あの実父が気を効かせるなぞ考えられぬから、実父の部下か使いの者が動いたのであろう。
もしくは実父の横にいた壮年の男性か?
あの時は一言も言葉を発せなかったが、あれは誰じゃろ?
即位の儀は五日後、場所は……板葺宮とな?
京には疎いが板葺宮くらいは田舎者でも知っておる。
帝の住まう宮。
実父が政敵を討った舞台となった宮。
そして先日焼け落ちた宮じゃ。
つまり焼け跡で即位の儀を執り行うのか?
面白い。
誰の発案なのかは知らぬが、面白い事を考える者もおるものじゃ。
もしかしたらとんでもない仕掛けを準備しておるやも知れぬ。
嫌嫌であった即位の儀が急に楽しみになってきた。
とはいえ儀までの四日間は暇じゃ。
周辺を馬で駆ければ気持ちも晴れようが、この辺りは危険が多いそうじゃ。
飛鳥には知り合いも居らぬ。
いや……一人だけおった。
姉じゃ。
じゃがまた重っ苦しい話を聞かされそうじゃ。
やめやめ。
仕方がなく妾は市へと繰り出した。
京の様子や噂話を仕入れるのにはもってこいの場所じゃ。
飛鳥の市は賑やかな上に雑多で、一言で言えば騒しい。
ブラブラと歩いていると、彼方此方から声が掛かってくる。
「お嬢ちゃん、みていかねーか?」
「これ美味しいよ!」
「土産にどうだい?」
銀粒は持っておるが、無駄使いをするつもりはない。
しかし話を聞くのはタダじゃ。
声を掛けてきた露店の男の方へと行った。
「見せてくれや」
「お嬢ちゃん、これなんてどうだい?
染めた布は高貴な人に人気だ」
「高貴な人というのはこんな場末に来るんかい?」
「痛い、痛いなぁ。
お嬢ちゃんは高貴な方の娘さんじゃないのかい?」
「言うたであろう。
高貴な人はこの様な場末には来ぬと」
「にしちゃあ、身に付けているのも上等じゃねぇか」
「田舎から出てきたばかりじゃ。
奮発したのじゃよ」
「じゃあここでも奮発してくれよ」
「大きな火事があった後じゃ。
渋る客ばかりじゃろ?
買おて欲しいんなら、もっと敬んじゃ」
「お嬢ちゃん、キツイなぁ。
どうしろって言うんだ?」
「最近の京の様子を教えるのじゃ」
「別に面白い話なんてねーよ」
「面白いか面白くないかは妾が決める。
とっとと話すのじゃ。
でなければ他を当たるだけじゃ」
「話す話す話す、話すよぉ。
京の様子だろ?
そうだな……宮が焼け落ちたのは前の帝様の祟りだともっぱらの噂だ。
結構な数があの火事で死んだらしい」
「何か祟りに心当たりがあるのか?
それとも帝はところ構わず祟る狭量な男じゃったのか?」
「帝様がどの様な性格かなんて全然知らねぇ。
しかし相当に恨んでいたらしいって話だ。
特に皇太子様にはな」
皇太子という事は妾の実父か?
彼方此方で怨まれておるのお。
ある意味、人気者なのじゃな。
「そんなにか?」
「だってよ、帝様を一人難波に幽閉して、始末しちまたってもっぱらの噂だ。
それだけじゃねぇ。
帝様の皇后様も自分のモノにしちまったそうじゃねぇか。
皇后様ってぇのは皇太子様の実の妹だって言うのによ」
何ともはや、やりたい放題じゃのう。
もう親子の縁を切ろうか?
「もはや人でなしなのじゃな?」
「ああ、神をも恐れぬ御方だと、皆んな口にしてるぜ。
名前を口にする事すら躊躇うほど恐ろしいっていうヤツもいる」
「そうか、よう分かった。
じゃ、これでその布を五反頂こうか」
妾は持っている銀粒の中で一番小さい銀粒を手にとった。
「ちょ………待ってくれ。
五反は勘弁してくれ。
せめて三、三反でどうだ?」
「じゃ、間を取って四じゃな」
「勘弁してくれよ」
そう言いながら、男は布を四反差し出してきた。
済まぬの、人でなしの娘で。
その後もあちこちに聞いて回ったが、実父の評判は散々な様だった。
火事は天罰だったと言う者が殆どじゃった。
姉の言う事もまんざら嘘でも大袈裟でも無さそうじゃ。
即位する祖母は苦労しそうじゃな。
ところでどうして実父は自らが帝にならぬのじゃろ?
◇◇◇◇◇
そして即位の儀、当日。
よく晴れて気持ちの良い青空の下、即位の儀は執り行われた。
妾は新たな帝の孫という事で何も調べられず通された。
しかしその割には、席への案内もないし、好きにしてくれと言わんがばかりじゃ。
火災で焼け落ちた宮は柱一本も残さず綺麗に撤去され、広々としていた。
舞台と高い壇が設けられ、それがなければここで即位の儀をやるとは誰も信じまい。
儀は恙無く進み、祖母は斉明帝となった。
正しくは重祚し、皇祖母尊敬じゃった祖母は再び帝となったのじゃ。
儀の後の饗宴の宴の演し物もそれなりに面白く、悪くない儀じゃった。
しかし最後の演目のとある女子の登場で会場は騒然となった。
舞台に神が降りたのじゃ!
空から降りた光を放つそれは人と同じ姿となり、舞を舞ったのじゃった。
かぐやという采女に合わせて舞を舞うその姿は美しく、そして恐ろしい。
会場にいる者は全て度肝を抜かれておった。
青ざめ、震え、中には失神する者も居た。
妾も目の前で繰り広げられる光景に震えが止まらなんだ。
とてもこの世の光景とは思えぬ。
しかし……何かが引っ掛かるのじゃ。
何故じゃ?
……………そうか、視線じゃ!
かぐやという采女の視線は光る人を追っておらず、常にその先を見ているのじゃ。
つまりはこの神の使いと思しき光るものは、この采女に操られているという証なのじゃ。
その様な目で見ていると心の違和感が取れ、落ち着いて観られるようになってきた。
光るものはこの采女の意のままに動かされている事がはっきりと分かる。
そう考えてみると、帝となった祖母はこの采女の力を知った上で使っているのか?
この様な力を持つ女子が何者であるのか気になってきた。
かぐやというこの女子は一体何者なのか?
友人となり話をしたい。
行動を共にしてみたい。
正体を知りたい。
そして……この能力を持つ采女を自分のものにしたい、という気持ちが心の奥底に湧き上がってくるのを妾は感じた。
(つづきます)
本日は短くて申し訳御座いません。
プライベートで一山超えて、フラフラでした。
睡眠時間2時間はキツイです。
明日から五連休に入りますが、資格試験が次の日曜にあります。
でも投稿は休まず続けるつもりです。
今更勉強しても手遅れだし……。




