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チート幼女 vs 山賊

今回もチューン!が多いです。

 無事(?)に奉納の舞いを終え、私達は讃岐への帰路につきました。


 天太玉命神社あめふとたまのみことじんじゃを出立する時は氏上様、氏子さん達が総出でお見送りしてくれました。

 秋田様も萬田先生も氏上様、側近さんに並んで最前列でお見送りしてくれました。

 どうやら私のせいで二人が冷遇されたり肩身の狭い思いをしてはいない様子なので、ホッと(ペッタンコな)胸を撫で下ろしました。

 皆さんが手を振る様子からは、私に対して敵意や反感らしき所は見られず、とても友好的です。

 ……という事で、これからも書物しゅみのほんを宜しく♪


 昨夜のことを知らない家人の源蔵さんと傘持ちのお姉さん、そして護衛の人達はこの様子に戸惑っているみたいです。

 何事かと聞かれたので「ちち様、皆に尊敬されてる」と答えておきました。

 まさか、幼女の私が氏上様をあの手この手で脅して追い詰めて屈服どげざさせた、なんて言えません。

 非常事態だったとは言え、昨夜のことは自分でもやり過ぎたと結構落ち込んでいて、その度に光の玉をチュンチュンと当ててました。

 ホント、性格キャラに合わないことはするべきではありませんね。


【天の声】………


 しかし思い返せば、今回の一件では新技のステルスの光の玉がかなりの効果をあげましたが、最終的には頭ピッカリの光の玉で脅しました。

 こればかりやっていると、そのうちに『ピカ姫』なんて仇名ニックネームを付けられそうです。

 いえ……、もしかしたら領民には既にそう呼ばれているかも知れません。

 ピカ姫にならないためにも、この先の為にも、新技を考えてみようと思うようになりました。


 ◇◇◇◇◇


 あれこれと考え事をしているうちに、行程の2/3進んできました。

 ここから先の道は細くなっていて、あまり整備されていません。

 まだまだ未熟な身体は転び易いので気をつけながら進みます。


 隣にいる家人の源蔵さんに「転ばないよう、手をつないで」とお願いしました。

 身分を考えると貧民の出である源蔵さんが、幼女とは言え姫と呼ばれる私の手を取るのは問題となりそうですが、性格の良い『フレ姫』を目指す私としては領民の人達と仲良くしていきたいと考えています。

 やはり味方は多い方が安心ですね。

 源蔵さんに手を引かれて暫く進んでいくと、突然何かが飛んできました。


 矢です!

 賊です!


「姫様、こちらへ!」


 源蔵さんは私を抱えると、すぐさま護衛の人達に護られている真ん中へ入って行きました。

 傘持ちのお姉さんも一緒に付いてきます。

 護衛は三人。対して木の陰に隠れていた賊は十数人、弓を構えてこちらを狙っているのもいます。


「大人しく身につけている持ち物を置いて行ってくれよ。命が惜しければな。

 へへへへ」


 テンプレな山賊の首領のセリフです。

 テンプレ通りだとしたら、無事に返すつもりもないでしょう。

 特に年若い女性の傘持ちのお姉さんが一番危ないです。


 私は咄嗟に賊の首領の顔に扇子を向けて、赤外線ステルスの光の玉を飛ばしました。

 そして着弾寸前に光の色を変え、真っ白で眩しい光の玉が突如現れたかの様に見せかけて、首領にぶつけました。


 チュドーン!


 光の玉を誰がどうやって出したのかは分からなかったと思います。

 不意打ちだったから、至近距離に突然目の前に現れた光の玉で目が眩らんだはず。

 こちらの護衛さん達も突然の出来事に理解不能となっている様子ですが、護衛さんも他の人達も私の光の玉を見た事があるから、驚きはするけど思考停止する程では無いはず。


「今のうちに逃げるんじゃ!」


 お爺さんが皆に指示します。

 源蔵さんは私をおぶって走り出します。

 三人の護衛さん達は、お爺さんお婆さんの護衛が一人、私と源蔵さんとお姉さんの護衛が一人、そして殿しんがり、と役割分担をして並走します。


 突然の光の玉の出現で目眩しをしたとは言え、いつまでもフリーズしてくれる程、賊はお人好しでは無いみたいで、後方から声や音が聞こえてきました。

 こちらは壮年のお爺さんがお婆さんがいて、足手まといの幼女もいます。

 追いつかれるのは時間の問題です。


 ヒュン! ヒュン!

 弓矢が飛んできました。


 私は源蔵さんの背中にしがみ付きながら頭をフル回転させます。

 この様な場面で頭ピッカリの光の玉は効果はありません。

 現に追ってくる賊の首領は頭がピッカリになったのに構わずに追ってきているのですから。

 しかし自分が生粋の回復術師ヒーラーである事を考えると、人体の細胞組織に働きかける事ならば出来そうな気がします。


「うっ!」


 殿しんがりの護衛さんの肩に矢が命中し、倒れました。

 ならば……と、私は出所が私である事がバレるのも構わずに、扇子を向けて眩しい光の玉を20メートルくらい離れて追ってくる賊目掛けて飛ばしました。


 チューン!

 見事命中!


 弓を持っている賊が転びました。そして大声をあげています。


「うがぁぁぁ! 痛ぇ! 痛ぇ! 痛ぇ! 痛ぇ!」


 もんどり打って暴れ回っています。

 どうやら上手くいったみたいです。


「源蔵さん、止まって」


「危ないです。追いつかれたら命が危ういです!」


「源蔵、止まりなさい!」


 私はあえて厳しい口調で命令しました。

 普段の私を知っている源蔵さんは聞いたことのない私の大声に驚いて止まりました。

 弓を持った賊が転んだのにも全く気に留めずに走ってくる賊たちに向けて、私は1ダースの光の玉を飛ばしました。


 チューン! チューン! チューン!チューン! チューン! チューン!チューン! チューン! チューン!チューン! チューン! チューン!


 狙いを定めて撃ったので、全弾命中しました。

 一個余ったので頭ピッカリの首領に2個当てました。

 賊たちは転んで、倒れ込んで、下腹を抱えて苦しみ出しました。

 中には胃の中の物を吐いている者もいます。

 その様子を見たお爺さんと護衛さん達は足を止め、戻って来ました。


「む……かぐやよ。これはどうゆう事じゃ?」


 お爺さんが私に問いかけてきます。


「お腹が痛くなる光を当てた」


 賊の一人が痛みを振り退けて飛び掛かろうとしたので、再び光の玉を当てました。


 チューン!

 するとその賊は再び下腹を抱えて蹲りました。


「お……おのれ、もののけめ!」


 頭がピッカリの首領が光の玉を二発喰らってもなお剣を持って斬りかかろうとしてきました。

 三たび光の玉を当てました。


 チューン!


 するとその首領はすっ転んで左足を抱えてもんどり打って苦しそうにしています。


「ぐぁあ! はぁはぁはぁ、 うっ! くっ!」


 屈強そうな首領ですら耐えられないくらい、痛くて堪らなさそうです。

 ということで他の賊に同じ光の玉を撃ち込みました。


 チューン! チューン! チューン!チューン! チューン! チューン!チューン! チューン! チューン! チューン!


 賊の全員が足を抱えて七転八倒大会です。騒がしいったらありはしません。


【天の声】え……エグい。


「頭ピッカリの首領を縛り上げて」


 護衛の隊長さんにお願いしました。

 蹲っている首領を隊長さんが縛り上げて、身動き取れない様にしてから、私は首領に光の玉を飛ばしました。

 苦悶の表情だった首領は、突然の痛みからの解放にきょとんとした様子です。

 もう一人の護衛さんは息も絶え絶えになった他の賊達を一人一人縛り上げていきます。


「ちち様、あとをお願い」


 私は矢が刺さった護衛さんに近づいて、治療をします。

 徴税の時に剣を持って戦った自警団の団長さんです。

 まず麻酔をイメージした光の玉を当ててから、源蔵さんが護衛さんに刺さった矢を抜きます。

 そして傷の治療と消毒のイメージを乗せた光の玉で完治しました。


「私達を護ってくれて、ありがと」


 これは本心からの言葉です。

 まさに命懸けで私達を逃がそうと殿しんがりを務めたのですから。


「姫様に何事もなく何よりです。

 むしろ我々が姫様に助けて頂きました。

 誠に有り難き事に御座います」


「ううん、護ってくれたから反撃できた。

 私が無事だったのはあなたのおかげ」


「……うっ、……くっ」


 大人が幼女に涙を流す姿を見られるのは恥ずかしいでしょうから、席を外します。


「かぐやよ、一体何をしたのじゃ?」


 お爺さんは何が起こったのか理解できていない様子です。

 無理もありません。賊は何一つ傷ついていないのに戦闘不能になったのだから。


「お腹と足が痛くなる。それだけ。怪我はしていない」


「かぐやはその様な技もできるのか?」


「たった今思いついた。ぶっつけ本番」


 私は縛り上げられて身動きできなくなった賊全員に向けて光の玉を当てました。

 チューン! チューン! チューン! チューン! チューン! チューン!

 チューン! チューン! チューン! チューン! チューン!


 賊はあれ程痛かった激痛が嘘のように無くなって、呆気に取られています。


「はは様、大丈夫? 怪我していない?」


 冬だというのに汗だくのお婆さんに問いかけました。


「私は大丈夫だよ。かぐやこそ大丈夫かい? 怪我はしていない?

 また倒れそうになっていない? 大丈夫かい?」


「大丈夫。全然、全く何とも無い。

 ちち様、賊はどうする?」


「本来ならばこの場で打ち首じゃ。

 国造くにのみやっこへの叛逆でもあるからの。

 じゃが、かぐやの前でその様な事はしたく無い。

 屋敷まであと少しじゃから、引っ立てて投獄するつもりじゃ」


「生かしたまま余罪を追求するべき。拠点アジトに仲間がいるかも知れない。

 聞けば答えると思う。

 その後、奴婢どれいとして開墾の仕事をさせるのがいいと思う。

 今から犯罪者の印付ける」


「どうやって、じゃ?」


「こうやって」


 私は光の玉を首領を除く賊の全員に撃ちました。

 チューン! チューン! チューン! チューン! チューン! チューン!

 チューン! チューン! チューン! チューン! チューン!


 全員、みるみるうちに毛が抜けていきます。

 賊どもは縛り上げられているので頭を触りたくても触れられません。

 髪の毛がハラリハラリとハゲ散らかっていくのを茫然と受け入れるしかありません。

 自分の頭は見えないけど、落ちていく自分の髪、そして仲間達がツルピカになっていく姿を見て、今自分の頭に起こっている惨状を知る、という精神的制裁いんしつなしかえしです。

 中には頭を動かさずに髪の毛の落下を最小限にしようとあがなっている賊もいましたが、既に毛根と髪の毛は一本残らずお別れしておりますので、全てムダな足掻きです。


 ◇◇◇◇◇


 さて、謎解きのお時間です。

 私が賊に何をしたのでしょうか?


 私の光の玉で治療ヒールする時、光の玉に込めるイメージが重要である事はこれまでの経験でも明らかです。

 幸か不幸か、私にはどうでもいい事ですが、OL時代の職場には頭がピッカリしている方々が片手では数えきれないくらいおりましたので、彼らの頭をイメージしながら光の玉を撃つと見事にピッカリとなる訳です。

 しかし相手を怪我とか病気にするために、患部の詳細をイメージしようとしても精神こころが拒否するので難しいのです。グロいのは普通の女子並みに苦手なのです。

 しかし私のチートが人体の細胞組織に働きかけられるとしたら、神経細胞への干渉も可能なはずです。なので「痛み」だけをイメージしました。

 具体的には自分自身が経験した痛み、もっと具体的に言えば生理痛の痛みです。

 お腹が痛い? そんな生優しいものではありません。

 私が現代にいる時はズーンと重痛くて、指の先まで活動を阻害するレベルにキツいのです。にも関わらず、課長はいつもと同じ仕事を課すのです。

 この辛さを知らない男達に経験させてやりたい、と思った事は十回や二十回ではありません。

 それが出来る様になったのは一種の快感ですね。

 もし身近にそんな体験をさせてやりたい男性バカヤロがいる方は私にご連絡頂きたいです。


 そして屈強な首領が耐えられなかった足の痛みというのは、私がここに来る前の年にした怪我の痛みです。

 私が荷運びをしている時、階段を踏み外しそうになった瞬間、転びたくない一心でグッと踏ん張りました。そして自分の体内から「ブチっ」という音がして、私は一歩も歩けなくなりました。

 診察の結果、左ふくらはぎの肉離れでした。

 あの時の痛みを賊に与えたわけですから、歩けるはずもありません。

 しかも実際に怪我をさせているのでは無いので良心の呵責がない分、遠慮なく打てるというメリットがあります。


 無茶な物質創造アルケミストをしていませんので、私自身への負担も少ないだろうと思います。今の自分の体調を鑑みても、その予想は間違っていなさそうです。

 賊が私達にしようとした事を考えると甘々な報復ですが、残酷なのが苦手な女子わたしにはこれくらいが丁度いいかもしれませんね。


【天の声】

 かぐや本人は男性が経験したことの無い生理痛の痛みで賊が行動不能になったと思っているが、実はその痛みが男の生殖器である急所に襲い掛かったのである。

 それがどれだけの苦悶を引き起こすのか?

 女には女にしか分からない痛みがあるように、男には男にしか分からない痛みがある事を知らぬかぐやであった。

【天の声おわり】


 こうして私達は、忌部氏から頂いたお土産と頭がピッカリの奴婢12人、そして押収した武器を持って讃岐おうちへと帰りました。

 お婆さんと一緒に湯船に浸かり、旅の疲れを癒しながら思いました。


 やっぱ我が家が一番ですね。



【追伸】

 後日、賊達は根城アジトの場所を白状ゲロしました。賊に女の子の気持ちを分けてあげると素直に話してくれました。

 めでたしめでたし。


ピカッ!

………おっと、誰かが来たようだ。

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