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魔法幼女のアイテム作成


「ちち様、欲しい物ある」


「おぉ、娘よ。欲しい物とはなんじゃ。

 いつも必要な物しか言わんからもう少し自分のワガママを言ってくれると父は嬉しいぞ」


 うーん、理解がありながら親バカな言葉です。

 でもお爺さんありがとう。

 遠慮なく言わせて貰うね。


「笏の様な木の板」


「笏? ……笏とな?

 娘は官位が欲しいのか?」


「違う。笏のような物。薄くて、小さくて、たくさん」


「うーむ、面白そうな物を作ろうとしているようじゃな。

 可愛い我が娘の考える事じゃ。きっと有益な物であろう。

 全面的に協力しよう。

 木の細工がしたいのじゃな? 伝手を頼ってみよう。」

(意訳:うーむ、何やら奇っ怪な物を欲しているようじゃ。だがワシも学習した。娘は美しいだけではなく卓越した頭脳の持ち主じゃ。その娘が必要とするもの、これはきっと儲けになる!)


「ちち様、寛大。さすが、ちち様。さすちち」

 (訳:えっ、いいのですか?

 自分でも曖昧な説明だって思うくらいなのに。

 成金になって気が大きくなってません?

 それに加えて最近は親バカに拍車が掛かっているような気がします。

 でもありがとう。そんなに信用してくれて。

 勤めていた会社の課長に、お爺さんの爪の垢煎じて飲ませてあげたいくらいです)


 ……という事で魔法幼女の小道具アイテム、もとい扇子作りが始まりました。


 まずは扇子の素材。

 帳簿作りの時、お爺さんにお願いして百枚の紙を用意して貰いましたが、すごくお高い買い物だったみたいです。

 この時代の団扇うちわに紙が使われていない理由も紙が貴重品だからです。

 扇子に紙が使えないとなりますと材質は木か竹になります。

 地方創生の考え方に基づきますと、讃岐ここは竹の産地でありますので竹ということになります。

 しかし竹は材質が湾曲しているため、平らにするのが面倒なのです。

 今回は面倒ごとと地方創生は後回しにしました。


 ……という事で、木細工が得意な方に来てもらいました。

 お屋敷の建築でもお世話になった猪名部いなべさんです。

 また私に無理難題をふっかけられて何をさせられるのか不安そうな猪名部さんでしたが、私は御得意様ふとっぱらなので文句はありません。

 現金ゴールドの力ってすごいですね。


 しかしイメージすら沸かないものを教える事がとても大変なのは、屋鋪の内風呂バスルーム台所キッチンを作る時に散々思い知らされました。

 なので、まずは完成品イメージを伝えることから始めます。

 勿体ないですが、紙を一枚犠牲にして扇子の一枚の形紙を作りました。

 それを20枚から25枚くらい同じものを作らせて、要の場所に5ミリくらいの穴を開けさせます。

 一枚一枚をミリ単位で薄くしないと十五枚重ねると幼女の手に余る太さになってしまいます。

 逆に薄すぎると強度が足りなくて、ぽっきりと折れてしまいます。

 長さは幼女の手の大きさに合わせて20センチくらいにしました。

 扇子を作るの真の目的は、魔法少女かぐやひめの必殺技を放つときのアイテムにするため。扇ぐためでは無いのです。

 初心忘れるるべからず、ですわ。


【天の声】初心は必殺技とやらで求婚者を追い返すためじゃ無いのか?


 ……と言うことで、三日後。バラバラの扇子が出来ました。

 要の部分は穴が開いているだけです。

 この部分にぴったりと嵌るピンを通したいのですが、材質は何にしましょう?

 現代ならプラスチック製のピンが通販で簡単に買えそうですが、ここは飛鳥時代です。

 鉄製の釘ですら入手するのに一苦労なのです。

 とりあえず猪名部いなべさんは木の細工が得意な職人さんなので、太い爪楊枝みたいな木のピンを作ってもらいました。

 出来たピンを全部の要穴に通して、扇形にしたら猪名部いなべさんに私がどんなものを作ろうとしていたのかが、ようやく製品イメージが伝わったみたいです。


 そして試作第一号の欠点を改良してもらって、本格的な扇子つくりに取り掛かって貰いました。

 きちんと厚さを整える事とササクレが無いようしっかりとバリを取り払って貰う事。

 これを徹底してもらいました。

 それと、要の部分のピンは真鍮にしました。

 将来的にはピンに糸を通す穴をあけて、飾り付けができるようにしたいと思っています。

 魔法少女かぐやひめのアイテムに相応しい装飾にするつもりですので。


 ◇◇◇◇◇


 更に数日後。

 大きい扇子が3個、小さい扇子が2個完成しました。

 大きい扇子はお爺さんとお婆さんに差し上げます。


「ちち様、はは様、これ受け取って」


「おぉ、娘よ。これは前に言っていたものか?」


「そう。広げて扇ぐ。閉じて仕舞う」


 ぱたぱたぱた……


「おぉぉぉぉ、これはなんて涼しげな。しかも優雅じゃ。」

「うーん、なんて素敵なものなのだねぇ。すごく使いやすいよ。かまどで火を仰ぐのにも良さそうだね」


 お爺さんもお婆さんも大喜びです。

 そしてもう一つ差し出しました。


「これ、秋田様に」


「秋田殿にはいつも世話になっておるが、そのお礼か?」


「そう。でも理由もう一つある」


「それはなんじゃ?」


「秋田様のご実家、竹の細工が得意。

 同じものを竹で作れば領民の仕事増える」


「おぉ、そなたは自分やワシ等だけじゃなく、領民の事も考えて提案しておったのか?」


「そう」

(訳:いえ、嘘です。魔法少女かぐやひめのアイテムが欲しかっただけです。秋田様は時々真面目な書物と難しい書物の間に楽しい薄い書物を差し入れてくれるので、そのお礼を兼ねての事でもあります)


「それでは早速秋田殿にお渡しして同じものをじゃんじゃん作るとしよう」


「ちち様、それダメ」


「ん、なぜじゃ?」


「これは試作品。

 次は装飾した高級品作る。高級品、利益高い」


「娘よ。秋田殿はその様なことも教えておったのか?」


「考えれば解る事」

(訳:いえ、嘘です。ビジネス誌に書いてあった事の受け売りです)


「娘の慧眼は止まる事を知らぬようじゃな。娘の言うとおりにしよう」


「ちち様も聡明」

(訳:人の話を聞入れるだけでも凄い事なんです。現代の課長にお爺さんの爪の垢を……以下省略)


「娘にその様な事を言われるのは何とも光栄なことじゃ。思い付いた事があれば何でも言うが良い。娘のためならどんな苦労も厭わぬぞ。わーはっはっはっは」

 (訳:娘は賢いだけでなく、物の道理も分かっておる。娘の言うことならば失敗はすまい。

 いよいよワシにも運が向いてきたぞい。この好機チャンスを逃してなるものか。

 わーはっはっはっは。笑いが止まらぬわ)


【天の声】……


【追伸】

 魔法少女のアイテムとして扇子を作りましょう……と元々は考えていたのですが、扇子と光の玉をどうやって組み合わせましょうか?

 扇子を武器にするなら鉄扇という武器があるらしいですけど、非力な幼女にはムリです。

「この田舎侍め!」と松の廊下で求婚者を扇子でペシペシしたら、四十七士に囲まれそう。

 扇子に羽根をつけてお立ち台で踊ったら……千四百年後の未来なのに懐古的レトロに思えるはなぜ?


 うーん、ピッカリの光の玉で攻撃する時に扇子で顔を隠せば誰がやったかバレないかな?

 そのためには扇子を広げても向こうが見える様に装飾彫りをしてもらいましょう。長い飾り紐つけてみるのも良いかも知れません。


 当面は魔法のステッキ代わりにブンブンと振り回しましょう♪



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― 新着の感想 ―
この時代だと真鍮は、金よりも入手が困難かと っていうか、金は出し放題?なのだったら、素直に金を留め金にする方が良いのでは
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