ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ
サブタイトル、変えた方が良いかな?
皇子様と額田様が新築した施設をお気に召しまして、晴れて公認の産屋として営業を開始する運びになりました。
気に入れられたのは嬉しいのですがもう一つくらい目玉が欲しい所です。
癒しの空間、癒しの湯、癒しの食事……癒されてばかりです。
何か活動的なモノは無いかな?
刀自さん向けに体幹トレーニングをやりましたが、あれを運動として畳の上でやるのは健康的でいいかも知れませんね。
しかし女性にとってアガる活動と言えばやはり美容。
刀自さんも化粧で綺麗に変身した結果、津守様がクルクルと手のひらを返したのはちょっとザマァな気がしてスッキリしました。
額田様のお化粧係の方の伝手で入手したお化粧品を取り揃えて、それを現代で培った知識で進化させてみましょう。
タイミングよく、津守様にお願いしていたアレが完成しました。
瑪瑙で出来た乳鉢です。
綺麗な球面に凹んだすり鉢はツルツル磨かれて、これを使ってゴリゴリやっていますと文系女子の私もちょっとした理系女子気分です。
この時代の白粉は貝殻を砕いた粉か、白い岩を砕いた雲母を用いているみたいです。
刀自さんのお化粧をする時に気になったのですが、少し粉が粗くて不揃いな気がしましたので、乳鉢でゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリと徹底的にすり潰しました。
紅色は植物系が末摘花、つまり紅花です。
今年から讃岐でも栽培をする様お願いをしました。
鉱物系は丹つまり水銀系の顔料と、紅殻つまり鉄系の顔料の様です。
水銀と聞くと猛毒を連想しますが、接種して即座に亡くなる様な猛毒ではありません。
ベンガラは現代でも安全性の高い顔料として扱われておりました。
なので、肥国でたくさん取れるそうなので、方々に手を尽くしてベンガラを入手しました。
(※第142話『【幕間】御主人の羈旅・・(2)』をご参照)
そして雲母とベンガラを混ぜて乳鉢でゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリとすり潰して混ぜてセクヒーな薄桃色のファンデーションを作りました。
人の肌の色は千差万別なので、色を揃えます。
黄色はタンポポの花から色素を取り出しました。
鉱物系の黄色を使う方法もありましたが、黄色い鉱物にはヒ素が含まれていると聞いた事があるので使いません。
植物油は椿油をメインに使います。
椿油は現代のコスメでも人気のある素材です。
8月頃から椿の実が取れる様になりましたので、成金の財力でかき集めました。
讃岐でやっていた養蜂の規模を大きくして、蜜蝋もたくさん集まりました。
洗剤はお馴染みとなった無患子に実を潰して作った石鹸水です。
無患子から取れる洗剤は泡立ちは今ひとつですが、肌に優しいので乳液を作るのにも役立てています。
こうして、かぐやコスメティック研究所、略してKCLは飛鳥時代の女性を虜にする化粧品作りを進めていくのでした。
◇◇◇◇◇
さて額田様が定期的にお越しになる様になりました。
もちろん排卵日と受精の関連についても説明済みで、タイミング法による妊活についてもご理解頂いております。
お付きの侍女さん達には額田様の朝一番の基礎体温の確認をお願いしました。
お付きの方々も女性なので高温期、低温期がありますが、全員がお互いに手を取り、自分が高温期にあるか低温期にあるか把握した上で、額田様の体温が高いのか低いのか調べて頂きました。
また、皇子様のお通いがあったかどうかも記録をお願いしました。
妊活にはどうしても必要な事なので、額田様の許可を得てやっております。
普段は入浴、サウナ、体幹トレーニングなどをやって過ごされております。
額田様お一人だけでは寂しいので、お付きの人にも同じメニューを代わる代わるやって頂きます。
額田様のご紹介があればその方にも同じメニューををお楽しみ頂ける様にもしました。
そのお陰もあって徐々にKCLへ訪れる女性が現れる様になりました。
皇子様も蒸気風呂目当てで2度ほどお越しになりました。
しかし肝心の額田様の妊活の方は、二か月連続で失敗となっています。
もちろん皇子様は額田様の排卵日前後にはご協力頂いております。
それなだけに月のモノが来た時の額田様は大きく落胆されたご様子でした。
これがこれから続くのかも知れないと思うと、何とか出来るのならしてあげたいと強く思います。
「かぐやさん、やはり私は子供を産むことができないのかしら?」
「まだ本格的に活動を始めて二月です。
ご判断されるには早いと思います」
「それは分かっているのだけどね。
子を成したいと思い始めてから何年も経っているのよ
かぐやさんの知識に縋りたいけど、皇子様のご負担になるのは心苦しいの」
「心中、お察し申し上げます」
だいぶ参っている様子です。
妊活は簡単に結果が出ません。
焦りとの闘いでもあります。
しかし額田様は20代そこそこで十分にお若く、現代でしたらまだ焦るほどではありません。
だけどこの時代の20代は子を産んで当たり前で、皇族となれば子孫を残さなければならないという強迫観念の様なモノがあります。
現代でしたらホルモン注射とか、人工授精とか、体外受精など、様々な医療行為に頼る事が出来ますが、この時代には望むべくもありません。
もうすぐ霜月、11月です。
現代にいたら、東京の某所で仮装した若者がばかさわぎして馬鹿騒ぎして地元の人から苦情が来て、区長が来ないでくれと言うあれの日です。
仮装ではありませんが、舞を披露してお慰みしました。
さらに特別課程の乳酸退散の足スッキリの光の玉に加えて、バストアップの光の玉を処方しました。
これには額田様も大喜びでした。
20代の若々しい張りのあるお胸ですが、生まれて一度もブラをしていませんのでどうしても”ポチ”の位置が下がってしまいます。
そこで光の玉の力でクーパー靭帯を再生させました。
額田様。
嬉しいのは分かりますが、胸をしまって下さい。
(ぷるんぷるん)
いよいよ3回目の挑戦です。
排卵日が近づき、額田様も不安そうです。
「額田様、あまり気に病むことは御座いません。
私はいつまでも額田様をご支援いたします」
「ええ、気にし過ぎるのは良く無いのは分かっています。
だけど、期待しているだけに落胆してしまうの。
きっと、あなたが考えている以上に私はかぐやさんに期待しているのだと思うの」
「私としても出来うる限り、考えうることを致します」
「ええ、頼もしいわ」
こうして排卵日が過ぎて、懐妊したかしないか、またモヤモヤの半月間がやってきました。
その間、額田様は屋敷で湯浴みして、体幹トレーニングをして、マッサージを受けて、表向きはリラックスしておりました。
マッサージと言っても特に技能がある訳ではありませんので、光の玉を使った如何様です。
マッサージを施している時、ふと額田様のお腹の中で起こっているであろう受精のイメージが浮かべて光の玉をやってみようと思い立ちました。
単純に懐妊だけのイメージでは足りません。
懐妊までの一つ一つのステップを思い浮かべます。
卵巣に卵ができているか? チューン!
卵巣からキチンと排卵されているか? チューン!
卵が卵管に到達したか? チューン!
精子が卵管に届いたか? チューン!
卵が受精したか? チューン!
受精卵が子宮へ移動したか? チューン!
受精卵が子宮に着床するか? チューン!
気のせいか額田様がほんの少しだけ光を放った気がします。
しかしそれと同時に視界が黒くなっていきました。
(どさっ)
どうやら私は久々に光の玉の使い方を間違えてブラックアウトしてしまったみたいです。
無患子に含まれる界面活性剤成分、サポニンは非イオン性界面活性剤です。
植物油にアルカリ(水酸化ナトリウムなど)を加えて作る石鹸に比べて肌に優しい洗剤です。(たぶん)
サポニンは乳化剤としても働きますので、質の良い油と組み合わせれば良い乳液になるんじゃないかな、と思い執筆しました。
本当のところは実際に実験しませんと分かりませんです。




