妊活の入り口(スタート)
難波宮で主人公が主人公します。
額田様の妊活のため、私は額田様のお付きとなって生活支援をする事になりました。
馬来田様が私を額田様のお付きの一人にする段取りなので、今は通達待ちです。
その間に今後何をするのか計画を立てておく事にしました。
萬田先生の時の様に『妊活の心得』の授業は外せません。
(あの時は避妊の心得でしたが)
一昨年やった保健体育の授業の覚書をもう一度おさらいしておきましょう。
(※第115話『かぐや先生の保健体育講座』ご参照下さい)
この時代で出来る妊活はタイミング法に限定されます。
お医者さんでもないのに人工授精なんて不可能ですから。
技術的にも倫理的にも。
そのためには額田様の生理のリズムを調べなければなりません。
出来れば基礎体温も調べたいところです。
私一人では出来ませんので宮人(※女官の事)の方に協力を得たいのですが、上手くいくかしら?
問題は食事。
栄養管理とは程遠い食事をしている可能性は大いにあります。
お肉が許可されるなら鶏さんに犠牲になって頂きましょう。
他は清潔ですね。
高貴な方のお住まいとはいえ、令和時代と飛鳥時代とでは衛生面では天と地の差があります。
私のチートを駆使してでもこの飛鳥時代でも清潔な環境を確保したいところです。
あと、ありきたりですが、ストレスは良くありません。
私の光の玉でストレスを軽減させるのも有りですが、出来れば心安らかな環境をご用意させてあげたいと願っています。
……上手くいくかな?
◇◇◇◇◇
明けましておめでとうございます。
白雉2年の日の出です。
今年も新年かくし芸大会が催されました。
飲めや歌えや、ドンチャンドンチャンと皆楽しそうにしています。
私は昨年と同様、舞を披露しております。
♪ 〜
演奏する笛師さんと楽師さんからは帝の前で披露した舞をリクエストされましたので、昨年の様なハラハラ&ドキドキな舞にはなりませんでした。
(※第121話『新春恒例のかくし芸大会?』ご参照下さい)
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ。
「かぐや殿よ。
相も変わらず見事な舞だな」
お酒が入ってご機嫌な馬来田様が話し掛けてきました。
相当にご機嫌な様です。
「恐れ入ります。
ですが、これまでは幼子なので見過ごして頂けた拙さが、体の成長と共に見過ごして頂けなくなっておりますので、変わりがないのはあまり喜ばしいことでは無いのです」
「かぐや殿はいつも自分を卑下しておるな。
上手な舞だから威張っておれば良いものを」
「身の程を知らぬ子供でいられればどんなに気が楽だった事か……」
「はっはっはっは、新年早々に笑わせてくれるな。
その年で大人の自覚があるのはいい事だ。
だが大人になれば辛いことばかりだ。
今のうちに楽しんでおけ」
「馬来田様もお辛い事の多い大人なのですか?」
「そう見えぬか?
大人とは辛い事が多いのだが、その辛さを表に表さぬ者が正に大人なのだ。
つまり辛そうに見えぬ私は大人の中の大人なのだよ。
はっはっはっは」
うーん、飲み会によくいるオジサンの典型例ですね。
しかも現代の私より年下だから、それっぽい話も全然心に響きませんね。
「それはそうと、私はいつから額田様のお付きとして働くのでしょう?」
「ああ、その事だがな……、周りの者どもが難色を示しておる。
子供に子供を産む手伝いなど滑稽にも程があるとな」
「それはもっともだと思います。
それでは私はお役御免なのでしょうか?」
「そうはいかん!
これは皇子様の命だ。
有象無象が反対したくらいで覆せるものではない」
「それでは額田様にお話しする機会がございましたら、尋ねてみます」
「おう、頼むぞ。かぐや殿よ」
すんなり上手くいくとは思ってませんでしたが、前途多難です。
はぁ。
食事をしながら皆さんのかくし芸(?)を見ていましたら、額田様がいらっしゃいました。
私は襟を正して、ご挨拶をします。
「額田様、恭しく新年の喜びをお讃え申し上げます」
「まあ、かぐやさん。おめでとう。
帝に献上するだけの事はありますね。
貴女の舞はいつ観ても心洗われる物があります」
「恐れ多い事に御座います」
「その後、どう?
かぐやさん、歌は上達しましたか?」
「歌の師であります多治比様より、昨年歌を褒められたのは一度きりに御座います。
一昨年も一度きりでしたので上達しているとは言い難く、大変申し訳なく存じます」
「まあ。多治比様はそれほど厳しいご指導をされているの?」
「私がもう少し歌に対して気持ちを前向きにする事を求められております。
技巧よりも心の持ち方に原因があるかも知れません」
「うーん、私は歌を苦しいと思った事は無いのだけど、どうしてなのかしら」
「えーっと、(ピン!)
おそらくですが、額田様が歌を詠うのは心震わせた時では御座いませんでしょうか?
私には心を震わせる機会が少ないのかも知れません。
とある偉人は申しておりました。
『考えようとなさるな、感じ入りなさい』
それが私には足りていないのかも知れません」
「そこまで理解しているのに歌が不得手なんて信じられませんね。
相当、苦手意識を拗らせてしまっているのかしら。
多治比様もこんなか弱い子に厳しくするなんて何を考えているのかしら」
おっと、多治比様の好感度がダウンしてしまいました。
後でフォローしておきましょう。
「もし叶うのでしたら、額田様の創作にお付き合いさせて頂ける機会が御座いましたら、その切っ掛けが得られるかも知れません。
皇子様よりお仕事を申しつけられております故、それと併せてお願い致します」
「皇子様が?
貴女達、何か聞いてます?」
額田様が傍にいるお付きの者に聞きました。
何故かしどろもどろな……?
「え、……えぇ。
その者が田舎で産婆如きの事をやっているので額田様のお手伝いをする様にと……。
しかし子供に出産の手伝いが出来るとも思えず、万が一の事がありましたならその者の首を刎ねても罰は足りないでしょう。
大人のする事に口出しをせぬ方がその者のために御座います」
やっぱり額田様には報告していませんでしたね。
現代でもこうゆう決め付けの激しい娘がやらかして、トラブルの原因になる事がしょっちゅうでした。
報連相は社会人の常識でしょうが!
「恐れながら……
子供である私に何が出来るかと申されましたら、確かに不安に思われて当然です。
しかしながら皇子様のご命令を無視される事なぞ、私如きに出来ることでは御座いません。
もしそうお思いでしたら皇子様に直訴なさって頂けませんでしょうか?」
「その様な事が出来るわけないでしょ!」
「それではお手伝いするのですか?」
「ん〜〜〜」
あれれ、論破してしまいました。
今後の人間関係を考えるとあまり良い事ではないのですが、この場は仕方がありません。
「かぐやさん。
私のお手伝いって何をするの?
まだ懐妊していなければ何も出来ませんのよ?」
額田様が困惑した様に言います。
当然ですね。
妊娠もしていないのに産婆がやってきたのだから。
うー、サンバッ!
「特に難しい事は致しませんが、ほんの少しだけ懐妊しやすい環境を整えたいと思います。
ですが、そのお方の仰います通り、私の様な子供では不安に思うのは当然で御座います。
もし可能でしたらどなたか妊娠しない事にお悩みの方をご紹介頂けませんでしょうか?
私の持っている知識と技能を持ってご懐妊のお手伝いを致します」
「その様な事が出来ますの?」
「ほんの少しだけお手伝いするのです。
しかしそのほんの少しが心の平穏へと繋がるのです」
「分かったわ。
皇子様と相談してみますね。
貴女には歌が上達して欲しいし、貴女の言うほんの少しというものがどの様なものか気になります」
「はい、宜しくお願い致します」
まずは第一関門突破……かな?
先は長そうです。
妊活されている方を応援します。
作者の亡き母も不妊に悩み、何かの注射を打っていたと言ってました。
母が妊活してくれたから今の私がある訳です。
作者の妹も医師の指導に基づくタイミング法のおかげで甥っ子を出産しました。
悩んでいる方は多いと思います。
大切なのは夫婦仲良く、という事でしょうか?




