チート幼女の愚痴
今回は台詞なし。
主人公の独り言(愚痴)だけです。
小正月ってご存知でしょうか?
私は高校生まで知りませんでした。
大学で専攻の授業で初めて知ったムダ知識でした。
何故に過去形?
今はその知識が必要だからです。
大正月(1月1日)と、小正月(1月15日)。
おみくじで「大吉」の特別感と、「小吉」のガッカリ感。
水洗トイレの「大」と「小」。
タイムズスクエアの巨大広告と、ユーチューバの縮小版サギ。
頭脳は大人なコ◯ン君と、いい歳して小人な逆コ◯ンさん。
どう見たって「小」の扱いはぞんざいな扱いの筈です。
ところが古の小正月に限って言えば、大正月に負けない盛り上がりを見せるのです。
太陰暦が大陸から日本に入ったため12月30日の大晦日は新月となりました。
しかし、それより以前は満月の日を1月1日としていたので日本古来の正月は小正月なのです。
なので小正月は、豊作祈願とか元服のお祝いとかのイベントが目白押しなのです。
ちなみに水洗トイレの「大」と「小」はお小水であるか否かでは無く、トイレットペーパーを使うか否かで使い分けるためのモノだそうです。
なので女性は必ず「大」で流します。
男性諸君はキチンと使い分けて下さい。
今はポットン式なので関係のない話ですが……。
現実逃避はここまでにして……。
元々私は小正月の宴で細やかな舞を披露するつもりでおりました。
しかし、1月元旦の宴の席でチートな舞を披露してしまった結果、私の舞が見たこともない素晴らしい舞だと、噂が噂を呼んでとんでもない事態に陥っているのです。
来客の予定者数が半端な数ではありません。
中央の豪族の方も何名かいらっしゃるみたいです。
忌部氏の全面バックアップのおかげで、楽隊さんが大挙して押し寄せてきます。
他の舞子さん達も大挙して押し寄せてきます。
氏子さん達も大挙して押し寄せてきました。
氏子さん達はただいま野外舞台の設置中です。
一月十四日から十六日までの開催予定です。
何コレ?
飛鳥時代に音楽フェスやるの?
私がトリ?
宴の名前が『かぐや姫、命名記念式典』
主催・讃岐国造
協賛・忌部氏一同
……みたいなノリになっています。
当日はどれだけお祝いの花輪が並ぶのでしょうか?
あぁ……『竹取物語』の話の中でもありました。
このシーン。
『秋田、なよ竹のかぐや姫とつけつ。
このほど三日うちあげ遊ぶ。
よろづの遊びをぞしける。
男はうけきらはず呼び集へて、いとかしこく遊ぶ。』
要するに、秋田様がかぐや姫と名前をつけたお祝いに3日間、詩歌管絃、誰それ構わず男共を呼んで盛大に管弦の遊びをした、という意味です。
私がまだ妙齢のお年頃でないとか微妙に違っていますが、物語を踏襲してしまっています。
いえ、踏襲するしないは今はいいです。
後で修正しますから。
問題は大規模な音楽フェスで幼女の私がステージに立つことです。
どんな有能なプロデューサーでもこんな無謀なフェスを成功に導くなんてムリです。
どれだけ課金すれば押しのアイドルを成功へ導くの?
いっそのこと舞子さん全員を舞台に上げて舞えば、私の不出来も1/48に見えるかも知れません。
握手会だったら頑張れるから。
お一人様7秒、剥がしの警備兵さんよろしく。
来客0人だったらSNSにあげます。
◇◇◇◇◇
宴に先立って、秋田様と萬田先生がやって参りました。
萬田先生は私がまだ舞のレパートリーが一つしか無い事をご存知なので、大規模フェスに合わせて私の振り付けをします。
他に他の舞子さん達の割り振り、奏者選定、順番、曲目など、振付師兼管絃部門のプロデューサーとしても活躍する予定です。
秋田様は詩歌部門の司会運営を担当されるとのこと。
私が天太玉命神社で仕出かしてしまった結果、私との関係が深く、師匠でもある秋田様と萬田先生の株が爆上がりしてしまったそうです。
もうこうなったら私は秋田様と萬田先生に頼るしか残された手はありませんので全面的に協力します。
正直に言えば、私の舞なんてどうでもいい位に盛り上げて、どさくさに紛れて舞のご披露を終わらせてしまおうという腹づもりです。
お衣装も縫部さんのところの部民さん総動員しました。
私は舞のレパートリーをあと二つ増やすため頑張ります。
宴は3日あるので一日一差しの予定です。
扇子は急遽300セット用意しました。
舞子さん用とお土産用、そして景品用です。
詩や歌を書く木札は三千枚用意しました。
猪名部さんごめんなさい。
お客様が寝泊まりする仮設住宅を10棟と簡易トイレ5つ追加です。
宴会料理担当はお婆さん。
家人さんを総動員して保存のきくお料理から作りだめしております。
広いはずの食品庫は既に満杯で、空いている蔵を使って保存しています。
冬だから出来る事ですね。
他にも宴に必要なお酒も蔵で保管しているので、蔵の一つは酒蔵状態です。
お爺さんはATMです。
宴を主催した上に私に舞を舞う事を提案した張本人なので諦めて下さい。
必要な資材をかき集めるためのお金をじゃんじゃん吐き出していきます。
とはいえ、無尽蔵に金を吐き出すのは問題なので、家人の源蔵さんにお願いして竹簡を用意しました。
現代での知識を元に経費の勘定科目ごとに分類できる様、竹簡に記入する場所を決めて、関係者に渡しました。
必要な資材の発注の時に、必要事項を記入した竹簡をお爺さんに渡して金と交換します。
その金を元手に、発注者は資材を手配する仕組みです。
そしてお爺さんの元に集まった竹簡を勘定科目別に分類します。
竹簡の四隅に小さな穴が空いているので、糸で結べば一枚の出納帳が出来上がります。
現代ならもっと細々とチェックするところですが、そんな事をしていたら発注する人の負担が増してしまうので大目に見ています。
ですが忌部氏の方々は皆さん真面目で『おや?』と思う記載が一切ありません。
本当に素晴らしい職業意識を持った方々です。
一応、参加者は心付けを持ってくるのが礼儀となっておりますが、多分赤字でしょう。
持ってきた品物をランク付して、ステージの観覧席をランク順に決定する様に提案しました。
偉い方にはプライドがありますので、刺激して差し上げましょう。
警備が全然足らないので近隣にヘルプして、それでも足らない分は領民に上下白のそれらしい服を着せて特訓中です。
自警団の団長さんが教官です。
団員さんが腰にぶら下げる得物がナタでは格好がつかないので剣を支給しました。
後々の治安維持に役立てるための先行投資ですね。
舞以外に盛り上がりたいという事で、ビンゴ大会でもやってみたかったのですが、流石に日にちも足りないのでボツ。
代わりにくじ引き大会をする事にしました。
景品は先ほどの扇子です。
扇子の生産が増えれば領地も潤います。
見本をばら撒くのも一種の先行投資です。
装飾を施した高級感溢れる扇子を舞子さんと私が使って、購買意欲を刺激しましょう。
宴の〆《しめ》は主役の私が担当するそうです。
「本日はありがとうございました。夜の帰り道は暗いですのでお足元に十分お気を付けてお帰り下さい」
……って言う役です。
現代にいた時にメールで書いていた挨拶文はネット検索で借用ったり、生成AIにおまかせでした。
私の頭の中のデータベースの貧弱さに情け無い気持ちになります。
裏方は楽しいですが、表舞台はつくづく性に合いません。
なんてツイていないんだ。
しくしくしくしくしく……
いつも有難うございます。
ブクマがつく度にモチベが上がります。
おかげ様で少し書き溜めに余裕が出来ました。
宴では新キャラに加えて、ストーリーが少しだけ動きますので、気合を入れて執筆中です。
それと「大」と「小」の例えですが、もっと良いアイディアがありましたら教えて下さい。