最後の公演5
「お前、名前までつけているのか……!」
老人の言葉が静かな村の空気を震わせた。
囲んでいた大人たちの表情が一斉に険しくなる。
「まさか……ロボットに情を持ったのか?」
少年はその言葉に反応しかけたが、咄嗟に口を閉じた。
ロボットに情を持つこと――それは、この村では最大の禁忌だった。
理由はわからない。
ただ、それだけは絶対に許されないと、ずっと教えられてきた。
しかし、ヴィオと過ごすうちに、少年はふと思うようになった。
(禁忌って……本当にそんなに悪いことなのか?)
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「お前、何度も街へ行っていたな?」
「そこでロボットと接触していたんだな?」
次々と鋭い問いが飛んでくる。
少年は答えない。答えられない。
「お前、ロボットは人を滅ぼしたって話を聞いてるだろう?」
「それとも、そんなことも忘れたのか?」
「俺は……!」
少年が言いかけたとき、老人の一人が静かに言った。
「もうよい。これ以上、問い詰めても無駄だ。」
静寂が広がる。
「だが、一つだけ言っておく。」
その老人はまるで石像のような硬い表情で少年を見つめた。
「ロボットに情を持った者は、村にいてはならない。」
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少年は息を呑んだ。
「ロボットは人間の敵だ。たとえどんな姿をしていようと、それは変わらない。」
「昔、ロボットに心があると信じた者がいた。だが、何が起きた?」
「……裏切られた。」
「機械に心などない。あるのは命令と、計算された行動だけだ。」
老人の声には、わずかに震えがあった。
それが怒りによるものなのか、それとも別の感情なのか、少年にはわからなかった。
「お前は、そのロボットをどう思っている?」
「……」
もし、ヴィオに対する想いを口にすれば、少年は村を追われるかもしれない。
それでも――
「ヴィオは……」
言いかけて、少年は唇を噛んだ。
この村では、ロボットに情を持つことは許されない。
それでも、俺は---
少年は、答えを胸の奥に隠したまま、目を伏せた。