表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/10

バーチャル学園

 彼女――ユズキは、この度バーチャル学園に入学した。


 バーチャル学園とは、普通とは一風変わった学校である。

 まず、近年完成したばかりの新技術、VRを使っていること。


 実際の肉体は、言うなれば冬眠状態につく。そして脳内にケーブルを繋ぎ、そこで仮想空間にアクセスするのだ。


 仮想空間は、どこまでも現実に近く作られている。

 味覚・嗅覚・触覚・視覚・聴覚。あらゆる感覚が、疑似的に体験できるようになっているらしい。


 そしてユズキも、その学園の一員となり、バーチャルな世界にログインをした。

 一度ログインしてしまえば、ほとんど数年はログアウトができない仕組みになっている。希望すれば年に一度現実世界に戻ることができるが、大抵の生徒たちはそれを望まないのだとか。


 ……入学式は、彼女にとってとても新鮮なものとなった。


 見渡す限りの生徒たちは、他のアバターたち。

 あれのそれぞれを操っている人間がいて、実質、中身は本当の人間なわけだ。ただ、見た目を選択することはいくらでもできるので、ほとんどの生徒が美男美女ばかりだった。


 ユズキも大人っぽいお姉さんのアバターを使っているが、現実では高校一年生にしてはかなり子供っぽく見えると思う。ガリガリだし、何より背が低いから。


「でもこの姿ならいける。いける……!」


 入学生は三十人ほどだった。

 これがもしも普通の学校であればかなり少なく思えるが、ここは仮想世界。これだけ参加者が集まったのはむしろかなり多いのではないだろうか。


「――今日からあなたたちの担任になる、Aです」


 クラスの紹介がなされ、ユズキたちの担任になる女性がそう自己紹介した。

 しかしユズキは知っている。彼女は、現実の人間が操るアバターではなく、NPCノンプレイヤーキャラクターなのだと。


「初めまして先生。一年のユズキです」


 ……とは言っても、挨拶しないと減点になるので一応しておこう。

 この学校には点数が存在する。ある一定の点数を満たさない限り、永遠に卒業はできない。

 ましてや減点をされたら留年と同義語。現在、ユズキの点数は当然ながら0だった。


 今日から始まるバーチャル学園生活。

 彼女は胸をときめかせ、新たな人生を謳歌する決意を……なんてしていない。


 内心、深く深く、ため息を漏らしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ