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五人目の求婚者は突っ込みどころ満載のダメ男

風邪が治りません。

抗体検査の結果、コロナは陰性でしたが頭が痛くて堪りません。

本日も昨日と同様、修正は回復後にします。

(4.11.23:40修正)


光の玉(チート)プリーズ。

 大伴御幸おおとものみゆき


 竹取物語(げんさく)では『大納言・大伴御行(おおとものみゆき)』と一字違いです。

 モノマネ芸人がネタ元の名前を借りて一文字違いの芸名を付けていた方を見た様な気がします。

 でも大納言・大伴御行は芸人さんではありません。

 ダメ上司です。

 ダメ男です。

 ダメ人間です。


 記憶にある限りの竹取物語(げんさく)を記入した覚書(メモ)を読み返さないと細部は思い出せませんが、内容はハッキリと覚えています。

 確か大伴御行への求婚の条件として『龍の頸の珠』を要求しました。

 この世の何処かで光っている7つの玉ではありません。

 個体龍が持っている龍の玉(ドラゴンボール)です。

 一般的に思い浮かぶ龍は手(前足?)に玉を持っている想像図が多いのですが、猫ちゃんの鈴みたいに玉を顎の下にくっ付けている龍種があるみたいです。

 知性と神格を持った神獣である龍からその玉を取り上げろという悪役令姫。

 怪盗どころか、押し込み強盗ですね。

 それを強要するかぐや姫、悪いのは性格だけではない様な気がします。

 ……自分で言って何ですが。


 それを聞いた大伴御行は、家臣達に

「唐や天竺ではなくこの国の何処かに龍は居るのだ。簡単だろ?」

 と龍の頸の珠を取って来るよう命じました。


 うん、出来ない上司の典型的なパターンですね。

 部下の仕事の難易度を測れない上司と言うのは得てして楽な方向へと考えがちです。

 総務の仕事の場合ですと、前準備と後始末にどれだけ掛かるのかを勘定しません。

 現場ですと一回も失敗しないで製品開発が出来上がる様なスケジュールを押し付けた上、そのレベルが世間では高難易度とされている事を全然知らないで言っている、と同期が愚痴っていました。

 タチの悪い事に、こうゆう無能な上司に限って

 『オレは皆んなの話をきちんと聞くのだ』と言います。

 残念な事に“聞く事”と“聞き入れる事”とはまるで別という事に、全く気がついていないのです。


 話は逸れましたが、ダメ上司の御行クンは家臣の進言に全く耳を貸さず

「有能な家臣とは主君の命を命懸けで果たそうとするものだ」

 とマジ現代でも居そうなダメ上司ぶりを発揮します。

 しかし自分は有能な上司であると信じて疑わない御行クンは、家臣達に道中の食料や銭を十分に持たせて、

「私は飲食や行動を慎んで心身を清浄にし、神仏に祈りながらお前達を待っている。

 玉を手に入れない限りは帰ってくるな」

 と鬼の命令をしました。

 当然ですが、素直に龍探しに出る者なぞ居ません。

 口々にダメ上司の非難をしながら、家に籠ったり、適当にブラブラ漫遊したりしました。


 御行クンのダメダメぶりは更に加速して、美しいかぐや姫を迎えるためにと新しい屋敷を新築しました。

 漆塗りの壁に畳縁(たたみべり)の様な屋根を葺いて、内装に錦絵などを描いてゴテゴテと飾りました。

 そして妙な方向に行動力がある御行クンは、事もあろうに妻妾(さいしょう)達と全員離縁してしまいます。

 龍の玉(ドラゴンボール)を得られる可能性を考えればどう考えても割に合わない行動です。

 ハッキリ言いましょう。

 お馬鹿さんです。


 しかしいくら待てども『玉取ったどー!』の連絡は届きません。

 誰も真面目に探していませんから当然ですね。

 焦れた御行クンは先の約束を破って、見窄らしい格好をして自ら現地調査をしましたが、龍の玉を探す話なんて誰も知りません。


 ここにも突っ込みポイントがあるのですが、龍の玉探しをする舟の噂を知らない事を、部下のサボタージュを疑わずに、知らないと言った船主の無知のせいだと決めつけています。

 自分の信じた事しか信じないという、どこまでも幸せな人なのです。


 そして思い込みの激しい御行クンは、

「よし、オレ様の弓の腕なら一発だ!」

 と自ら舟に乗って海へと出たのでした。


 御行クンが乗船した舟の性能は凄まじく、あちこち探している間に筑紫国までたどり着きました。

 すると俄かに海が荒れ始めて次第に暗くなり、強風と大波に舟は弄ばれました。

 激しい(いかづち)が襲いかかり、このままでは沈没するか雷にやられるかという瀬戸際です。

 船頭から御行クンが龍に詫びて許しを乞うたら如何かと言われ、御行クンはそれは良い考え(ナイスアイディア)だと言い、実行しました。


「龍様、ごめんなさい。

 龍を殺そうとした愚かな僕を許して下さい。

 もう二度とこんな事はしません」

 と立って座って、座って立って、を千回ばかり繰り返していくとだんだんと天気が回復して、順風が吹き始めました。

 激しく揺れる舟の上で千回もスクワットが出来るなんてある意味すごいです。

 インサイドボクサー向きですね。


 3、4日後、舟は播磨明石に漂着しましたが、当の御行クンは腹が膨れて両目が腫れ上がってしまい動けません。

 仕方がなく国府の手によって屋敷にと担がれ運ばれました。

 その報を聞いた家臣達はお咎めはないだろうと戻ってきたのですが、その時の御行クンの言葉は1400年経った現代にまで語り継がれるものでした。


「お前達、良くぞ龍の玉を持って帰らなかった。

 龍は雷を操る生き物だ。

 もし龍の玉を取ろうとしたら大勢が殺されていたであろう。

 もし龍を捕えようとしたら私の命は無かったであろう」


 うん、お馬鹿さん決定!

 人心掌握の素質ゼロです。

 リスク管理の考えが皆無です。

 まず調べてから行動しようよ。

 まず考えてから実行しようよ。

 もっと人の話を聞こうよ。


 そして怒りに任せた御行クンの言葉はこう締め括られます。


「あれはかぐや姫という大盗賊がオレ様を殺そうとしたに違いない。

 もうアイツの家の近くにも寄らないぞ。

 お前達もそうしろ!」


 まあ、何と言いますか……この部分だけは正解かも知れません。

 例えてみれば、私・かぐやがド◯ンジョ様で御行クンがボ◯ッキーみたいな?

 そんな感じですかね?

 あっちの方は最後の最後までボ◯ッキーはド◯ンジョ様に従いましたが、御行クンはそうでは無かった様です。

 それを聞いた家臣達がどう思ったかは分かりませんが、離縁した正室は大笑いして、世間の目はとても冷たかったそうです。


 (すもも)の様に腫れ上がった目を揶揄されて

「大納言様は龍の玉を取ったのか?」

「いや、おメメに(すもも)の様な玉をくっ付けて帰ってきた」

「ああ、食えたもんじゃないな」

 と噂されたそうです。

「ああ、食えたもんじゃないな」つまり「ああ、たべがた」が、「あなたへがた」つまり「とても耐え難い」という語源になったという昔話の定番で締めくくられております。


 こうして妙な方向へと暴走してた勘違い男は、財産も人望も何もかもを失ってしまった訳です。

 ……元々人望があったかは分かりませんが。


 ◇◇◇◇◇


 さて、竹取物語(げんさく)随一のダメ上司……になるかも知れない大伴御幸クンが目の前にいます。

 大納言でもありません。

 まだ元服もしていない子供ですから。

 そもそもこの時代には大納言という役職がありませんから。


 しかし、ほんのりと漂うボンボン感。

 これまでの求婚者候補の四人はいずれも予想に反して良い人、良い子ばかりでしたが、いよいよ原作通り、難あり性格(キャラ)がやってきたのか?

 まるっと油断していた私は、御幸クンを前に暫し固まってしまいました。



竹取物語の中で、五人の貴公子のエピソードには明らかな差があります。

大納言・大伴御行の龍の玉のエピソードはとても場面設定などが詳細に描かれた構成であるのに対して、例えば石作皇子(多治比嶋)の仏の御石の鉢のエピソードはメチャ簡素です。

もしかしたら、後に付け足されて「五人の求婚者」に変更された可能性があるかも? という指摘がされています。

何故五人にしたのかというと、当時の自然界の考え方である五行思想(木・火・土・金・水)に倣ったとか?

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