蚊との戦い (Kampf gegen Mücken)
雪で大変でした。……のに、夏の話です。
主人公が新しいチートに目覚めました。
夏になりますと鬱陶しいのが蚊です。
人類を最も多くコ○す動物と言われている蚊です。
もしこの辺り一帯の蚊を撲滅出来たら、人の寿命もかなり違っているのかも知れません。
光の玉で蚊を退治できれば良いのですが、残念ながらその様な力はないみたいです。
実際に蚊に向かって光の玉を乱射しましたが、何事も無かったかのようにプ~ンと飛んでいる姿は許しがたいものを感じました。
私の光の玉はウィルスや病原菌、寄生虫には効果があるのですが、蚊の大きさになるとダメなのでしょうか?
単細胞限定とか?
♪ はーたらくサイボ〜〜
ブドー球菌をぶっコ○す!みたいな?
とりあえず、ミミちゃんの様な幼い子がいる場所に蚊帳を用意する事にしました。
与志古様に聞きましたら、蚊帳(みたいな物)はある事はある様です
しかし、高貴な方でない限りあまり使われていないそうです。
仕方がありません。
無ければ作りましょう。(ただし他力本願)
もちろんお願いしたのはお胸が若返った縫部さん。
目の大きさが蚊が入らなくて、風を通す布を織らなければならないので特注品です。
糸は細い方が良いですが、何度も折り畳んで仕舞ってを繰り返すので、丈夫さも必要です。
ナイロンは偉大ですね。
しかし飛鳥時代にナイロンはナイので、とりあえず太い絹糸を撚って作ってみましょう。
特注でも大量に作れば特注価格で無くなるので、販売前提で大量発注しました。
与志古様、物部様、お爺さんお婆さん、秋田様、多治比様、忌部様、そして私と……、雇用主の皇子様は持っているかな?
あと3人目を出産した八十女さんにも持っていきましょう。
私の部屋は大体4畳半の正方形なので、その大きさにあったサイズの蚊帳を準備しましょう。
蚊帳の四隅を吊り下げるフックを猪名部さんにお願いして取り付けました。
高さは人が立って窮屈さを感じない大きさが良いですね。
意外かも知れませんが、飛鳥時代の人達ってそれほど身長が低くありません。
現代ではどちらかと言えば小柄だった私が、飛鳥時代にやって来たら周りの男性よりも頭一つ二つ飛び抜けて背が高くなってしまうのではないかと心配していましたが、それ程でもありませんでした。
長さの単位の尺度が違うのか、こちらの食べ物を食べているうちに私が現代よりも背が低くなったのかは分かりませんが……。
【天の声】飛鳥時代の男性の平均身長は約160センチ超、女性でも150センチ超だったが、肉食をしない江戸時代では男性が155センチくらい、女性が140センチちょっとで、日本人は徐々に身長が低くなっていった。しかし、平均寿命は江戸時代の人の方が5~10年くらい長いので、体が大きければ良いという訳では無い。
数日後、完成した蚊帳を縫部さんが持ってきました。
白い絹の糸で出来た蚊帳はかなりの高級感があります。
その夜、私が使って調べましたが、特に問題は見当たりませんでした。
これなら大丈夫そうです。
同じものを大量発注して、皆さんにお配りしましょう。
その前にお爺さんお婆さんにお披露目です。
「父様、母様、少し宜しい?」
「かぐやや、どうしたのだい?」
「少し見て頂きたい物があるの」
「何じゃ? 皇子様からの婚姻の品かの?」
最近のお爺さん、皇子様に雇われたのと、娶られたのと区別がつかないみたい。
もっとも現実逃避はお爺さんの得意技なので無視します。
「これ、蚊帳と言うの。
この中にいれば蚊が入ってこないの。
でも風は入ってくるから暑くないの。
高貴な方は使っているけど、欲しかったから縫部さんにお願いして作ってみたの。
どう?」
横側を合わせにしているので、暖簾をくぐる様にして入ります。
三人で蚊帳の中に入ると何故か落ち着きます。
「かぐやよ……
なんじゃこりゃー!
すっごく快適じゃ!
蚊に悩まされずに寝れるなんて、まるで夢を見ている様じゃ」
いや、寝ている時は普通に夢みているでしょ?
お爺さん、拳銃で撃たれた刑事みたく大袈裟に驚くのは相変わらずだね。
(※第13話『幼女がなりたい職業』参照)
「いいねぇ。
これなら寝ている間、蚊に悩まされずに済みそうだよ」
「うん、これを父様と母様の寝室に備え付けるよ。
それから同じものを与志古様と萬田様にも。
赤ちゃんがいるから」
「そうだね。
赤ん坊が蚊に刺されるのは可哀想だから急いで持って行くといいよ」
「はい、母様」
「かぐやよ。
これを皇子様に献上したら、かぐやを娶って貰えんかの?」
「蚊帳のオマケに娶られるのは嫌です。
それに高貴な方は既に使っているそうです」
「そうか……、ガッカリじゃ」
勝手にがっかりするお爺さんは放っておきます。
出来上がった第一号と第二号を与志古様へと持って行きました。
「助かるわぁ、後宮で使っていたのより良さそうね。
良い糸を使ってくれたのね。
ありがとう、かぐやさん。」
「ミミちゃんが可哀想なので取り急ぎ用意しました。
あと一つは、真人様と麻呂様がお使い下さい。
男の子はきっと喜びますから」
「ふふふふ、きっとそうね」
この様な調子で、萬田先生や多治比様にも持っていきました。
歌の稽古を甘くしてくれないかお願いしましたがダメでした。
多治比様のイケズ!
◇◇◇◇◇
さてこれで一先ず蚊帳は出来たのですが、蚊帳の中にいる蚊の撲滅方法がありません。
除虫菊なんて何処で手に入れれば良いのか分かりませんし……。
現代では憎っくきGをやっつける方法の一つに、洗剤をぶっ掛ける方法がありました。
洗剤そのものには毒性はありませんが、Gの体表面を覆う油成分にへばり付いて、呼吸困難にしてしまうという方法です。
蚊にも効果があるかやってみましょう。
まずは洗剤。
これはストックしてある無患子の実を潰して、水に混ぜます。
するとシャボンが出来るくらいにアワアワになります。
そして何で吹きかけましょう?
水鉄砲ではお部屋の中がびしょびしょになってしまいます。
霧吹きがあれば言うことがありませんが……、どうしましょう。
霧吹きの代わりといえば、表具をとかを貼る時、口で吹く霧吹きがあった様な記憶が薄らとあります。
アレって、ストローの先端を思いっきり吹くと水がパァ〜となってシューっと吹き掛けるのですよね?
……たぶん。
【天の声】そんな説明じゃ読者の皆さん、全然分からないぞ。
ストローというと藁。
だけど何となくスカスカな気がするから金属で作ってみましょう。
ついでに酌の様な水を入れる器も作りましょう。
金属加工といえば鍛冶部さん。
神楽鈴以来、しゅっちゅうお世話になっています。
本当に出来るかどうか分からないけどアイディアを絵に描いて説明して、後は丸投げしました。
だって理科は苦手ですから。
その代わり成功報酬は十分に用意しました。
あの憎っくき蚊をやっつけるためなら、私はどれだけ金を注ぎ込んでも悔はありません。
待つ事10日。
霧吹きはまだ完成しません。
でも蚊は霧吹きの完成を待ってくれません。
蚊帳の中でプーンと飛び交っています。
う〜〜〜〜!
無駄だと分かっていても、私は怒りにまかせて光の玉を連射しました。
はぁはぁはぁ。
全く効果はありません。
光の玉なのが宜しくない気がしてきました。
時代はレーザーです。
レーザーポインターを思い浮かべて……。
指の先から、チュン!と発射しました。
あれ?
何か反応がありました。
それじゃあ出力アップです。
チュン! チュン! チュン!
ポト、ポト、ポト。
おぉ、凄い! 私、凄い!
よしっ!
駆逐してやる!
この世から蚊を一匹残らず駆逐してやる!!
蚊は光を好むはずです。
特に紫外線を含んだ蛍光灯の光が大好物なはず。
蛍光灯色の光の玉を思いっきり浮かべて蚊を呼び寄せます。
スマホやパソコンと無縁の生活を送っている今の私の視力はおそらく2.5くらいあります。
蚊を見つけてレーザーポインターを撃ちます。
チュン! チュン! チュン! チュン!
チュン! チュン! チュン! チュン!
チュン! チュン! チュン! チュン!
チュン! チュン! チュン! チュン!
チュン! チュン! チュン! チュン!
ポト、ポト、ポト、ポト、ポト、ポト、ポト、ポト、ポト、ポト、
ポト、ポト、ポト、ポト、ポト、ポト、ポト、ポト、ポト、ポト、
ふっふっふっふ、百発百中です。
蚊帳の中の蚊を駆逐しました。
かぐや・アッカーウーマンと呼んで下さい。
【天の声】際どいことをするんじゃありません!
今までの恨みも晴れたのでその夜はぐっすりと眠れました。
そして翌日。
鍛冶部さんが完成した霧吹きを持ってきました。
……もう必要無くなったって言えないよね?
追伸.
実験の結果、そこそこ効果がありました。
これも皆さんにお裾分けしました。
ムクロジにはサポニンが含まれております。
サポニンには界面活性剤としてだけでなく、抗酸化作用、抗炎症作用、抗菌作用、細菌殺菌作用、肥満防止など、さまざまな効果があります。
サポニンにも様々な種類があり、毒性の強いもの(サポトキシン)もあります。
用法容量を守り正しく服用して下さい。
♪ ピンポーン




