二話
「ううっ…田崎…!!」
俺は泣きながら自転車を漕ぎ、死んだ田崎のいかつい顔を思い浮かべる。
あいつとの思い出は2年の春、あいつがカツアゲをしてきた時から始まる。
俺は殴られても財布を出すのを断固拒否し逃げ出した。
「腰抜け野郎!」そう背中から罵声が聞こえる。だが田崎のクソ野郎は俺に追いつけない。
「腰パンしてると早く走れなくて残念ですねぇ〜〜〜!!!」
俺は笑いながら田崎から逃げそのまま近くの病院に駆け込み診断書をとった。
そのまま警察に直行し田崎は暴行罪で捕まった。
「あいつ…退学になると思ってたんだけどな」
三年で同じクラスになってしまって心底がっかりした。
「てめぇ忘れたとは言わせねぇぞ!」
と凄んできた田崎だったが警察に捕まったことで懲りたのかそれ以上俺に手を出してくることはなかった。
そんな田崎も死んだ。
何者かのデスゲームの犠牲になって。
「腰パン野郎…どうしてこんなことに…」
学校についた。
俺の通う私立吉良吉良高等学校。
輝かしい未来を創るという校訓のもとに県内では良くも悪くもない特にこれといった特徴もない中の中の高校だ。
休日のため当然校門は閉まっている。警備員もいないようだ。
外から見ると特に変わったところは無い。
だが俺が校門をよじ登りグラウンドに入った瞬間、つんざくような悲鳴が校内から聞こえた
俺は急いで玄関に走る。
下駄箱前にいたのは長身で眼鏡を欠けている少年…委員長の桜木海布とパーマヘアの背が低い少女、テニス部の安田区奈子だ。
どうやら安田区が悲鳴をあげたらしい。
「どうしたっ!!?」
俺が二人のもとに駆けつけると二人とも驚いた顔をする。
桜木「諏訪!?なぜここに…どうやって入った!?」
桜木がその眼鏡がずり落ちそうな勢いで俺の両肩を掴んだ。
俺「どうやってって校門からだよ!」
桜木「校門…?玄関から出られるのか?」
驚いた表情になった桜木が玄関に向かう。
だが外に出る前で足が止まる。
桜木「やはり無理かじゃないか!」
安田区「桜木君…やっぱり諏訪が…」
安田区が怯えた顔で俺を見る。
桜木が首をふる。
安田区「でも…」
俺「何?なんなのぉ!?もぉなにぃ~!?」
桜木「諏訪、校門から来たと言うなら出てみてほしい」
桜木がまっすぐと俺を見る。
俺「えっいいけどお前ら…」
桜木「いいから早く!」
俺「はいっ!」
来た道を戻ろうと玄関から出ようとする。
ところが、
俺「足が…動かない?」
玄関より外に出ようとすると足が固まって動かないのだ。
桜木「やはりか…」
桜木がため息をつく。
桜木「外からは入れる。内からは出られないというわけだ」
安田区「っていうより諏訪が犯人じゃ…」
俺「えっ!!?」
安田区「えっ!!?」
俺「えっ?」
俺、安田区「……」
桜木「お前はなぜここに来た?」
俺「なぜって…殺し合いの動画を見て…」
桜木「そうか、あの動画はちゃんと配信されているのか。ならなぜ警察は動かないんだ…それとも諏訪だけに観られるように…?」
安田区「そんなの信じられないよ!一人だけいなかったなんておかしいよ…」
安田区は怯えた顔で俺を見つつ桜木と同様に廊下も伺っている。
俺 「ハァン!?となるとなんですかぁ?!俺を疑ってるって言うんですかぁ?」
俺がそう言うと同時に階段の方からドンッという鈍い音と何かが転がり落ちる音が聞こえた。