誰が為のオリハルコン
※世界の説明
人は時に、皮膚の表面に鉱石や、宝石が埋まっていることがある
ルビー、サファイア、エメラルド。果てには様々な種類のダイアモンドなど多岐にわたる
その中でも特に美しく最高位に位置されるもの
それがオリハルコンだ
だが、哀しきかな
人々は真実を知らなかった
その見た目は金と瓜二つということに
「んぎぁ!んぎゃー!んぎゃー!!」
「奥様!お産まれになられました!元気な男の子です!」
世界にひとつの命が産まれる
その命は沢山の祝福に喜ぶかのように産声をあげた
「はぁ…はぁ、んっ…顔を見せてちょうだい」
「はい、どうぞ」
しわくちゃの皮膚に濡れた髪の毛、はたから見たらブサイクであろうその赤子を愛おしく腕に抱えた彼女は涙を流す
「リーラ…あなたの名前はリーラよ」
産声にかき消されそうな声で名前を告げると、途端に眠気が彼女を襲い、気絶するように意識が途絶えた
──数日後
リーラと名ずけられた赤子は揺りかごに寝転がされ、1人の乳母を兼任しているメイドが読書をしながら子守りをしていた
(我、転生せり)
クワッ!と赤子が目を開けるとそれに気がついたのか本を閉じて話しかけてくる
「あら、起きた。おはようございますリーラ」
(うむ、おはよう。今日も良い天気であるな)
あぷーと言葉にならない声に和やかに微笑み、おでこを指先で擦るように撫でる
(ふむ、なかなか悪くない…続けたまえ)
だがこの赤子は純日本人の転生者であり、今は前世の記憶を持って産まれた優越感に覇王語を嗜んでいた
そんな中、コンコンと扉を叩く音が部屋に響くと、メイドは背筋を正してからどうぞと答えた
「リーラは起きているか?」
線が細く、カイゼル髭を生やした男性
スマートなスーツに身を包んだ彼は
上級貴族のレイモンド・リア・ディートリヒ
この家の家長であるリーラの父だ
「ええ、今目が覚めたところです」
「そうか」
簡潔に返事をすると揺りかごの前に座るとリーラのお腹をじっと見つめる
(父よ、我に何か用ですか?)
「金か」
(え?)
「はい、光沢が大変美しいですね」
(なぜ俺のお腹辺りを見ながら金の話をするんだ?)
「随分小ぶりだがな」
(え、もしかして玉の話?)
「旦那様、金に大きさはさほど意味はございません」
(やっぱ金玉の話かこれ?!)
「そうか…そうだな。私に、この子を幸せにできるだろうか」
(なんで人の金玉見ながらそんな話してんの?つーかなんで金玉見えるの?服ちゃんと来てるよね?オムツもしてるはずだぞ!?)
「旦那様、奥様が…それに私たちも着いてます。みんなで頑張りましょう」
ちなみに神からの説明はざっくりとしか受けておらず、試験的なものであとから介入するかもと言われてる設定です