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6/10

殺したいくらいに愛してる

「あんたの想い人への気持ちを書き出してみるのよ。さあ早く」


 実際彼氏を作っているサヤに比べ、スズカはどこまで信用できるのだろう?

 そう思いつつも、ユズキはスズカに言われるがまま、ノートに彼への想いを綴ってみる。……これは何かの罰ゲームなのか? 恥ずかしすぎる。


『好き』

『かっこいい』

『優しい』

『美男子』

『声が好き』

『料理が美味しい』

『お嫁さんになりたい』

『好きすぎて胸がはぜそう』

『死ぬくらい好き』

『好きすぎる』

『胸熱』

『キュンキュン』

『好き』『好き』『好き』『好き』


「……ちょっとストップ」


「え、どしたの?」


 急にノートをひったくられたので、ユズキは目を見開いて驚いた。


「あんた、もはや『好き』しか書いてないから。好きなのはわかったからもういい」


「あっ。ごめん」


 ユズキは慌ててノートを見返した。本当だ、ほとんど『好き』で埋め尽くされてしまっている……。


「それだけあの男が好きなのね。じゃあもうそのままぶつけちゃいなさいよ」少し面倒臭そうにスズカは言った。

 彼女の表情から見て、内心もうどうでもいいように見える。おそらく、突撃の手しかないと判断したからだろう。


「そもそも、どうせ類似恋愛なんだから好きにすれば? 深く考えたって頭が真っ白になったら意味ないでしょ」


「まあ、確かにそうかも……」


「アタシが見といてあげるから、とりあえず書き出した言葉を全部言っちゃいなさい。今日の放課後。いいわね?」


 スズカはきっとこれを遊びか何かだと思っているに違いない。

 もちろんのことこれはバーチャル空間であるから、実際に告白をしたところで何ができるわけではない。触覚はあるけれど快感はないわけだし。


 サヤの言う通りで近くでずっと一緒にいるのがいいか、スズカの意見に従って突撃か。

 しばらく悩んだが、きっとじれったいことは私には無理だろうとユズキは思った。きっとすぐにボロを出してしまうに違いない。それだったら最初から突撃したほうがいい。


「私、告白してくる」


「そうなさい」


 スズカに背中を押され、ユズキはシンゴの元へ向かったのだった。




「シンゴくん」


 ――放課後の校庭。

 取り巻きを押し退けて、彼の元へ行く。

 憧れの彼はユズキにはいつでも輝いて見える。が、今日は一段とかっこよく思えた。


 どうして自分がここまで彼に恋したのか。それはきっと、『彼』と似ていたからだろう。

 思い出の『彼』と目の前の彼を重ねて、熱い恋情を向ける。


 シンゴがこちらに気づいて歩み寄ってきた。「やあ、どうしたんだい」


 多くの人が見ているこの場所はふさわしくないだろう。でも構わない。ユズキは周りのことなどちっとも気にしなかった。


「シンゴくん、伝えたいことがあります」


「……何?」


「私、あなたが好きです。結婚してください」


 ユズキの顔が真っ赤になった。

 感情を顕著に表すアバターの表情ではそれを隠すことすらできない。茹で蛸みたいな赤い顔のまま彼女は続ける。


「私、優しいシンゴくんが好き。声が好き、見た目が好き。何もかも全部大好きなんだ。お料理美味しいし最高だからお嫁さんになりたい」


 呆然となる相手のことなど全く気にせず、叫んだ。


「私、あなたを殺したいくらいに愛してる!」


 直後、抑え切れなくなったユズキは、彼の首を絞めていた。

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