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手紙シリーズ

返信

作者: 尚文産商堂

http://www.1000moji.com/content/5245

↑"手紙"のURL

こちらを先に読んだ方が、分かりやすいと思います。

あなたのところからいなくなっても、私のことを思い続けてくれたこと、そのことについて、とても感謝しています。

付き合いだしたのが、陸軍兵学校最終学年の4年生で、私が「良いよ」と答えたのは、両親が許婚(いいなずけ)と結婚させる、嫌ならば誰かと結婚しろというのがきっかけでした。許婚として見せられた写真は、私は本能レベルで拒絶したくなるような人でした。家を飛び出そうとも考え、陸軍兵学校へ入学しました。

私から見れば不釣り合いなほどかっこいいと思ったのも、あなたが首席卒業が決まっていたのも、同じ方面の科に行きたいと希望していたのも理由にあるかもしれません。

最初は、そんな理由でしたが、一方であなたと一緒にいる間に、本当の愛がはぐくまれていたような気もします。駆け巡る砲弾の中、私のことをずっと大事にしてくれたあなたがいたから、私もあなたの気持ちにこたえようと、必死になっていたような思いもあります。


あの時の手紙、とうとう説明しそびれてしまいました。私が実家へ帰るきっかけになったあの手紙は、町内会会長をしていた父が病に倒れ、床に臥しているという電報でした。何も言わずに帰ってしまって、いまでも心苦しく思っています。

法事が終わった直後に襲ってきた敵機による無差別爆撃は、国際法違反だと思いますが、その点についてはどうでもいいことです。私は、あの爆撃にも運よく防空壕へ逃げ込め、家族ともども避難所で生活しています。


また、あなたと出会える時を楽しみにしていました。しかし、それもあの手紙を見る限りではかなわないようですね。私は一人で、新しい人生を歩んでいくでしょう。あなたと共に歩むはずだった未来を、無残にも奪い去った戦争の惨禍が、2度と訪れないことを切に願っています。


追伸:この手紙は、本土陸軍総司令部へ送ります。あなたがいるところへ届くかどうかわかりませんし、送られた手紙を見る限りでは、玉砕を覚悟での突撃に感じます。私たちは、永遠に別れてしまうのでしょうか。それとも、生きて出会えるのでしょうか。

仮に届いたとしたら、最後に言わせて下さい。

私としては、生きて出会えることを切望していると。


それでは、頑張って生きてください。

あなたの恋人から

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