おコタでぬくぬく、快適空間♪
作者の母の実家に掘りごたつがありました。
靴下が溶けた思い出があります。
お婆さんと裁部さんと私の二人と半人前が頑張った甲斐あって、完成しました。
半纏三着、そして私用のちゃんちゃんこ一着。
外に出る機会の多いお爺さんには帯で留める丹前もプレゼント。
お爺さんはいつも格好の上に丹前を羽織ってウキウキと外出します。
この時代のファッションは袴の上にシャツ出しが当たり前なので、半纏が袴に仕舞われなくても違和感がありません。
校則の厳しい学校でシャツ出しをしたら先生に叱られるところもありましたが、この時代の服装規範はさほど厳しくなさそうです。
◇◇◇◇◇
半纏とちゃんちゃんこ、丹前を作ってもまだ真綿が半分くらい余りましたので、余った真綿を使ってアレを作ることにしました。
まず反物を繋ぎ合わせて、2メートル四方の布袋を作り、その中に真綿を入れて閉じます。
綿が偏らないよう、お雑巾みたいに布袋に糸を通します。
こうして作ったもの、それはこたつ布団です。しかも、シルクで出来た最高級品です。しかし、こたつのないこたつ布団は単なる高級布団です。
こたつ作り。
幼女がDIYをやって、やぐらこたつを作るなんて事はしません。
というか出来ません。
力もなければ道具もありません。材料もありません。
手に入れようにもホームセンターすら見当たりません。
もしあったらDIYしないで出来合いを買いますけど……。
でも安心して下さい。
こんなこともあろうかと、家を新築する際に私の部屋に掘りごたつの仕掛けを猪名部さんにお願いして作っていたのです。
普段はただの床板にしか見えない床ですが、床下収納ユニットに様にパカっとあけると逆さになった掘りごたつが引き出せるのです。
そして穴を覆っている板はそのままこたつの天板になります。
穴の深さは40センチほど。
風が吹き込まないよう板で囲ってあって、底は木の板が敷き詰めてあります。
穴の中央には炭火を焚ける様になっていて、足が炭火に触れないようにその周りを鳥かごのような木製の囲いで覆ってあります。
さて、試運転。
幼女の力ではこたつの準備するのは無理なので家人のお姉さん達にお願いしました。
炭火の準備もお願いしました。
照明代わりに光の玉を出します。
秋田様からお借りした薄い書物の写しもあります。
残念ながらミカンはありません。
レッツ、こたつでゴロゴロ!
うーん、し・あ・わ・せ。
秋の夜長の少し肌寒い夜、掘りごたつで趣味全開だなんて飛鳥時代とは思えない贅沢です。
何よりも、掘りごたつはテーブル椅子に座るような姿勢なのでとっても楽です。
ついでに猪名部さんにお願いして、座椅子も用意しましょう。
その前にお座布が欲しいですね。
ひとまず、試運転は成功。
このままドロドロと泥沼に嵌っていたい気持ちもありますが、お爺さんとお婆さんにお披露目しましょう。
……とその前に、書物は仕舞っておきます。
難しい書物と真面目な書物の間に挟んで……と、可動式本棚の奥の棚に仕舞います。
この本棚も猪名部さんにお願いして作った仕掛けです。
【天の声】変なところで師匠に似てきていないか?
◇◇◇◇◇◇
「ちち様、はは様。私のお部屋きて。お見せしたいものある」
「おぉ、娘の部屋に招待されるのは何とも嬉しいものじゃな」
「何か面白いものが見れそうだねぇ」
綿入れ半纏を着たお爺さんとお婆さんが私の部屋に来ました。
部屋の真ん中にあるこたつをみて、机であることは分かったみたいですが、用途は???な様子です。
「娘よ、これは一体何じゃ?」
「こうする」
私はこたつ布団の中に足を入れて、こたつに座りました。
それを見てお爺さんとお婆さんが私の真似をしてこたつに足を入れます。
堀りになっているのは予想していなかったみたいで少しおっかなびっくりでしたが、炭火で温まった掘りごたつの中に足を入れて、もっとびっくりしています。
「娘よ……なんじゃこりゃー!」
やはり、いつもの台詞です。
「これは凄く快適じゃ。
娘がくれた着物とこの暖かい机があれば、真冬の雪の中でも耐えられそうじゃ!」
いえ、普通に遭難しますって。
「ほぉぉ~、これは温いねぇ。このまま寝てしまいそうだよ」
お婆さんも満足げです。
「これはこたつ。作り方、猪名部さん知ってる。
お尻の下に敷くものあればもっと快適」
「ほぉ、これは猪名部の発案なのか?」
「発案は私。猪名部さんにお願いして作った」
「ふーむ、娘はこの『こたつ』とやらをどこで知ったのじゃ?」
「考えた。そしたら出来た」
見え見えのウソですね。
「何とも聡明な娘じゃ。幼子とは思えぬ利発さじゃ」
あ、信じた。
「お尻に敷くもの、お願い。
ちち様とはは様のお部屋にこたつ作るの手伝う」
「うんうん、楽しみじゃな」
【天の声】
……と言いながらも爺さんはこう考えていた。
『さすがにこれは幼子が考えてできるものではないな。
習わずとも文字を知っておったし、おそらく娘はここに来る前、既に高度な知識を得ておったのであろう。
この子のためにもワシは中央に渡りをつけて、女としての幸せになる道を探さねばなるまい。
娘の能力ならば帝に迎え入れられ國母となるのも夢ではないじゃろう。
……じゃが何故じゃろう?
とても親思いの娘にずっと家にいて欲しいと願う気持ちもある。これが娘を持った親の気持ちなのかのう?』
親子三人でコタツに入りながら、俗物的な爺さんの考え方にも少しだけ変化が訪れていた。
明日は休憩回、幕間入れます。