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秘技・知らんぷり!✧キラーン!!

チートの一端が発現しました。


「竹林で7つ位の女の子を見つけたのじゃが、心当たりのある者はおらぬか?」


 翌日、私の身元を調べるためお爺さんが方方へ聞いたみたいです。

 ですが、千四百年後の日本まで調べ上げるのはきっとムリでしょう。


「ふむ、おらぬか。仕方がない。ワシらで育てるとしようかの」


 そして私は身元不明の幼女としてお爺さんお婆さんに引き取られました。

 早っ!

 それでも身元が不確かなのにお爺さんお婆さんは私をとても大切にしてくれました。

 やはりいい人達だったみたいです。


 ◇◇◇◇◇


「いただきます」


「何を言っているのか分からんが、たぁんとお上がりなさい」


 お爺さんお婆さんの家で、私が食住が保証された生活を送れることはとても有難いことだと知っています。

 一日二食は、多分この時代にしては恵まれたものだと思います。

 一汁一菜と言うのでしょうか?

 玄米のご飯にお味噌汁、そしておかずが一品。

 魚とか山菜であることが多いですね。

 これを質素と思うのは現代社会が恵まれ過ぎているせいですね。


 ……きっと。


 ◇◇◇◇◇◇


「娘や、今から竹林へ行くんじゃ。付いて来るのかい?」


「はい、……おじ様」


「娘や、もうそなたはウチの子として暮らすんじゃ。

 ”おじ様”なんて寂しいことは言わず、わしを父と思ってくれ」


「はい、おじ……ちち様」


「おぉー、なんて可愛いらしい子じゃ」


「私にも呼んでおくれ」


「はい、……はは様」


 予想と違うと言えば、お爺さんとお婆さん。

 絵本ではヨボヨボと杖をついて歩いていて、オムツすらしていそうな印象イメージすらあります。

 ですが目の前にいるお爺さんは、子供の目からしてもお爺さん&お婆さんというよりおじサンとおばサンです。

 年齢は40歳から50歳くらいでしょうか?

 残念ながらおじ様という程のダンディーさはございませんので私の中ではおじサンです。


 ちなみに私の中の序列は、

 おじ“ちゃん”<おじ“サン”<おじ“様”<おじ“ちゃま”(最上級)

 ……となっております。


 竹林にまで付いて来た理由は、黄金を探すためです。

 『竹取物語げんさく』ではお爺さんが節間(竹の節と節の間)から黄金が見つけたとありました。

 そして不労働収入を得たお爺さんは成金として身を立てる訳です。

 この時代には拾得物の取り扱いについての法律は無いみたいで、拾ったら拾った人の物なのですね。

 もっとも私自身が拾得物みたいなモノですから。


 昼でも薄暗い竹林付近を見回しても、黄金の匂いはしません。

 昔持っていた18金メッキのネックレスは嘘の匂いがしていましたのに……。


 いけない、いけない、今の私は幼女でした。

 埒が明かないので「えいっ」と光の玉を浮かび上がらせ、薄暗い竹林の中を照らしました。


「なんじゃこりゃー!」


 光の玉を見たお爺さんの絶叫が竹林に響き渡りました。

 いけない、言うのを忘れてました。(てへっ!)


「娘よ……この光は何なんじゃ?

 娘の力か?

 神のお導きか?

 よもや……もののけの仕業か!?」


 もののけ扱いは困ります。

 姫は姫でも方向性がまるっきり違いますもの。

 とはいえ、何と言って説明しましょう?


 神様が無関係でも無さそうですし、私の力と言えば私の力ですがつい先程出来るようになったばかりで、効果、効用、使用上の注意等を存じ上げておりません。

 とてもではありませんが、説明出来る自信がありません。

 かくなる上は……


「分かんない」


 秘技・知らんぷり! ✧キラーン!!


 このままではお爺さんの混乱が続いてしまいそうなので、光の玉を処分しましょう。

 そうしましょう。

 超絶格闘漫画の人気ナンバーワン悪役キャラクターの様に上に向けた人差し指を前方へ倒し、宙に浮いている光の玉をピュン!と発射させました。

 そして光の玉は竹林のとある竹に向かって飛んでいき、事もあろうかその竹を破壊してしまいました。


 (ちゅどーん!)


 隣にいるお爺さんは口をあんぐりと開け、ボーゼンとしております。

 どう取り繕うかと頭を悩ませていると、折れた竹からキラリと光る物が見えます。


「ちち様、あれ」


 お爺さんの意識を逸らそうと、私はキラキラ光る物を指差しました。

 お爺さんが恐る恐る近づいてみると、中に砂金の粒が入った竹がもわもわと煙を立ち上らせておりました。


「おぉぉ、娘よ。これはわしへ下賜かしされたものかの?」


 お爺さんは震える声で幼い(中身は違うけど)私に聞いてきます。

 ここははっきり言った方が良いでしょう。


「そう、ちち様におかし」


 ぱあぁ、と満面の笑みになったお爺さんは竹ごと砂金を回収しました。


「他の竹にも有るのかのう」


 出た!ツッパリの欲の皮。

 昔話の定番ですね。

 過ぎたる欲は身を滅ぼすのですわよ、とここはビシッと言っておかなければなりません。


「ちち様、一日一回」


「!? そうか……そうじゃな。娘が言うのならそうなのじゃろう」


 私の言いたいことは通じたらしく、お爺さんは私の手を引いで家路につきました。


【天の声】

 お爺さんには『私を養うのなら一日一回金をあげる』と思われているとは露知らず、『次はもっと上手に光の玉をぶつけましょう。竹以外でも練習もしてみたいわね』と呑気な事を考えているかぐや(仮)であった。


 ◇◇◇◇◇


 竹林で黄金を発見して以来、少しずつ食事の品が向上してきて、今日の夕餉では見た目がお味噌の欠片のような物が振る舞われました。

 何でも『』と言うみたいです。

 そ、そ、そ……さとう、塩、酢、醤油、ソイソース、だったかしら?

 乳臭い香りがしますのでたぶん乳製品だと思います。

 味覚が鋭敏な子供の舌はこれがとても好みだったようで、ものすごく気に入りました。

(※『』は乳を煮詰めた乳製品で、現代では『古代チーズ』として各地で発売されております)


「はは様、おかわり」


「ほーこれが気に入ったのかい?

 じい様が手分けして手に入れたものだから今日はこれまでだけど、また今度出してあげるからね」


 うーん、貴重な栄養源だけど、性格の良い悪役令姫かぐやひめを目指す私としては、養母に我儘娘と思われてしまうのは減点だわ。

 ここは社会人スキルを駆使して円満な収拾を図らなくては。


「はは様、ありがと。嬉しい」

 (意訳:お母様、お気遣いとても感謝しております。この様な多分のご配慮を頂き、誠にありがとうございます。)


「ん~、なんて良い娘なんでしょうねぇ。楽しみにしておいで」


 社会人スキルはいつの時代にも有効みたいです。


()』は乳を煮詰めた乳製品で、古代チーズとして各地で発売されております。

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