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クラスメート

 クラスメートになる子たちと一緒に、それぞれ自己紹介をすることになった。


 席順に徐々に近づいてくる順番。ユズキはこういったことが得意ではないが、まあ、VRだし大丈夫だと自分の心を落ち着かせた。


 いよいよユズキの番だ。


「管理番号Y305、ユズキです。ええっと、みんなと仲良くしたいと思ってます」


 ピコンと音がして、1ポイント上昇した。

 きちんと自己紹介ができたということか。……それにしてもこんな溜まり具合じゃあ、10000ポイントなんてまだまだだな。


 ユズキたちが卒業できる目安――それが、優秀ポイントというこの点数が、10000を達成すること。例え何年経とうとも、このポイントがそこに達さなければ留年なのだ。

 でも逆に、うまくやればすぐに突破できる。そう言われていたのだが……。


「結構時間がかかりそう。……それにしても、Y305号ってねぇ。機械じゃあるまいし」


 口の中だけで悪態をつくのは、自分に与えられた番号のこと。

 このバーチャル学園に通う生徒たちは、皆それぞれの管理番号を持っている。いざという時、通報したりするためだ。

 でもユズキにはこの番号が嫌だった。まるで囚人みたいではないか。――それと彼女たちとは大差はないのだが。


 挨拶が終わって、先生のありがたいお話があった後、ユズキたちには自由時間が与えられた。

 この時間が、最初の勝負の分かれ目となる。クラスメートたちとある程度の友好関係を築いておかないと、今後に支障が出るかも知れないのだ。


 ユズキが目をつけたのは、狸のような垂れ目をした、柔らかそうな印象の美少女。彼女は確かサヤと言っていたっけ。

 まだ彼女の周囲には人がいない。今がチャンスだ。


「サヤさん」


「は、はい……?」


 おどおどした様子で、サヤがこちらを見上げてくる。

 アバターとはいえ表情は、生身の人間の思考を反映させる仕組みになっているので、相手の感情が見てとれた。これは本心から怯えているらしい。


 ユズキは至極優しい口調で語りかけた。


「私、ここへ来たばかりで色々わからないから不安なんだよね。サヤさんもそうでしょ?」


「うん……」


「なら、仲良くしよう! 一緒にこの学園のことを学んでいこうよ」


 ユズキはこうして仲間を増やしていった。

 サヤのように控えめな子を選んでは声をかけ、自分の方に引き入れていく。この方が効率的に点数を稼げる可能性があり、その上孤立しないで済むから、一石二鳥だった。


 ユズキのように仲間集めに勤しむクラスメートたち数人いる。初日、この時点でおおよその派閥分けがされたわけだ。ユズキのグループは七人ほどである。

 ここからは穏便にことを進めていこう。クラスメートたちとの仲を深めれば、きっと点数が爆上がりするに違いない。


 クラスメートたちとの関係を作ったことで、点数は10に増えていた。


「これからこの調子でどんどん上げていかなくちゃ」


 ユズキのバーチャル学園生活は、まだまだ始まったばかりだった。

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