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アンビリーバーズ  作者: 鈴女亜生


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4-2.メーデー

「あっ、そう言えば」


 ヒメノが何かを思い出したように声を上げたのは、ヒメノの指示に従って、ミト達が一斉にスマホを取り出した直後のことだった。


「次の仕事の話をする前に一つ、ミトくんに確認しとかなあかんことがあったわ」

「確認?」

「ミトくんは怪人組合の仕事がどうやって利用されとるか知っとる?」


 怪人組合の仕事の利用。ヒメノの口にした言葉の意味がうまく読み取れず、ミトは何とも言えないまま、ゆっくりと首を傾げることになった。


「ああ、そのリアクションは知らんみたいやな」

「仕事の利用って、どういう意味ですか?」

「ほら、怪人組合の目的があるやろ?」

「怪人の地位の向上?」

「そう。そのために動いとるわけやけど、普通に考えて、怪人を助けても、それを知っとるのは助けた怪人と、その怪人を追いかけとった超人だけやし、悪い怪人を超人より先に倒しても、私が倒したっていう事実は広まらへん。超人の秘密も、言い触らした程度で広まるもんでもない。怪人として見つからへんように行動するってことは、同時に結果も誰の目にも晒されへんことを証明しとる」

「た、確かに……言われてみたら、動いても伝わらなければ意味がないですよね?」

「その通り。だから、その手段を怪人組合は持っとるねん。何やと思う?」


 急な問いかけにミトは混乱し、頭を悩ませることもなく、ただ広めるという発想から最も近くにあった答えを手に取る。


「えっと……何か、SNS的な……?」


 流石に怪人が大々的にSNSをしているとは思えず、口にしながら何を馬鹿なことを言っているとミトが思っていると、意外にもヒメノの反応は悪くないものだった。


「おお~、結構、いい線行ってるね。ちょっとだけ違うんやけど、正解はね……」


 そう言いながら、ヒメノは手元のスマホに触れたかと思えば、ミトのスマホが着信を告げた。見れば、ヒメノからメッセージが送られてきている。特に何かの文章があるわけでもなく、どこかのサイトのURLだけが貼りつけられた簡素なメッセージだ。


 そのURLから読み取れる文字と、そこまでの話の流れから、まさかと思いながら、ミトは送られてきたURLをクリックする。詐欺サイトに飛ばされるのではないかという怖さがクリックしてから芽生えるが、残念なことに飛ばされた先には詐欺サイトよりも恐ろしいことが書かれていた。


「正解は、()()()()()()()()()()()でした」


 ヒメノから送られてきたURLによって送られた先は、二十年ほど前に作られたのかと思うほど、簡素な仕上がりのホームページだった。怪人組合と大々的に書かれ、今日に至るまでの活動がブログのようにまとめられている。


 そこにはスミモリのことも含まれており、ミトはふとババが最初に言った言葉を思い出した。


「噂には聞いとるで!」


 あれはそういうことである。


「ここに怪人組合の活動内容が書いとるから、暇な時に目を通してみるのもありやね。一応、コメント欄もあって、いろいろなことが書かれとるけど、九割悪口で、一割がスパムやから、まあ、見いひんでも大丈夫やね」

「それって炎上しているってことでは……?」


 怪人の地位向上を目的としながら、今もホームページは絶賛炎上中であると知り、ミトは怪人組合という組織が改めて大丈夫なのかと疑問に思い始めた。そこにいる人は悪くないと言えるが、ハヤセのことといい、この組織はいろいろと緩いところが多過ぎる気がする。


「それで、何でミトくんにホームページのことを説明したのかというと、このホームページにはいろいろな情報を求めている投稿フォームがあってな。そこに日々、様々な罵詈雑言が送られてきとるねん」

「もう炎上していることが日常なんですね」

「やけど、そこに偶に全然違う内容のメッセージが送られてくるねん」


 そう告げたヒメノから、ミト達のスマホに一斉に一枚の画像が送られてくる。その投稿フォームというものに送られてきたらしい、一つのメッセージを映し出したもので、そこに書かれた文章を読み、ミト達の表情は一斉に変わった。


「『助けてください。超人に追われています』。この一文と一緒に、送り主のものと思われる名前も書かれとった。それが花厳(かざり)あやめ。調べたら、ミトくんと同じタイミングで逃げ出した怪人の中に、その名前があったわ」

「怪人から直接SOSが送られてきたということですか?」


 ヒメノの話を聞いたヤクノが怪訝げに眉を顰め、そのように質問していた。ヒメノは正直に首肯しているが、ヤクノの表情は険しいまま変わらない。話に疑いを持っているようだ。


「まあ、ヤクノの考えてることも分かるよ。実際、このメッセージが送られてきて、こっちも怪しいと思ったから、詳しい話を聞こうとしたらしいし」

「それで問題ないと判断したわけですか?」

「いや、分からんかったらしい」


 ヒメノの返答にヤクノの表情は更に険しいものに変わる。そのような話をどうして持ち込んだのかと、付き合いの短いミトでも読み取れるほどに視線が語っている。


「何でも、ネカフェか何かで確認しとるらしく、メッセージのやり取りが物凄い遅いねんて。それで、このままやと事情を聞く前に捕まってまうと思て、まずは逢って事情を聞いてから、問題ないと判断したら保護するということで、今回は話がまとまったらしい」

「危険ですね。罠の香りがします」

「まあ、その辺は何とも言えへんけど、もしもホンマに困っとったら、助けてあげなあかん。というわけで」


 ヒメノは手に持っていたスマホに視線を落とし、再びミト達にメッセージを一斉に送ってくる。今度は簡易的な地図と、その地図の示す住所が書かれている。


「今回の仕事は怪人、花厳あやめの真意の確認、及び、必要と判断した場合の保護。その二つや。待ち合わせ予定の場所は今送ったところで、待ち合わせ時刻は明日の昼、十二時過ぎ頃。言っとくけど、平日の昼間やから、メンバー次第では補導される可能性もあるから気いつけてな」


 ミトやソラ、ババはヒメノの言葉に頷いてみせるが、ヤクノはまだ今回の仕事に納得がいっていない様子だった。判断と言っても、確実とは言えない以上、怪しい存在は入れるべきではないと考えているのかもしれない。


 しかし、ヒメノはそんなヤクノの様子を気にすることもなく、手に持っていたスマホをポケットに仕舞い込む。


「ほな、解散! 行く面子は姉貴と話し合って決めるわ」


 ヒメノはそう宣言し、その日は解散となった。


 数時間後、この仕事を行うメンバーが伝えられ、ミト、ソラ、ヤクノ、ババの四名がカザリと接触することが決定した。

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