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皇祖母尊

昨日の投稿で、初稿を投稿した際、最後の十数行が抜けておりました。

修正しましたので、お読み飛ばした方はご確認ください。

pv数倍増!?

 出産の穢れは三日間と言われているらしく、四日目から人がやって来るようになりました。

 親バカ全開の皇子様は毎日来ますけど……。


 本日は間人皇女(はしひとのひめみこ)様がお目見えになりました。

 額田様へのお見舞いと、かぐやコスメティック研究所(KCL)の施術のためです。

 どちらが(メイン)でどちらが(サブ)かは分かりませんが……。


 低温の蒸し風呂(サウナ)でマッサージを受けながら間人皇女様は問い掛けされます。


「のう、かぐやよ。

 額田はぐったり疲れ果てていたが、とても嬉しそうにしておった。

 それ程までに子が欲しかったのか?」


「皇子様との子を成せぬ事にかなり苦悩されてらした様子に御座いました。

 お側に仕えておりました身としましては、額田様がその重みから解放されましたことを嬉しく思います」


「そうか。

 妾は帝との子が欲しいかと問われれば、そうは思わぬ。

 額田と大海人は互いに好き合っておるのは周りも好う知っておる。

 好きな者同士でなければ子は喜ばれぬのかな」


「子を欲しがる理由は人それぞれに御座います。

 私は産まれてくる赤子が、この先幸せな人生を送る事を祈願するのみです」


「妾が帝に嫁いだのは帝が軽皇子(かるのみこ)じゃった時、皇后となる者が他に居らぬため、妾が帝の皇后となる様、母上に命ぜられたに過ぎぬ。

 妃や夫人は臣下の娘であっても構わぬが、皇后は皇女でなければらないからだそうじゃ。

 要は帝に嫁いだのでは無く、皇后という職に就いたのじゃ」


 うーん、重いです。


「私も婚姻を命ぜられれば否はないでしょう。

 好きなお方に嫁ぐというのは稀なことかと思います」


 そうゆう意味ではミウシ君と衣通ちゃんは相思相愛だね。


「そうじゃな。

 女子(おなご)男子(おのこ)を選ぶなど聞いた事が無い。

 せめて周りに喜ばれる相手に嫁ぎたいものじゃな」


「せめてものお慰みに故郷に伝わる天女の伝説をお話ししましょうか?」


「ほう、面白そうじゃ。

 是非聴かせてたも」


『昔、昔ある所にお爺さんとお婆さんがおりました。

 お爺さんが竹藪へ竹を取りに行くとそこに光る竹がありました。

 その竹を切ってみるとそこには小さな女の子が居ました。

 <中略>

 こうして天女は誰とも結婚せず、月の都へと帰りました』


 私は御伽草子のかぐや姫の童話を間人皇女様へお話ししました。

 もちろん固有名詞は伏せています。

 阿部御主人(あべのみうし)様なんてモロですからね。


「ふぉぉぉ、かぐやよ。

 実に面白い。

 何より五人もの求婚者に難題を突きつけて袖にしてしまうのは痛快じゃ。

 帝の入宮(じゅだい)すら断るなぞ考えられぬ事じゃが、聞いていてスカッとするのう」


 間人皇女様にかぐや姫伝説は大ウケでした。

 もしかしたら求婚者達の鼻っ柱をへし折る悪役令姫のかぐや姫とは、この時代の抑圧された女性にとって理想の姿なのかもしれません。


 ◇◇◇◇◇


 額田様の体調がだいぶ回復され、産まれた赤ん坊と一緒に過ごす時間が増えてきました。

 それに伴い、KCLに訪れる方も増えて来ました。

 額田様が出産される前は毎日三人以上訪れていましたが、皆さん間人皇女様のご紹介による方々達です。

 もちろんやんごとなき方々(マダム)ばかりです。


 この屋敷を立ち上げる時にスタッフの教育を重要視していたおかげで、大きな粗相はありませんが内心ヒヤヒヤです。

 出来るだけ私が接客(ホスピタリティ)を請け負い、平民の皆さんはご奉仕(エステ)専門として分業しています。

 言っておきますが、現代で私が総務だったのは営業が苦手だからなのよ。


 急募! 営業トークができる人。

 住み込みで一日ニ食付きます。

 月に6日休みがあります。

 皇室御用達の格式高いエステショップです。


 残念ながらそんな都合の良い人材がいるはずもなく、お客様との営業トークと慣れない作り笑いと幼い時から活動していなかった表情筋を酷使する毎日です。

 そんなある日、予想を超える重要人物がお越しになりました。


 屋敷(KCL)へとやって来る輿(キャリア)が二機。

 特車ニ課出動か!?


 一つは見覚えのある間人皇女様のお輿です。

 もう一つは間人皇女の輿より明らかに上質(エグゼクティブ)です。

 皇后様より格上の方という事は……。


「其方が額田の出産を手伝ったという舎人かえ?」


 年齢は50過ぎ。

 この時代において最上級の女性。

 ……いえ、歴史上においてもトップ5に数えられる女性です。(私の個人調べによる)

 卑弥呼、推古帝、尼将軍政子、持統天皇、そして目の前に居る皇祖母尊すめみおやのみこと、つまり先帝・皇極天皇です。


「はっ! 皇子様の命に従いまして、万全の備えをし、ご支援させて頂きました」


「つまりここは産屋であるのかえ?」


「赤子を産むために建てたという意味におきましては産屋となります」


「私も三人の子を産み育てたが、残念な事に幼くして亡くした子もおるのじゃ。

 もしこの産屋の居心地の良さがあの時にあったならば、と思わずにはいられぬ。

 額田を無事、母親にしてたもうた事に礼をしよう」


「勿体なきお言葉、有り難き事に御座います」


「ふふふふ。

 無理せずとも良い。

 後宮にいたのなら、其方はまだ見習いの様な年頃じゃ。

 其方はまるで私の元で歌を詠っていた頃の額田の様じゃの。

 無邪気だが才気溢れる官女であった」


額田王(ぬかたのきみ)様には目を掛けて頂きまして恐悦に御座います」


「其方が額田の事を大切に思う気持ちは、今の額田の満ち足りた様子を見れば推量れよう。

 今後とも額田と皇子を助けておくれ」


「私如きにできる事は僅かな事ですが、全力でお支援いたします」


「ほっほっほ、其方は少し肩に力が入り過ぎては居らぬか?

 ここに居るのは、政から退き、暇を持て余した婆あじゃ。

 気楽にするが良いぞ」


 無茶言わんで下さい。

 お願いします。


「肩の力を抜くついでにじゃな、間人の話ではここに通う様になり肌艶が良くなったそうな。

 私にも出来ぬか?」


「も、もちろん。

 ご許可さえ御座いますれば、全力で応対致します」


「許可とは誰の許可ぞえ?」


皇祖母尊すめみおやのみこと様に下賤の私が直接触れて宜しいか分かりませぬ。

 また、どれほど施術を致しましても食生活が整っておりませぬと、その歪みは肌荒れとして現れます故、ここでは食事療法も行っております。

 しかし皇祖母尊すめみおやのみこと様にお食事をお出しして宜しいか、私には判断がつき兼ねます」


「私の事に私以外に許可を与えぬ者も居らぬので、構わぬ。

 今更私を亡き者にしようなど誰も思わぬし、そうなったところでそれで良い。

 是非、頼まれよ」


「畏まりました」


 何か悲しげというか、投げやりというか、どうでもいいって感じです。

 せめてここでリフレッシュして元気を取り戻して差し上げたいと思うのでした。


【天の声】それが面倒ごとの原因だと思わないのか?


 まずは初日なので間人皇女様と同じメニューを体験して頂きました。

 女性が気になる小皺対策としてサウナの後の保水と乳液を念入りに。

 お土産にワンセットお持ち帰り頂きました。


 あまり感情を表に出されないので少し不安です。

 怒って二度と来ないとか、屋敷ごとお取り潰しになるとか?

 そんな事はないよね?


メンテナンス長かったですね。

連日投稿が途切れるのでは無いかと思いました。

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