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尋問

久しぶりに『チューン!』が多い回です。

 真っ暗な建クンの寝室で突然の襲撃。

 一体何故?!

 いえ、理由なんてどうでもいい!

 先ずは目先にいる建クンを守らないとっ!

 敵は後方すぐ近くにいるはず。


 でもその前に私が動かなきゃ!

 頭部損傷治療の光の玉 チューン! ドクドク

 脳内損傷治療の光の玉 チューン! ポワワ〜ン

 頸椎損傷治療の光の玉 チューン! グキッ

 精神鎮静の光の玉 チューン! スンッ

 気つけ薬の光の玉 チューン! 臭っ!


 急激に意識がハッキリしてきました。

 体の自由が戻った感じもします。

 薄っすらと自分自身が光を放っているから、治療(ヒール)の効果が現れています。

 しかし敵はすぐそば。

 何はともあれ、とにかく反撃。


 喰らえ!!

 右脚脹脛の肉離れの痛みの光の玉、乱れ打ち!! チューン!×10


「痛っ! 痛い! 痛い! 痛い! 痛い〜!」


 この声は……?

 灯火代わりの光の玉を浮かせて敵を見ると、そこには痛みに転げ回る亀姫がいました。


「痛い〜! 痛い〜! 痛いよぉ〜!

 助けてっ! お願い〜! 助けて〜〜!」


 周りを見回しても誰も居ません。

 やはり私を殴った犯人は亀姫で間違いなさそうです。

 足元には凶器らしき大きな鉢が転がっています。

 血は付いていませんが……、つまりはアレですね。

 リビングにあった重いガラス製の灰皿を思わず手に取り、憎っくき(あいて)を殴ったら……という昭和のサスペンス劇場です。

 崖から落ちる被害者はいかにもスーツを着せた綿人形で、子供目線でも興醒めなアレです。


【天の声】今時あり得ないシチュエーションではあるが、何故令和のアラサーが知っているんだ?


 相手の戦闘力を削りましたが、外には鶴姫が居るはずです。

 警戒は緩めません。

 しかし亀姫がこれだけ泣き叫んでいるのに鶴姫は一向にやって来ません。

 人の気配すら感じられません。

 私はそーっと寝室の外に出てみると、薄暗い部屋には誰も居ないみたいです。


「痛い、痛い、痛い〜!」


 寝室からは亀姫の泣き叫ぶ声が聞こえてきます。

 煩いなぁ。

 このままでは建クンが起きてしまいます。

 仕方がなく、私は亀姫に幻痛解除の光の玉を当てました。


 チューン!


「痛い! 痛い! 痛い! 痛……あれ? 痛くない」


「こちらに来なさい。

 皇子様が起きてしまうから」


 私は何事も無かったかの様に亀姫に呼び掛けました。

 とにかく建皇子に何かあっては大変です。

 建クンから亀姫を引き離します。

 それに亀姫が何故あの様な凶行に及んだのかも不明ですので、徹底的に追求しなければ。


「早く来なさい」


「は……はぃ」


 亀姫はオズオズと寝室の外へ出てきました。

 さて、どうやって尋問しましょう?

 その前に鶴姫はどうしたんでしょう?

 多分、先ほどの凶行と無関係では無いでしょう。


「鶴さんは何処へ行ったのかご存知?」


「………」


 何も答えられない……というよりダンマリを決め込んだ様子です。


「もう一度聞きます。

 鶴さんは、何処へ行ったか、ご存知?」


「………」


 キツめに聞いてみましたが、やはり答えません。

 しょうがありません。

 正直、私も殴られて腹も立っています。

 手加減はいらないよね?

 敢えて眩しい光の玉を亀姫にぶつけました。


 チューン!

「痛ッ!」


 チューン!

「痛ッ!」


 チューン!

「痛ッ!」


 そりゃあ痛いでしょう。

 つい先ほど私が受けた頭への衝撃をイメージした光の玉です。

 イメージが新鮮なので、痛さも新鮮(フレッシュ)です。


 チューン!

「痛ッ!

 やだ!」


 チューン!

「痛ッ!

 お願い!」


 チューン!

「痛ッ!

 もう止めて!」


「もう一度だけ聞いてあげます。

 鶴さんは何処へ行ったかご存知?」」


「……分からない」


 チューン!

「痛ッ!

 本当に知らないの!

 お願い、止めて!」


 亀姫は名前の通り亀の様に丸まっています。

 光の玉は痛みを与えるだけで肉体的な損傷(ダメージ)を伴わないので、私としても遠慮なく尋問出来ます。


【天の声】それにこの話はR15だからな。くれぐれも良い子は真似しない様に。


「私を殴ったのは何故?」


 私は光の玉をふよふよと浮かべながら質問を重ねます。


「鶴姫が……讃岐国造の娘を殺せって言ったの」


 殺す!?

 貴女、私を殺すつもりだったの?

 自分が殺意の対象になっていた事にビックリです。

 そんなに嫌われていたの?

 一体私は何をしたの?


 いやいやいや、先ずは落ち着きましょう。

 チューン!


「何故私が殺されなきゃならないの?」


「讃岐国造の娘が居なくなれば、鶴姫の父さんが次の国造になる。

 そしたら私は庶民じゃ無くなる」


 理論が飛躍していない?

 訳が分かりません(ワケワカメ)


「どうして貴女が庶民で無くなるの?」


「鶴姫が言ったの。

 鶴姫の家が国造になって、うちが助評(こおりのすけ)になる。

 助評は庶民じゃ無いって」


 あー、何となく分かってきました。

 評造(こおりのみやっこ)であるお爺さんの跡取りの私を亡き者にして、讃岐評(さぬきこおり)を乗っ取ろうと考えたのね。

 ……という事は主犯は鶴姫?

 それとも鶴姫の父親?


 それを調べる前に、まずは実行犯の亀姫をどうにかしましょう。


「貴女が私を殺したら、鶴姫はどうするの?」


「後は私がどうにかするって言ってた」


 うーん、『どうにか』ねぇ。

 あの鶴姫が綿密な計画を立てるなんてあり得なさそう。

 多分、亀姫に全ての罪をおっ被せて終わりにするつもりだったのでしょう。

 亀姫は考えが足らなさそうだし。


「亀さん、貴女は鶴姫に騙されています」


「そんな事無い! 騙しているのは讃岐国造の娘の方」


 チューン!

「痛ッ!」


 この期に及んで、いつもの口調が出るってある意味スゴいわ。

 本気(マジ)で調教して差し上げましょうか?

 おーほっほっほっほ、……けふんけふん。


「それじゃこうしなさい。

 鶴姫には『見つかりそうになって失敗した。一人じゃ出来なから手伝って』と言いなさい」


「もう一回殴るの?」


 チューン!

「痛ッ!」


 亀姫、涙目です。


「もし二人で殺ろうって言ったら、鶴姫は貴女を騙していません。

 貴女一人で殺らせようとしたなら、鶴姫は貴女を騙しています。

 それでいい?」


「……分かった」


「もう一度言うわ。

『見つかりそうになって失敗した。一人じゃ出来なから手伝って』と、言うのよ」


「分かった」


 自分で言ってても物騒なセリフです。

 二人掛かりで来られたらどうしましょう?


「それでは私は寝室へ戻って寝ます」


 私はそう言い残して自分の寝台へと向かいました。

 もちろん寝ませんけど。


 暫くすると足音が聞こえてきました。

 防音性皆無の古代建築の室内は声がダダ漏れです。


「失敗した」(カメ)

「何やっているのよ」(ツル)

「一人じゃ無理。手伝って」(カメ)

「私は他にやる事があるの。貴女一人でやんなさい」(ツル)

「やる事って何?」(カメ)

「あれよ、色々あるの」(ツル)

「……分かった」(カメ)


 亀姫はそーっと私が寝ている(はずの)寝室へと入って来ました。

 手には大きな瓶を持っています。

 寝ているところをこれでやられたらタダじゃ済まないわ〜。


 瓶を持った亀姫は瓶を持ったままじっとしています。

 なかなか近付きません。


「どうしたの?

 それで私を殴るの?」


 亀姫はビクッとして、その場にへたり込んでしまいました。


「私は……騙されてた」


 やっと分かったみたいです。


「そうね。

 鶴姫は何も手を下さないで評造になるわ。

 亀さんは死罪、首を縛られて処刑されるわ。

 多分、貴女のお父様もね」


「!!!」


「雑司女の貴女が後宮の次官である私を殺せば、一族全員が責を負わされるわ。

 ここは帝がお住まいになる後宮だから、隠し事は出来ません。

 貴女が何と言い訳しても、貴女のお父様の関与を疑われるでしょう。

 だって私が死んで得をする人なんでしょ?」


「私はどうしたらいいのよ?」


「今はまだ私が黙っていれば済む段階だから、私に協力する事ね。

 そうすれば私を鉢で殴った事は不問にしてあげる」


「協力する。助けて!」


「その前にすることがあるでしょ?」


「?」


「貴女は私の温情で許されて、命が助かるの。

 貴女が私に本当に許しを乞うのなら何て言うの?」


「讃岐国造の娘、許して」


 本当に調教(きょういく)の必要がありそう。


「私の事は『かぐや様』と呼びなさい。

 曲がりなりにも私は貴女の(あるじ)なの。

 主に向かって『讃岐国造の娘』と呼ぶのは駄目。

 あと、もう国造という地位はもう無いの。

 今は評造と言うのよ」


「分かった。

 かぐや様、許して」


 とりあえず亀姫は陥落しました。

 敬語の勉強はおいおいするとして、残る鶴姫は………



 (つづきます)


治癒(ヒール)を使ったエンドレスな拷問をする事も考えてみましたが、絵面がキツいので没にしました。

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