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非人道的必殺技!

主人公(かぐやひめ)、やりたい放題です。


 ついにやって来ました。年貢の納め時……でなくて納税の日。

 予め納税額の通達をしておけば混乱は少ないのですが、日にちも少なくアバウトな納税なので、納税後修正勧告する方法が取られました。

 元・事務職としては推奨出来ませんが、幼女が出しゃばるのも考えものなので大人しく従う事にしました。


 ちなみに本日の私は記帳係です。

 傘持ちのお姉さんもセットです。

 お姉さんに大変じゃないかと聞いたら、傘を持つだけなのですごく楽です、と感謝されてしまいました。

 屋敷で働くよりも傘の方が軽いって事なのね。


 でもね、フラグって言葉を知ってる?

 主人公わたしの周りは騒動イベントでいっぱいなの。

 巻き込まれても文句言わないでね。


 そして納税。

 フラグなんて何吹く風。滞りなく進んでいきました。

 普通は「足りないぞ! もっと納めろ!」となる筈なのに、領民の皆さんはこぞって多めに納めようとするのです。

 どうやら私が天女だと言う風評が消えていなかったみたいで、私にお供え物をしようとするのです。

 ちょっと光の玉を出して病気のお爺さんを回復させただけで天女様扱いは大袈裟だと思います。


 ちゃんと否定したのに……


 ちなみに治療ヒールしたお爺さんはすっかり元気になってました。

 でもお願いだから手を合わせて拝まないで。

 お地蔵さんじゃないから。


 こうして滞りなく納税が終わったかと思ったのですが、5件の未納者がいました。

 昨年納税しなかった人達です。

 帳簿を見て気になったのは、この5件には共通点がある事です。

 それは家族以外の同居人がいた事。


 同棲シェアハウス居候パラサイト隠遁ひきニート、色々な可能性がありますが、ぶっちゃけタダ飯を食べさせるほど裕福な家はありません。

 もしあるとしたら奴婢ぬひ、つまり奴隷です。

 奴隷に農作業や家事全般を押し付けて、自分達は税金も払わずにのうのうと暮らしているのだとしたら、許せません。

 私は大統領リンカーンとなって奴隷解放を推し進めます。

 わたしの、わたしによる、わたしのための政治を断行します。

 不届き者は頭ピッカリの刑に処すっ!


【天の声】それって独裁者では?


 ◇◇◇◇◇


 翌日、未納者の家へと向かいました。

 お爺さんは私が付いてくる事を嫌がりましたが、それは想定範囲。

 いつもの様に目をURUURUさせて、

 「斬り合いになったら、ちち様に光の玉飛ばす」と言ったら、許可してくれました。


 今回は自警団の人達に加えて、普段は屋敷の番をしている警備兵を増員して総勢七人。

 まるでクロサワ映画みたいです。

 荒事になる事を想定して、武器も万全です。

 私の横には丸腰の家人のオジサンと傘を持ったお姉さん、プラス自警団の団長さん。

 こちらも万全です。


 領民の人達とはほぼ全員と会っているので、武装した私達が通ろうが見慣れたモノ

 ……と言いたいのですが、土下座こそしていないもののお大名様が通る時みたいな物々しい感じです。

 そのうち「したぁ~にぃ~ したに」と掛け声が掛かりそうでコワイです。


 まず1件目。

 やはり心に疚しい気持ちを持つ人というのは自分の罪を認めたがらないものです。

 警備兵の隊長さんが恫喝しても、言い訳ばかりして、逆ギレして、まただんだんときな臭くなってきました。

 前回の反省を生かして先手必勝です。

 専守防衛はなせばわかる

 何それ、美味しいの?


 斬り合いになる前に頭ピッカリになる光の玉の玉を二十メートル離れた場所から狙い打ちました。

 チューン!

 見事命中。みるみるうちに髪の毛も、戦意も抜け落ちていきました。

 男は縄でぐるぐる巻きにされて連れて行かれました。

 納税分の蓄えは無さそうなので、脱税の罪で奴婢に落ちるだろうとの事です。

 一方、こき使われていた奴婢の人達には、新たに田畑を与えて正口(正式な領民)として、帳簿に載せる事になりました。

 聞けば親の代が三男だったと言うだけで、奴婢としてこき使われていたそうです。


 2軒目。

 チューン!

 見事命中。戦意喪失しました。


 3件目と4件目は私達の様子を見ていたらしく、戦わずに降伏しました。

 ……チェッ!


 最後の5件目。

 ここは強敵です。まだ二十代なのに既にピッカリさんなのです。

 調査の時、「オレに名前なんてねぇよ」って言ったので帳簿には『サイトウ』と書いておきました。


「オラァ! 税だかなんだか知らねぇが、テメェの稼ぎを何で持ってかれなきゃならねぇんだよ!

 オレにはもう失うものがねえ。

 何も怖ぇものなんてねぇんだ。

 すっこんでろっ!」


 青銅で出来た武器をブンブン振り回します。

 銅鉾ってものでしょうか?

 この時代にそぐわないものです。

 鹵獲したら後で調べてみましょう。


 ではいきます!

 チューン!

 見事命中。

 周りの手が止まりました。


「へんっ!

 オレにはもう抜こうにも抜けるものがねえんだ。

 ムダムダムダムダムダムダァー」


「頭触って」


「姫さんよぉ。オレにはもう抜けるモンがねえって言ってんだろ!」


「頭触って」


「? 何言って……なんじゃこりゃー!!」


 驚いたサイトウは銅鉾に写った自分を覗き見ます。

 そこには年相応に髪の毛が生えたサイトウの顔が写っています。

 ちょっとだけイケメン風です。

 サイトウのクセに……。


「あんた、噂とおり天女だったのか?

 すげぇ、十年ぶりの感触だぁ」


 サイトウは鉾を放り投げて喜びのダンスを踊ってます。


 そこへ「天女、違う!」

 チューン!

 再び命中。

 生え揃った髪がはらりはらりと禿げちらかっていきます。


 上げてから落とす。

 これぞ落差2倍、効果10倍の非人道的必殺技おしおき

 名付けて、『諦めていたアナタに朗報!お試し期間につき無料で増毛!長年忘れかけていたあの感触を今一度アナタに。からのピッカリ光線〜!』が炸裂しました。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!

 せっかく生えた髪の毛がぁぁぁ!

 あんたは鬼か!?畜生か!?」


 サイトウの魂の叫びが響き渡ります。


「悪いのはサイトウ。

 容赦しない」


 武器を手放し、戦意を手放し、生きる気力すらも手放したかのようなサイトウは、警備兵さん達に引き攣られていきました。


 めでたしめでたし。


【天の声】めでたい……のか?



全国のサイトウさん、ごめんなさい。


とりあえずストーリーがひと山超えた所です。

次話から新しいアプローチを試みたいと考えています。

主人公が異世界(あすかじだい)を勝手気ままに過ごすのは変わりませんが……。

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