エゴ4
【エルランドっつー森】から抜けしばらく草原を歩き、街道に出てしばらく
日が沈み初め、止まっている馬車を2台追い越したところで人型が足を止めた
「おし、ここらでいっか」
「何するの?」
「野宿に決まってんだろ。夜通し歩かせるつもりか?」
そう言いながらアイテム袋から完成されたテントを取り出し、深底の鍋を取り出した
既に煮込むだけにまで下処理されたもののようだ
「...そうか、お前は──」
「ギースだ」
【人型の個体名をギースに確定】
「ギースは貧弱なんだな」
「ひでぇ」
喉をクツクツと震わせるように笑うギースを横目に、草の上に座る
「テントはスペースがあるけどよ、寝袋が1つしかねぇからお前が使え」
「必要ない、このスーツは──」
【情報の開示は非推奨】
「──暖かいからな」
「魔装か?随分高価なモン来てんな」
「だから寝袋は必要ない」
「まあ、シィがいいんならいいんだけどよ。さすがにテントには入ってくれよ?」
【周囲の視覚情報を遮断する行為は非推奨】
「周りが見えないのは致命傷に繋がる」
ギースは不意に立ち上がりアイテム袋から出したテントを唐突に殴りつけた
「ふんっ!」
ガンッ!
【未知の物質の出現 硬度指数215 SK95並の硬度を確認 】
半透明な物質が出現しギースの拳を受け止め、テントには届かなかった
「まあまあ硬い結界もある。安心してくれ」
【未知の物質の名称を結界と仮名】
「分かった」
グツグツと鍋の煮込む音が暗闇に飲まれる
あるのは夜空の光と謎の原理で生み出された炎に灯された焚き火、そして少し遠くに見える馬車の人型の者たち
【星の位置を確認・・・・該当星座 無し 別の惑星 又は別次元の可能性】
エイダスが今日覚えた別次元という言葉を早速使っている
「シィは嫌いなもんあるか?」
「秩序を乱す者」
「ちげーよ食いもんの話だ」
違ったのか
人と雑談をするということは難しいな
Bランクのモノならば少しは流暢なんだろうか
「食料はこれで十分だ」
ギースに超高エネルギー錠剤を見せる
「なんだそれ」
「この中に1週間分のエネルギーが詰め込まれている。水分補給さえすれば問題ない」
ギースは興味深そうな顔で錠剤を見ている
「そんなもん緊急時以外飲みたくねぇだろ、これ食ってみろよ 美味いぞ?」
そう言って深皿に盛られた煮込み料理をスポークというカトラリーと一緒に手渡された
【毒の検知無し】
なら...問題ないか
ところでスポークはどう持てばいいのだろうか
レジスタンスを殺しに行った時はたしかこうやって...ツボを下にして柄を握って刺そうとしてきたな
ぐさりと具を突き刺し口に運ぶ
「あらら、そこからか」
ギースが不満そうな声色を出したので気になって見てみると、スポークを人差し指と親指に挟むように握っていた
「なるほど、こうやって持つのか」
スポークを握り直し、煮込みを口に入れるとジュクジュクと頬の内側を焼くような熱が広がる
これが美味いという感覚か、あまり好きではない
【食用に適さない熱量です 冷ましましょう】
「はふっはふっ、ふーっふーっ」
「ははははははっ!!シィ、お前案外可愛いとこあんだな!」
煮物を冷ましながらゆっくりと噛んでいるとだんだん食材の味や出汁が染み出してきた
「ほほがビクビクする」
「それはほっぺが落ちそうになってる証拠だ」
「つまり?」
「美味いってことだよ」
「...なるほほ」
だし汁まで飲みきるとギースは深皿に追加で煮込みを山盛りに入れてきた
「いいのか?」
「いいんだよ。そもそも今日この鍋を食べきらないと捨てることになるぞ」
「捨てる...ことに」
胸の中にチクリと刺さる感覚が襲う
今までなかったことを初めて食事したせいかと落とし込み、シィは最後の1滴まで食べ続けた
「お腹...くるし」
「...これ飲んどけ、消化を助けてくれる」
【未知の物質・・・・調査結果 消化促進薬 服用を推奨】
「もう...無理」